横浜市にある名木古木で、樹高、幹回り、樹齢などの一番を教えて!
ココがキニナル!
横浜市の名木古木で、もっとも背の高い木、太い木、最長寿、威容な形状の木を知りたいです。写真で見たいです。(あっくんしょうちゃんさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
横浜の名木古木でもっとも樹齢を重ねた木、高い木、太い木、威容な木。いくつかの候補から選んで訪ねた木々はどれも威厳があって歴史を感じさせた。
ライター:吉澤 由美子
樹齢を重ねた木や、高さのある木、幹の太い木を間近に見ると、神性が宿っているような気がして畏怖(いふ)の念が生まれてくる。
今回のキニナルを受けて、横浜市にある樹木について調べていると、横浜市環境創造局のサイトに『横浜の名木古木』というページを発見した。これは今回の調査にぴったり。
そこで、このページを運営している横浜市環境創造局のみどりアップ推進部みどりアップ推進課に行くことに。
名木古木
みどりアップ推進課では、まず『横浜市名木古木保存事業』についてお話を伺った。
みどりアップ推進課の景山敦樹(あつき)さん、関本直子さん、上野史子さん
横浜市環境創造局が行っている『横浜市名木古木保存事業』がスタートしたのは、1973(昭和48)年。「緑の環境をつくり育てる条例」の第7条「保存すべき緑地、樹木等の指定」や、「横浜みどりアップ計画」などに基づいて名木古木の保存と指定を進めている。
この事業は、古くから地域で親しまれてきた故事・来歴などのある樹木を保存することにより、市民生活に潤いをもたらし、都市の美観・風致を維持していくことを目的としたもの。
『横浜市の名木古木』に指定されている樹木はおよそ1000本。この制度では、所有者による申請を受けて、調査と審査が行われ、その後に指定される。
指定にはいくつか基準がある。まずひとつは、樹齢がおよそ100年以上ということ。その上で、昔から地区の人が目印にも使っているなどのゆかりがあり、近隣で親しまれている、市民が容易に鑑賞できる、隣地に著しく越境していないなどの基準もある。
名木古木ページの区ごとにまとめられたリスト。全部で979本ある
(2011年4月1日現在:横浜市環境創造局)
高木と中・低木について、わかりやすい目安も教えていただいた。高木(ケヤキ、イチョウ、クスノキ、タブノキなど)の場合、高さが15メートル以上、あるいは高さ1.5メートル部分の幹周囲が1.5メートル以上あること。中木や低木(サルスベリ、ツバキ、ウメなど)では、枝の広がりが3メートル以上あること。
だたし、こうした基準をクリアした樹木でも、環境省が指定している要注意外来生物である場合は指定できない。
山手公園のヒマラヤスギは名木古木に指定されている
故事来歴や樹齢についてよく分からない場合がかなりありそうだが「物心ついたころからこの木があったと祖父が語っていた」などでも大丈夫らしい。
「その樹木が生えている場所によっては、高さや目通り周(めどおりしゅう:樹木の幹まわりの太さを人間の目の高さで計ったサイズ)が正確に測れないこともありますので、一定の基準を設けて目測しています。また、切ってみなければ正確な年数がわからない樹齢については、言い伝えなどをもとに申請をしていただいています」と関本さん。
なお、指定を受けた樹木は10年に一度調査を行っている。前回の調査の時点では高かった樹木が、伸び過ぎて折れる危険性が高まったため上部を剪定していたり、強風や落雷などにより短くなっている例もあるそう。そうした中には、現在の名木古木サイトにまだ反映されていないものがあるらしい。
本数が多い木の種類ではケヤキとイチョウが群を抜いている
(平成23年4月1日現在:横浜市環境創造局)
今回の「横浜で一番高い木、太い木、樹齢の長い木」について伺うと、「所有者に申告いただいて指定しているものなので、指定されていないものの中に上回る木が存在する可能性がありますし、名木古木指定は目測で行っているので正確な数値ではありませんが」と前置きした上で、樹高のある木、樹齢の長い木、そして目通り周の長い木について候補を教えてくれた。
このうち高さと目通り周については、最大サイズとして高さは30メートル前後、目通り周は6メートル前後と、同じような数値の木がいくつもあり、目測であることから細かな違いにこだわらず、自由に見学できる場所にあることを優先してセレクトした。
「名木古木に指定された樹木は、戦争や関東大震災をくぐり抜けてきた歴史の生き証人です。地域の皆さんが大事に守ってきた樹木について知ることで、横浜の緑に興味を持っていただけたらと思っています」と景山さん。
さて、それでは実際に名木古木を訪ねてみよう!
目通り周は、嶋崎金子稲荷社のタブノキ
目通り周の大きいものでは、みどりアップ推進課でフェリス女学院のタブノキ(目通り周6.2メートル)をおすすめされた。このタブノキは5本株立ち。つまり5本のタブノキがくっついて生えている。こうした株立ちの場合、すべての木の目通り周を測って足し、それに0.7をかけるという計測方法を用いているらしい。
ところが、ちょうど受験シーズンで忙しい時期とあってフェリス女学院は取材不可。
そこで目通り周の大きい木を「横浜市の名木古木」リストから探してみると、旭区西川島の嶋崎金子稲荷社にあるタブノキが幹周5.4メートル。こちらは株立ちではなく、1本立ちだ。
1本でこの太さは見逃せない。そこで、嶋崎金子稲荷社に向かった。
地図で見ると嶋崎金子稲荷社は、西川島の新幹線が走る高架のすぐそばにあるはずなのだが、そのあたりをうろうろしてもなかなか見つからない。
近くに西川島町たぶの木陰公園があるので、まずはそこを目指していくと、マンションに囲まれた公園の向こうに大きな木がそびえていた。
やっとみつけた西川島町たぶの木陰公園
公園側から見たタブノキ
こぢんまりした公園の向こう、周りをぎっしりツバキに囲まれて、タブノキは悠々と巨大だ。
この公園からは嶋崎金子稲荷社に入れないので、新幹線の高架横の道まで下りて、だいたいこのあたりと見当を付けたあたりを上ってみることにする。
木立や竹に囲まれた小路
民家の間の細い道を入る。左右を木々や竹に囲まれた土の小路をたどっていくと鳥居が見えた。
鳥居の先に小さいお社があり、隣に太い幹が見える
鳥居を抜けると目の前全体がタブノキ。
上を見上げても全容がわからないほど大きい
正面には、いくつものプレートがある。横浜市の名木古木指定だけでなく、横浜市指定天然記念物であり「かながわの名木100選」に選ばれたことがそれぞれ記されている。つまりこの木はトリプルタイトルホルダーだったのだ。
もちろん、名木古木指定のプレートもあった
測った時期が違うのか、横浜市指定天然記念物のプレートには、胸高周囲(人の胸の位置に当たる高さの幹周囲)6.25メートル。神奈川の名木100選では胸高周囲5.7メートルとなっているが、とにかく太い。樹齢は840年、樹高は20メートルである。
見上げると、隣に生えているツバキの枝をタブノキが抱え込むように飲み込んでいる
横に回り込むと、幹の色が変わっているところがあった。
2011(平成23)年1月に近所で火事があって、その時に一部が焼け焦げてしまったらしい。
当時の新聞記事にも載っていたようだ
痛々しい痕を残しながらも、改めて見上げたタブノキは葉を茂らせのびのびと生えている。
その生命力に畏敬の念を抱かずにはいられない。
ご神木というイメージそのもののタブノキの次は、威容を誇る木の元へ!