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横浜市にある名木古木で、樹高、幹回り、樹齢などの一番を教えて!

ココがキニナル!

横浜市の名木古木で、もっとも背の高い木、太い木、最長寿、威容な形状の木を知りたいです。写真で見たいです。(あっくんしょうちゃんさんのキニナル)

はまれぽ調査結果!

横浜の名木古木でもっとも樹齢を重ねた木、高い木、太い木、威容な木。いくつかの候補から選んで訪ねた木々はどれも威厳があって歴史を感じさせた。

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ライター:吉澤 由美子

威容 川和(かわわ)の乳イチョウ



威容は威厳のある姿のこと。そこで、姿に特徴があって重々しい雰囲気がある木を探すと、都筑区川和町に「乳イチョウ」と呼ばれて親しまれている木があることを発見。

乳イチョウがあるのは、川和町の上サ(かさ)会館の敷地らしい。

川和高校入口交差点の近く、庚申塔など3基が並ぶ横の小路を入った先に目指す上サ会館があった。
 


電柱をはさんだ3基の塔が目印


中心に太いイチョウの姿がある。注連縄(しめなわ)が巻かれ、隣には鳥居と小さなお社。
 


圧倒的な存在感がある乳イチョウ


乳イチョウは背こそ高くないが、太い幹から何本もの枝が空に向かって伸びていて、幹から枝が出ている下部にいくつものふくらみがある。樹齢は440年、樹高は7メートル、目通り周は7.7メートルである。
 


こうしたふくらみを母親の乳房に見立てて、イチョウの乳と呼ぶらしい
 

近寄るとかえってわかりにくい


イチョウの前には横浜市緑政局による解説プレートがあり、そこにはこのイチョウが1本立ちと記されていた。

さらに、川和の乳イチョウには、母乳の出ない母親がイチョウの乳の部分を削って煎じて飲むとてきめんにお乳が出るという信仰があったと解説されていた。

威容を誇るその姿には、確かにご利益をいただけそうな神性を感じる。
 


名木古木指定のプレート


周囲をめぐると、枝が出ている場所より下の部分は中心がなくなっている。
 


中心部分がなくなっていて、何本ものイチョウが生えているようにも見える


冬で葉がないため立ち枯れているように見えるが、足元にはイチョウの落ち葉が散り敷かれていて春から秋にかけて見事に葉を茂らせていたことがわかる。
 


地面には落葉したイチョウの葉がたくさん落ちていた


注連縄の存在から地域の人に敬われ、大切にされていることも伝わってきて、とても温かい気持ちになった。
 


地域のシンボルにふさわしい威厳のある佇まい


残すは長寿と高さの名木古木。乳イチョウに別れを告げ、あと2本がある戸塚区へと向かった。



親鸞がその木陰で憩った!? 樹齢1050年、永勝寺のイヌマキ



戸塚区下倉田町にある永勝寺は、親鸞ゆかりの寺として全国から参拝者が訪れる浄土真宗のお寺。ここには、樹齢1050年のイヌマキと、高さ30メートルのイチョウがある。

地図で確認すると永勝寺があるのは、環状3号線の富士ヶ上の交差点をまがり、横浜豊田郵便局の近く。いくつかそれらしい道を入ってみたのだがよくわからないので、かまくらみちに出てしばらく行くと永勝寺の文字が彫られた石柱があった。その横の小路を入っていくと、突き当りに端正な山門と大きな木が見えてくる。
 


山門の左、緑の葉を茂らせているのがイヌマキ。右の落葉している木がイチョウ


山門の隣にゆったり枝を広げているのが、樹齢1050年のイヌマキ。樹高は20メートルで目通り周は2.5メートルである。
 


ノビノビと広がった枝いっぱいに陽射しを浴びるイヌマキ


今から1050年前は西暦965(康保2)年、日本は平安時代の真っただ中で、平将門の乱より後、藤原道長が摂政に就任する前というタイミングでこのイヌマキは芽生え、それからずっとここで時の流れを見守ってきたのだ。
 


イヌマキは正面が弱っていたため治療を施されている


山門の右奥には背の高いイチョウがそびえている。
 


山門をくぐると親鸞聖人の像が出迎えてくれる


本堂の手前には背の高い枝垂れ桜があり、その向こうにあるイチョウの大木には、横浜市の名木古木指定の表示があった。
 


50~60年前、落雷に遭う前はもっと樹高があったそう
 

このイチョウも樹齢は650年。山門横のイヌマキにはかなわないとはいえ、650年もすごい


こちらでは、住職の田口壽人(ひさと)さんにお話を伺うことができた。
 


木のことはあまり伝わっていないのでよく分からないと控えめな笑顔で迎えてくださった田口住職


田口住職は、1740(元文5)年に23世の住職がまとめた永勝寺の「御相殿略縁記(ごそうでんりゃくえんぎ)」の写しを見せてくれた。略縁記とは、寺社の発祥の由来や歴史を記したもの。ちなみに、田口住職は40世だそう。
 


