新横浜発「トイレ診断士の厠堂」の謎に迫る!
ココがキニナル!
新横浜駅の北口のデイリーストアの近くに「トイレ診断士の厠堂」というのがあるんですが、あれは何なんでしょうか(ichitomoさん、ヨコさん、keeenさん、がんさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
「トイレ診断士の厠堂」は、神奈川区羽沢町に本社を置く「株式会社アメニティ」がネーミングライツを獲得した公衆トイレ。トイレ診断士? 本文で!
ライター:松本 伸也
トイレ診断士の総本山へ到着
目的地は小便小僧のオブジェがオシャレ
新横浜から車で向かった先は神奈川区羽沢町に本社を置く株式会社アメニティ(資本金:6210万5000円、従業員数:45名)。明るく開放的なオフィスで迎えてくれた、同社情報センター室の内田康治課長にお話しをうかがおう。
対応いただいた内田さん。笑顔がステキ
「私どもは、『トイレの総合メンテナンス』の会社になります。汚れたからきれいにするとか、詰まったから直すということの手前、今あるトイレをきれいに維持するという、いわば予防型のメンテナンスですね。契約いただいたお客さまへ定期的にうかがって、汚れが付いたりにおいが出ないようにメンテナンスをいたします」と社業を紹介してくれた内田さん。
個人宅は対象ではなく、大勢の人が使う施設や公共の場、企業や飲食店などがお客さんになっており、京浜急行(全駅)や横浜スタジアムなどのトイレも、アメニティの“トイレ診断士”がメンテナンスをしている。「トイレがきれいだとやっぱり嬉しいですよね。そのお店や施設の“顔”と見る方もいますので、そのつもりでやっております」とニッコリ。
横浜スタジアムのトイレ。え、こんなにきれいなのっ!?
お、“トイレ診断士”が出てきました・・・「“トイレ診断士”は言ってみれば“トイレのお医者さん”です。受け持つトイレの現状、汚れやにおい、設備はどうなっているかを判断して、適切な処置を行ないます。配管に内視鏡を通したり、換気扇が回ってはいるもののちゃんと換気できる水準に達しているか、などもチェックするんですよ」と教えてくれた内田さんも「1級トイレ診断士」の資格を持っている。
厚生労働省から認定されたこの社内資格は、「アメニティネットワーク」と呼ばれる全国各地の加盟店の誰でも同じレベルでサービスを提供できるために存在しており、年に一度の資格試験では、“通常目に見える範囲の診断”を行なえる2級こそ9割前後の合格率だが、配管の検査など“内に潜んでいる箇所の診断”も可能になる1級は合格率4割前後に狭まるとか。
「そうなると1年間はまた勉強です」という厳しさからも、アメニティが関わるトイレに信頼も置けよう。
「1級トイレ診断士」の内田さん。「Bネームって何?」と思ったアナタは鋭い
「1級トイレ診断士」である内田さんが関わったトイレの思い出を・・・と話を振ろうかと思いきや、なんと今日の目的である新横浜駅前の「トイレ診断士の厠堂」がまさに内田さんが先頭に立っての仕事だったとか。ネーミングライツ取得の話から一気に行こう。
「たとえば日産スタジアムのように『横浜国際競技場の命名権を○○億円で募集します』というのではありませんでした。まず、ネーミングライツというと金銭を支払って・・・というのが一般的ですが、初期の改修費用と年間のメンテナンス費用(年間約50万円相当)を請け負うという“技術提供”で契約が成されています」
日産スタジアム。「横浜国際競技場」が命名されて、ですね
「そこで、私どもから横浜市へ提案する形で持ちかけました。というのも、『トイレ診断士の厠堂』はそのときすでに渋谷区のネーミングライツとして1軒目があったからです(現在は京都にも1軒ある)」。
こちらが「渋谷区役所前 トイレ診断士の厠堂」
「まず渋谷区が『公衆トイレでネーミングライツ募集』と打ち出したんですが、ある意味当然のように誰からも手が上がらない。それが新聞で出たときに、私どもの社員、加盟店さんが『これはウチがやるしかないんじゃないですか?』って社長に話したんですよ」と内田さん。
「それで社長が『やるのはいいけれども、ウチがやって汚かったら問題だろ?』ってことで、調査をした結果、渋谷区役所前の公衆トイレならできるだろう、として参加したんです。それでもだいぶ汚かったので、大きくメンテナンスをしてからですけれどもね」と、これが新横浜駅に繋がったわけだ。
渋谷の厠堂内にはこんなありがたいお言葉が
渋谷区といえばここも以前はネーミングライツ物件でした
「渋谷と同じようにいくつかのトイレを調査しましたが、最終的に駅を利用する人も多く、また私どもの会社からもいちばん近いこともあり、地域貢献という考えからも新横浜駅前に落ち着きました」と言う内田さんが、いのいちばんとなる最初の改修工事を任されることになった。
「ここにしようと決めたものの、まあ・・・。汚い、臭い、暗い、設備もボロボロ、“怖い”も含めて見事な4K状態です(笑)。なので、壊れている便器など使えない物を交換したり、使える便器も取り外して会社へ持ち込んで洗浄、コーティングするなどして再設置したりします。照明は暗くなると点灯するものからLED(発光ダイオード)に交換して」という下の写真のような劇的ビフォーアフターをした結果・・・
まあなんということでしょう、きれいな「新横浜駅前 トイレ診断士の厠堂」に生まれ変わったというわけだ。その日、2011(平成23)年11月8日。契約期間開始の10月20日から18日後のことだった。
「最初は『やる意味あるのかな』と思ったんです、実は(笑)。でも、自分が関わって改修しきれいになって、使ってくれる人もいて、こんな取材のように注目もしてもらっている。いまとなってはやってよかったと本当に思いますね(ニッコリ)」。施工後は、飲み屋での初対面などでも「お、あの新横浜のトイレですかっ」と話題になり、新規の契約に繋がることもあるとか。なによりです。
さあ、ここまででおわかりだろう。つまり、「トイレ診断士の厠堂」とは横浜市のネーミングライツに基づいて、厚生労働省が認めた社内資格であるトイレ診断士の資格を持った人たちが綺麗にしたトイレのことだった。生物学の博士が用いるナンパ術ではなかったのである。当たり前だ(笑)