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25周年を迎えた「シネマ・ジャック&ベティ」で振り返る横浜と映画館の歴史とは? 後編

ココがキニナル!

伊勢佐木町のミニシアター、JACK&BETTYが25周年だそうです。横浜の映画館やミニシアター、また映画の歴史なんかレポートしてください。(Kane-gonさん、マサスーンさん)

はまれぽ調査結果!

2016年12月に開館25周年を迎えた「シネマ・ジャック&ベティ」記事の後編では、ジャック&ベティの今とこれからについて紹介

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ライター:紀あさ

25周年、ふたつの挑戦



2010(平成22)年12月のプログラムに「小林副支配人調査員の度重なる、図書館での昔の新聞や文献の捜索によりまして、1991年12月21日がジャック&ベティのオープンした日であることが、つい先日、判明いたしました。途中で、閉館や運営会社交代などの経緯があり、正確な情報がなかったのです」と記載がある。
 


当時の上映プログラム (クリックして拡大)

 
梶原さんらは19年目にしてやっと、翌年が20周年だという事実を発見したという面白いエピソードだ。そしてその6年後。建物が出来てからの25周年は、梶原さん運営の10年目とも重なるという偶然。25周年の当日は、ジャック&ベティで盛大な祝賀会が行われた。

祝賀会の最前列には、大分市のミニシアター「シネマ5」の田井肇(たい・はじめ)支配人や、元キネマ旬報編集長の植草信和(うえくさ・のぶかず)さんら、映画人の姿も多数見受けられる中、「25周年は街の人と一緒に祝いたい」との願いから、近隣商店街関係者や一般入場客の姿もあった。
 


田井支配人(左)と、植草さん

 
横浜の美術家・森直実(もり・なおみ)さんも来場。
 


「街なかにある映画館としてこれからも応援したい」

 


映画と映画館の本『ジャックと豆の木』創刊



祝賀会の名称は「シネマ・ジャック&ベティ 開館25周年&『ジャックと豆の木』創刊記念祝賀会」。なんと、25周年記念に、映画館自らが、映画の雑誌を創刊した。
 


映画と映画館の季刊誌『ジャックと豆の木』創刊号


写真からも文字からも映画愛が溢れる

 
編集長はゴダールや鈴木清順(すずき・せいじゅん)といった世界の巨匠らの映画のポスターデザインを手掛けてきた小笠原正勝(おがさわら・まさかつ)さん。
 


ジャック&ベティ外壁の看板は、名画座から数えて60年の記念に小笠原さんが製作

 
祝賀会は小笠原さん による乾杯の発声で開幕した。
 


「ジャック&ベティとジャックと豆の木、ふたつのジャックのために」

 
編集者一覧を見ると、1940年代生まれの小笠原さんと元キネマ旬報編集長の植草さんのふたりのほかは、80年代生まれを中心とした14人の若手。小笠原さんが映画というバトンを次世代に手渡す本だともいえるかもしれない。
 


編集者の小林幸江(こばやし・さちえ)さんと、息子さん

 
「小笠原さんの映画への熱い情熱をこめたこの本の取材を通じて、映画ってこんなに熱い思いを産んでいるんだって思いました」そういう彼女は実は、小林副支配人の奥様。

「ジャック&ベティもそういう映画館でいたい。25年後もあることを祈って」と話してくれた。



映画を見るためのシート



さらには、座席のシートを長く座っていても疲れないと定評のあるフランスのキネット社製の椅子に入れ替えた。

渋谷のミニシアター「UPLINK」代表の浅井隆(あさい・たかし)さんは「国産に比べ、一脚あたり2万円くらいキネット製の方が高い。お客様のことをよく考えているのと経営がしっかりしているからできること」と評価。その座り心地は・・・
 


「座り心地いいですね」

 
一方、梶原支配人は・・・
 


「皆さまがもっと映画を見に来ていただければ、(椅子代の)借金が早く返せます!」

 
客席からは温かな拍手と笑い声。

これまでの椅子は希望者に引き取られ、うち50脚は春にオープン予定の東京・吉祥寺の映画館へと移る。

梶原さんは学生時代を吉祥寺で過ごしている。祝賀会に訪れた梶原さんの同級生だったという女性が「もしあの椅子で、吉祥寺で映画が見られたら、すごい繋がりだなって、なんだか泣きそうになります」と話していた。
 


中郡大磯町のエーティーギャラリーアンドカフェでは、旧映画館の椅子で寛ぎの時間

 


