街の花から天然ハチミツを。横浜市内のビル屋上で行われている「都市養蜂」に密着レポート!
ココがキニナル!
「Hama Boom Boom!」という団体さんが、関内のオフィスビル屋上でハチミツ作りをしているそうです。活動現場の様子や横浜産のハチミツの味などを知りたいです。(takedaiwaさん/だいさん)
はまれぽ調査結果!
都市養蜂で街づくりを推進する「Hama Boom Boom!プロジェクト」と協働し、横浜市内の企業・大学などで養蜂活動を展開している。
ライター:菱沼 真理奈
約5000匹のミツバチたちとご対面!
一通りお話を伺ったところで、いよいよ屋上の養蜂現場へ! たくさんのミツバチちゃんと、作業の様子を見学させていただいた。
屋上の一角に建てられた小屋の中に巣箱が置かれている
屋上にはミツバチの好きなラベンダーの花壇も
こちらでは、サークルメンバーの高木千晴(たかぎ・ちはる)さんに、見学時の注意点や実際の作業について伺った。
サークルのスタート時から活動している高木さん
「ミツバチは意味もなく自分から攻撃してくることはありませんが、作業中は必ず防護服と帽子を着用します。体にとまったら手で払わずに、そっと息を吹きかけて飛ばすようにします。あと、激しい動作や急な動き、整髪料や香水、黒い服(クマと間違えられて刺されることがある)もNGです」と説明する高木さん。
しまった・・・筆者が着ている上着は黒なので、ミツバチから見ればクマさん? とりあえず、今回は見学するだけなので大丈夫とのこと。
防護帽をかぶって、いざ見学!
ただし、いくら注意していても刺されることはあるので、現場には専用の救急キットが用意されている。刺されたら針を抜いてポイズンリムーバーで毒を吸い取り、水で流して冷やし、虫刺され薬を塗っておけば大丈夫だそう。
専用キットの注射器のようなリムーバーで毒を吸い取る(使用例)
取材時は繁殖期前の4月末だったため、巣箱にいるミツバチは5000匹程度とのことだが、夏ごろには2~5万匹にまで増えるそうだ。5000匹と聞いただけでも驚きなのに、これから何万匹もの大群になるなんて、ちょっとスゴイ。
6階建てビルの屋上からは、横浜スタジアムや横浜公園を一望
高木さんによると、ミツバチは寒さが苦手で、冬はほとんど活動しないという。寒さが厳しいと、全滅することもあるそうだ。そのため、寒い時期は断熱材で巣箱を囲って防寒し、月に1~2回ほどエサ(砂糖水)を与えて越冬を見守るという。
無事に越冬し、ミツバチの活動が活発になる5月~9月までは、週1回のペースで「内検(ないけん)」や採蜜作業などを行う。内検とは、巣箱の中から巣枠を取り出して、ミツバチの状態を観察する重要な作業だ。
巣箱を開けてミツバチが住む巣枠を取り出す
うわ~~、巣枠にはミツバチがびっしり!!
うひょ~~~~
恐る恐る巣枠を手にする編集部・小島。ちょっと腰が引けてる
「内検では、女王蜂は元気か、タマゴを順調に生んでいるか、ミツバチが病気にかかっていないかなど、目視でくまなくチェックします。また、巣の中に女王バチの卵が見つかったら、ちょっとかわいそうですが処分します」
「群内の女王バチが2匹になってしまうと、一方の女王バチが追い出されてミツバチも移動し、どこかほかの場所で巣を作ってしまうからです。街の中で巣を作ったら危ないですからね」と高木さん。
内検の様子
また、現役の女王バチが老齢(寿命は約2年)の場合は、サナギを生かして世代交代させることもあるそうだ。ただし、そのタイミングなどを的確に見極めるためには、それ相当の知識と経験が必要だという。
こちらは働きバチのサナギちゃん。何だかカワイイ
内検などの作業を行う際には、巣枠を取り出す前に燻煙器(くんえんき)でミツバチに煙を吹きかける。煙を浴びるとミツバチは火事だと思って混乱し、活動がにぶくなるそうだ。
作業の前に燻煙器(左)でミツバチに煙を吹きかける
巣枠の中に蜜がたまっていたら、巣枠についているミツバチをブラシでそっと払い、表面の蜜蝋をナイフでこそげ取り、遠心分離機にかけて採蜜する。多い時は1日の採蜜作業で15kg前後のハチミツが採れるそうだ。
ちなみに、蜜を集める働きバチはメスだけで、チューリップなど球根類の花の蜜は採らないという。ミツバチの生態って、知れば知るほど驚きと不思議がいっぱいですね。
採蜜に使用する遠心分離機
蜜の詰まった巣枠を遠心分離機に入れてハンドルを回し
中にたまったハチミツを下の蛇口から採取
実はこちらのミツバチたちは、数日後に市内の別の拠点へ引っ越すことになっているそうだ。養蜂は作業のさまざまな見極めが難しく知識や経験が必要で、社員のサークル活動という形では対応しきれなくなってきたという。
「今後は有志の社員が『Hama Boom Boom!』のメンバーとして、新たな拠点で活動を続けることになっています。ひとまず、当社の屋上での養蜂活動は終了となりますが『Hama Boom Boom!プロジェクト』の次なるステージに向けて、私も応援を続けたいと思います」と秋山さん。
ここでの活動は、次なるステージへ引き継がれる
この場所がなくなってしまうからこそ、今回の取材で最後の記録を残せたことを、筆者も嬉しく思う。引越ししたミツバチたちも、新天地で元気に飛び回りながら、新しいつながりを運んできてくれるに違いない。