食べ歩きして調査!鎌倉・小町通り自粛条例施行後の現状
ココがキニナル!
ついに施行された鎌倉市の通称「食べ歩き自粛条例」。GW10連休を迎えた今、鎌倉食べ歩き観光の傾向と対策は、いかに?(はまれぽ編集部のキニナル)
はまれぽ調査結果!
鎌倉の食べ歩きグルメは美味しいものが沢山!ただし、条例が「食べ歩き禁止」と思い込み食べ歩きを控える観光客が増えた。店側の影響や対応は大きな差があるようだ。商店会の総力をあげた取り組みが望まれる
ライター:結城靖博
「迷惑行為」の対象に、狭い場所や混雑した場所での食べ歩きが盛り込まれた条例(鎌倉市公共の場所におけるマナーの向上に関する条例)が施行されてから、およそ半月を経た鎌倉・小町通り。
前回のレポートで伝えた通り、食べ歩きは決して「禁止」ではない。
ならば、「他人に迷惑をかけないように気をつけながら食べ歩きグルメを楽しむ」方法とはいかなるものか? 身をもって体験すべくふたたび小町通りへと向かった。
なるべく多く食べ歩きたいが、さすがに一人では身がもたない。そこで今回は、急遽結成した「食べ歩きお助け隊」(隊員1名)のO.K.さんに馳せ参じていただいた。
「本日はよろしくお願いします」とO.K.さんがペコリ
ぷりっぷりのタコの鎌倉揚げが絶品!「あさひな」さんの場合
鎌倉駅から赤い鳥居をくぐって小町通りに入ると、すぐ左手に見えるのが鎌倉揚げ・鎌倉かまぼこの「あさひな」さんの屋台だ。
「あさひな」の屋台
ショーケースの中には美味しそうな商品がずらりと並ぶ
そして食べ歩き用の串に刺した鎌倉揚げ
屋台の中にいた女性店員さんに、さっそく条例について訊いてみた。すると、思いのほか丁寧に答えてくれた。
店員さん曰く、条例施行前の3月はテレビ報道などを見て「もう食べ歩きができなくなるかもしれない」と勘違いした人たちの駆け込み需要なのか、普段よりお客さんが増えたそうだ。その影響もあって、4月に入ると前月より少し客足が減っているという。
また、店側のマナー対策として、以前から置いていたゴミ箱を、条例施行後に目立つところへ移動し、お客さんには、その近くで食べてもらうようにお願いしているそうだ。
お話を伺ったあとは、食べ歩きお助け隊の出番である。
食べ歩きお助け隊初出動
一番人気のたこの鎌倉揚げ(220円/税込み、以下同)を購入。おっと、トンビに注意だ!
店員さんに言われた通り、ゴミ箱の近くで食す
食べ歩きお助け隊に食レポを乞うと、
「ブリブリしてすごくおいしい。でも、ゴミ箱の前で食べるというのは・・・」とのご感想。
それを聞いて筆者は思った。
「ゴミ箱の近くで」とは言われたが、「ゴミ箱に向かって」とは言われていない。通りを眺めながら食べればいいのになぁ。
食後は包み紙と串をゴミ箱へ投入
濃厚な抹茶アイスがたまらない「茶和々」さんの場合
「あさひな」を離れてから食べ歩きお助け隊が最初に足を止めたのは、抹茶スイーツ処「茶和々(さわわ)」さんの前だった。
ピタッと足が止まってしまったお助け隊
通りから様子を見ていると、男女4、5人の中・高年グループがおのおのソフトクリームを片手に店内から出てきた。そして、店先でおいしそうに食べ始めたので、「お楽しみのところ失礼します」と声をかける。
「店の前で食べてくださいと、お店の人に言われたんですか?」と尋ねてみると、
「いや、こっちから聞いたんだよ、食べ歩きしてもいいかって。そしたら、なるべくお店の前で食べてほしいと言われたから、ここで食べてるんだよ」とのこと。
カメラを向けると「おっ、モデルかい」と陽気に応じてくれた
抹茶アイスにご機嫌な皆さんを横目に、食べ歩きお助け隊が店の中へ突入した。
店内は注文カウンターの奥に、奥行きのあるイートイン・スペースがあった。
めっちゃ抹茶色のイートイン・スペース
こちらのお店も、取材に対しては、いたってフランクだった。
「うちの場合は店の中にイートイン・スペースがありますから、問題は特にないです。店内がいっぱいのときは、店の前で食べてもらうように伝え、食べ終わったゴミは店員が回収しています」と、にこやかに答えてくれた。
話を聞いたあとは、またご試食タイムだ。
お助け隊はやっぱり抹茶アイス(400円)を注文
空いているので、店内でゆっくり食べることにした。
アイスを手にうっとりするお助け隊。大丈夫?
