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謎すぎる名前のお稲荷さん、武蔵中原にある「ピンスケ稲荷」と「権九郎稲荷」の正体は?

ココがキニナル!

武蔵中原駅の近くに2つのお稲荷さんが並んでいます。名前が「正一位ピンスケ大戸稲荷大明神」と「正一位権九郎稲荷」といいます。「ピンスケ」と「権九郎」って何のことでしょうか?(ねこぼくさんのキニナル)

はまれぽ調査結果!

辺り一帯にいた狐の名前。ピンスケは権九郎(ごんくろう)狐の子どもで、ほかに「おひな」というピンスケの母狐がいた。

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ライター:細野 誠治

3匹の狐と、昔と今の話

大戸會館で教えてもらった住所へ向かう。閑静な住宅街である町なかに、パッチワークのように農地が散見する。そして顔を上げれば、再開発著しい武蔵小杉の高層タワーが眺望できる。
 


農地がちらほら。この町も開発のただ中か
 

高層マンション、分譲住宅に農地と、目が少し迷う


大きな敷地に建つ立派なお宅の田邊さん。急な申し出にも嫌な顔ひとつせずに迎えてくださった。
 


ピンスケ稲荷を管理されている田邊進さん。78歳


キニナル質問をぶつけてみると、まず最初にこの辺りの歴史についてお話をしてくださった。
順を追って説明した方が入りやすいと思う。ちょっとだけ昔話を・・・。

明治以前に、この辺りは見渡す限り田畑と薮が混在する一大農地だったそうだ。そしてここには3匹の狐が住み着いていた。
狐の名前は「権九郎」「おひな」「ピンスケ」。権九郎と、おひなは夫婦で、その子どもがピンスケ。
 


「ピンスケ」は名前だ


いたずら狐だったらしく、言い伝えが残っている。
「おひな」と名乗る美しい娘が村人に「井田(地名)の親戚のところに行きたいのですが、日が暮れてしまいました。一緒に歩いてくれませんか?」と言ったそうだ。しばし一緒に歩くと、村人の袖が引っ張られた。ふと見ると1匹の狐が走り去って行った。気づくとおひなはおらず、持っていた弁当の中身が全部食べられていた。
 


写真の森の向こうが井田


ある村人が松の木を女性と勘違いして抱きついていた・・・とか、お堀のなかに入って、その場所を原っぱだと勘違いしていた者がいたとか、こんな話がゴロゴロ。

そんなおひなを鎮めるために、今から200年くらい前に稲荷社を祀ったそうだ。
この「おひな稲荷」、4年ほど前まで南武線沿いの上小田中南(かみこだなかみなみ)公園の近くにあったそうだが、現在は取り壊され住宅が建っている。魂は京都の伏見稲荷大社に返されたという。とても美しい女のお稲荷さんだったそうだ(権九郎は、男やもめか・・・)
 


おひな稲荷はもうなく、魂は京都へ


次にピンスケの父である「権九郎稲荷」だが、田邊氏から預かった資料を精読するも建立の年は分からなかった。
 


お借りした資料。3稲荷はさまざまな媒体で取り上げられていることが分かる


権九郎稲荷の所有、管理をしていた布施さんという方がおられたのだが、既に亡くなっており、現在はピンスケ稲荷同様に田邊氏が管理を行っている。

さて、問題のピンスケ稲荷だが「権九郎稲荷」と隣接している理由は、社を移したことが原因だそうだ。
ピンスケ稲荷の建立は安政5年。1858年だから今から156年前。元は大戸小学校の校庭のある場所にあったという。
 


大戸小学校の校庭。写真の中央あたりにあった


移設は1939(昭和14)年。国民学校(後の大戸小学校)創設に当たり、田邊氏の父・亘(わたる)氏が土地確保の取りまとめ役として計画を進めていた。そしてピンスケ稲荷を取り壊す直前、息子の進氏(当時4歳)が突如、麻疹(はしか)にかかり倒れた。
 


町の名士だった故人の田邊亘氏。消防団員でもあったそうだ


当時、麻疹はとても危険な病で、進氏の兄も幼いころに麻疹で命を落としていたという。父の亘氏はさまざまな病院を巡り、息子の快癒(かいゆ)に奔走した。そして祈祷師にも相談をした。すると「稲荷が住処を壊されることに助けを求めているのでは」と指摘をされると亘氏は稲荷社を小学校の端、ちょうど権九郎稲荷の目の前に移したそうだ。

すると霊験か現代医学か、息子の進氏は麻疹を克服。快方に向かったという。
 


本当のところはわかりませんが・・・と進氏


以来、亘氏は熱心に稲荷神社の管理をするように。
掃除から賽銭の管理、社の保護とそれはそれは熱心に活動をしたそうだ。
進氏とその奥さま、娘さんと皆が口をそろえて「本当に熱心だった」と言う。
そして亘氏の志は、息子の進氏が引き継いでいる。

亘氏は、ピンスケと「契約」をしたんだろうなと容易に想像がつく。
息子を助けてくださいって。
 


約束


ちょっぴり場が、しんみりする。

「そうそう、昔、こんなことがあって」と娘さん。
「昔、おじいちゃん(亘氏)が自転車とぶつかって入院したんです。そうしたら夢枕に真っ白な狐が現れて“自分が目を離したスキにこんなことになって、済まない”って言ったんですって」

どうして日本の神さまって、こんなに茶目っ気たっぷりなんだろう・・・。

座が明るくなった。

最後に、ピンスケ稲荷と権九郎稲荷はどんなご利益があるんだろう?
「元々、農業の神様でそれが時代を経て商売の神様になって。あと、大戸小学校の子たちが修学旅行に行く際に“無事に帰って来られますように”って交通安全祈願をするそうですよ」
 


交通安全にも




取材を終えて

神を信じますか? という言葉。今回の取材をしてみて、あれって少しズレてるんじゃなかと思った。

「信じる」「信じない」という次元ではなく、「そこにあるのだ」という考え方が源流にあって、日々が積み重なっているんだな、と(そんな積み重ねが、信仰をあやふやにしてたりもするんだけど)
 


再びピンスケ稲荷へ。お供えを


それはさておき、“祈らずにはおられない瞬間”が見えた取材だった。
「戦地から無事に生きて帰りたい、帰ってきますように」「子どもを失いたくない」気持ちがあって、偶然か必然か願いが叶った者が、律儀に「恩を返している」瞬間は、間違いなく温かい。

近くに寄った際には、一度訪れてみてはいかがでしょうか?
信仰の先に、人々の想いがよく見えるスポットでした。
細野は最後に、商売繁盛を祈ってもう1回お参りをしておきます。
 


父親の権九郎稲荷にも


取材を受けていただきまして、ありがとうございました。


―終わり―
 

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  • おひな稲荷の魂は権九郎稲荷のところに一緒に祀ってあげてほしかったなぁ。

  • 武くん、同級生のお店です。久々に行こうかな~。

  • ここは以前の自宅近所です。ピンスケって変な名前だなーとずっと疑問に思ってました。武蔵中原は再開発が目覚ましい武蔵小杉とは異なり、閑静な住宅街の中に突然昔ながらの農家風のお家があったりして、なんかほっとする街です。

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