街の映画の歴史を継いで



そんな25周年を迎えて、新旧支配人に今の思いをきいてみた。
 


「25周年にはたいして意味がない」

 
「前の映画館を戦後すぐ作って、戦後71年を迎えた方に意味がある」と重みのある旧支配人・福寿さんのことば。そして「この街に、映画館があってよかった」と続けた。

幾十もの映画館があった時代は過ぎ、界わいには今、ジャック&ベティ、シネマリン、横浜ニューテアトルの3館がある。

現在のジャック&ベティを支える社員は5人。
 


左から大澤綾さん、梶原さん、小林さん、澤さん、写真にいないが永島幹さん

 
現支配人・梶原さんは、この先の夢を「映画を好きな人たちの集う場でいたい」と語ってくれた。



取材を終えて



集う人たちが、この街が好きなだけでも、映画が好きなだけでも、映画館が好きなだけでもなくて、みんな「ジャック&ベティが好き」なんだな、と感じられた。

このごろ映画に思うことは、何ヶ月も、時には何年もかけて作られた作品を、2時間ほどで受けとり、丁寧に編まれた濃縮された時間と出会うこと。その大切さ。

インターネットの波に浮かんで、10秒で書かれたものを10秒で読む日々を過ごす中、人の時間はそれでは減ってしまうのではないかと危惧したりもする。

時間はさまざまな軸で流れていく。

映画が100歳になってから、ジャック&ベティは生まれた。ジャック&ベティが100歳になれば、映画は200歳になる
 


ジャック&ベティ開館から25周年までの四半世紀
 

29歳で15年目の映画館の支配人になった梶原さんだから、25周年後に40歳に、そして50周年のときには65歳になる。ジャック&ベティが人生になるんだなぁ、まさにライフワークだなと思いながら、次の四半世紀もその先もずっと、この街に映画館があることを、ジャック&ベティの傍にいられることを、心から願った。

 


25周年おめでとうございます! この先も走り続けていきますように

 

―終わり―
 


取材協力



シネマ・ジャック&ベティ
住所/横浜市中区若葉町3-51
電話/045-243-9800
HP/http://www.jackandbetty.net/

映画と映画館の本 ジャックと豆の木
・ジャック&ベティで販売
・ジャック&ベティのネットショップから購入可能
 同ショップでは映画パンフレットも通信販売可能



参考文献



映画伝来 シネマトグラフと<明治の日本> (岩波書店)
ジャックと豆の木 創刊号 (ジャック&ベティ)
シネマトーク作成 横浜映画館地図
日刊スポーツ(2007年5月18日~24日「オレたちの映画館 封切り黄金町」)
神奈川新聞(2005年1月16日記事他)

他下記サイトを参考にしました
一般社団法人日本映画製作者連盟
一般社団法人映画産業団体連合会
OGASAWARA Design
Lifeworks
大磯町エーティーギャラリーアンドカフェ
http://www.city.yokohama.lg.jp/seisaku/kichitaisaku/rekishi/yokohhama-rekishi01.html
http://www.city.yokohama.lg.jp/somu/org/gyosei/sisi/web-air-raid/ks-nenpyou4.html
http://www.hamakei.com/special/74/
http://www.hamakei.com/headline/915/
http://kannai.jp/20141015_movie/
http://www.webdice.jp/dice/detail/5280/
http://www.cinema-st.com/classic/c001.html
http://eiga.com/news/20120615/12/
http://static.cinema-magazine.com/new_tokubetsu/zyousetsu/history.htm
https://www.youtube.com/watch?v=P_6RIWrY0Os
http://www.kotobuki-seating.co.jp/cd/app/?C=news&H=default&D=00033
 

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  • 昔のジャック&ベティは、かなりマニアックな上映企画が多く、たまにしか観てなかった。関内アカデミーが閉館した時は、いったい横浜のどこで名画が観られるのかと心細かったけど、ここが様々な名画を上映してくれるので、とても嬉しい。日本中で良い映画館に限って閉館してしまうので、横浜の映画文化のためにも、ずっと存在して欲しい。

  • すごいんだな。ジャックアンドベティ。椅子が新しくなってからはまだ行ってないや。今度行ってみよう。

  • 大作記事になりましたね(笑) 横浜の映画館の歴史からジャック&ベティーの知られざる取り組みまで、丁寧な取材で充実した内容に仕上がってましたね。たまに観に行くだけでは、ここまで知る事は出来ませんでした。とても良い記事にして頂きありがとうございました。 Kane-gon

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