うっとりするのも無理はない。見るからに濃厚そうな抹茶色だ。筆者も食べてみたが、味も期待を裏切らないものだった。口の中にいつまでも上品な抹茶の味わいが残った。
お助け隊のご感想は、「ここなら落ち着いて食べられていいわ」。さらに、「椅子があったら長居しちゃうから、こんな感じがちょうどいいのかもね」。なるほど。
とはいえ、お店になるべく迷惑をかけないよう、あえて忙しい休日を避けて取材したので店内に余裕があったが、週末ともなればきっとそうはいかないだろう。お店の前にお客さんがあふれるのではないだろうか。そんな状況でお店の人がゴミを回収するのは、さぞや大変にちがいない。
などと思いつつ、ゴミを店員さんに渡す
食べ歩きグルメの老舗「はんなりいなり」さんの場合
続いての取材先は、「はんなりいなり」さん。小町通りの食べ歩きグルメの中でも、昔から名の知れた人気店の一つだ。
こちらも気さくに取材に応じてくれた
この店では、主力の食べ歩き商品である「はんなり棒」を、もともと一つずつビニールに包んでいたが、条例施行後は、ゴミの持ち帰りもできるように、さらにレジ袋に入れて渡すようになったという。
一つひとつ丁寧にパックされた「はんなり棒」
また、店頭中央に「他所の店の前で立ち止まって食べないで下さい」と大きな貼り紙を掲げ、店の横に英語の貼り紙も出されていた。
素朴だがけっこう目立つ英語の貼り紙
しかもこのお店、背後のビルの2階に食事処がある。2階に上がる階段の踊り場や、食事処の前のベンチで食べることもできるそうだ。
ビルの2階にも「はんなりいなり」の看板があった
さらに「まったく偶然なのですが、条例が施行される少し前から、2階の店内が空いているときは、売店で購入した商品を店の中でも食べていいことにしたんです」という。
ただし、あくまで空いているときだけ。混雑時の店内への持ち込みは禁止だ。
広々した店内。週末はこの中がいっぱいになるという
食事処の食券機。しらす丼が人気のお店である
名の知れた食べ歩き店でもあり、食事処も備えているためか、やはりこの店も「条例施行後の客足の変化は感じない」という。
食事処のしらす丼にも心惹かれるが、食べ歩きグルメの任務を果たさねばならない。さて、何を食べようか。定番の「はんなり棒」もいいが、最近巷で話題になっているこの店の新メニューは、「しらすのミルフィーユ」&「いくらのミルフィーユ」だ。釜揚げしらす・とびこ・卵焼き・酢飯が層をなし、その上に生しらすかいくらをトッピングするという、聞いただけでよだれが出そうな一品だ。
しらすといくらのミルフィーユ
だがここでしっかりご飯ものを食べてしまうと、ほかの食べ歩きに支障をきたす恐れがある。というわけで、今回はやはり定番の「はんなり棒」をチョイスすることにした。
真剣な面持ちで商品の説明を聞く食べ歩きお助け隊
で、結局、店のおススメで、ごぼうの「はんなり棒(税込み300円)」を購入。
品物を渡しながら「階段の上で食べられますよ」と案内する店員さん
うながされるまま階段を上がろうとすると、踊り場のベンチで、「あのミルフィーユ」を食べている和服のうら若き乙女二人組に遭遇した。
お一人は顔出しOK、お一人は顔出し不可。でもここは平等にお顔を伏せることに
4月から施行された条例のことをご存知か訊いてみると、お一人は「知っている」、お一人は「知らない」という。条例について説明してからどう思うか尋ねると、お一人は「条例ができてよかったと思う。自分だって服を汚されたくないから」、お一人は「めんどくさいから、それなら食べない」とのお答え。何かにつけ対照的な二人組だった。
ただお二人とも「ここにはベンチがあって良かった」とのこと。そこは意見が一致。確かにあのミルフィーユのようなものだとなおさら、立って食べるイメージではない。
お二人に「では、ごゆっくり」と別れを告げ、我々はさらに階段を上がり、2階の食事処前のベンチで食べることにした。
陽だまりの踊り場ベンチと比べると・・・
少々暗い食事処前のベンチ
「うーん、ミルフィーユにしとけばよかったかなぁ」
と、こちらの二人組は意見があう。だが、さすがに人気の定番、味はお揚げがジューシーで旨かった。
食後のゴミは、この店も店員さんへの手渡しスタイル