『御相殿略縁記』。昔、このあたりは鎌倉郡だったことも分かる


この中に、永勝寺を描いた図版の見開きがあって、なんとそこには名木古木に指定されたイチョウが描かれているという。
 


見開きの中央右にすんなりしたイチョウの姿


このイチョウは現在、30メートルということだが、50~60年前の落雷により上部が折れていて、その前はもっと樹高のある木だったそう。遠くからもよく目立つランドマークだったため、ここに描かれたのではないかと田口さん。この絵には残念ながらイヌマキの姿はないが、イヌマキはイチョウよりもかなり低い位置に生えており、ほかにも多くの木が周りにあったなどで、そのころは目立つ存在ではなかったのかもしれない。ちなみに目通り周は3.9メートルである。
 


真下に近い場所から見上げたイチョウ。こうして見ると枝が密に広がっているのがわかる


ここで、親鸞聖人ゆかりの寺ということについても伺ってみた。

鎌倉幕府が一流の学僧を集め、鎌倉八幡宮で6千巻弱ある『一切経』に写し間違いなどがないか確認する「校合」を行った際、そこに招かれた親鸞が鎌倉までの道をたどる途中でこの寺の門を見つけて訪ねたことが、親鸞と永勝寺のゆかりのきっかけ。親鸞は鎌倉に4~5年通っており、その間、何度もこの寺に逗留(とうりゅう)したという。

なんと、境内には親鸞が自ら掘った井戸なども残されていた。
 


親鸞聖人が自ら掘られた井戸「保命水」


この保命水という井戸は1メートルほどしかない深さだが、水が満々とたたえられていて、水面が地面から10cmほどのところにある不思議な井戸だ。この水は夏の日照りの時にも枯れたことがなく、墓参りに来た人によってほとんどの水が汲み上げられても、次の日の朝には水位が戻っているらしい。

親鸞は鎌倉時代の僧侶。この地を訪れていたのは1220年代後半から1230年代前半だったと伝わっており、樹齢1050年のイヌマキは、親鸞が永勝寺を訪れた時、すでに樹齢百年を超えていた計算になる。

ということは、もしかしたらあのイヌマキの木陰で親鸞聖人が憩われたかもしれない。そう思うと、歴史がとても身近なものに感じられる。
 


親鸞がここを訪れた時、このイヌマキはどのくらいの大きさだったのだろう


そして永勝寺には、長寿のイヌマキや背の高いイチョウだけでなく、見事な木々がたくさんあった。

たとえば、梵鐘(ぼんしょう)の手前にあるサルスベリ。街路樹や庭木で夏の間、濃いピンクや白い花をたわわにつける姿でおなじみの木だが、こちらのサルスベリは一般的なものに比べ倍くらいの高さがありそうだ。
 


斜めになりながらも、空へと伸びあがっているサルスベリ


サルスベリを眺めていると、ほかにも珍しい木があると田口住職が教えてくれた。それは、ムクロジ。ムクロジの木の実は真っ黒でとても硬く、これに羽をつけて羽子板で打つのがお正月の羽根突きだ。
 


ムクロジもすんなりと背が高い


もしイヌマキやイチョウを見に行くなら、ほかのこうした木々の存在もぜひチェックを。

樹齢1050年のイヌマキと、高さ30メートルあるイチョウが悠々と長い時を過ごしてきた永勝寺。のびやかに枝を広げている大らかな木々に囲まれたこの場所には、深山にいるような清々しさがあった。



取材を終えて



横浜の名木古木でもっとも樹齢を重ねた木、高い木、太い木、威容な木。いくつかの候補から選んで訪ねた木々はどれも威厳があって歴史を感じさせた。

樹木は人間の短い時間の尺度では推し量ることができない悠久の流れの中で生きている。長い時間の中で幾多の人を木陰で憩わせてきた木々を眺めていると、こちらの気持ちもゆったりのびやかになっていく気がした。


― 終わり ―
 

横浜市環境創造局 名木古木
http://www.city.yokohama.lg.jp/kankyo/area-green/meiboku/

嶋崎金子稲荷社 タブノキ
住所/旭区西川島町59-7
川和(かわわ)の乳イチョウ
住所/都筑区川和町2311 上サ(かさ)会館
永勝寺 イヌマキとイチョウ
住所/戸塚区下倉田町1021
 

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  • <源流を訪ねて>とか<横浜の急な坂>とか、≪足を使って≫書かれた記事が好きです。名木古木の№1の高さ、目通り周、威容の木がよくわかりました。そして、金子神社稲荷のタブの木は実際に自分が行ったときと同じように書かれていたので、臨場感がひしひしと伝わってきました。「足を使ってくださってありがとうございました」

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