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【横浜の名建築】三溪園の重要文化財 茶室『春草廬』

ココがキニナル!

横浜にある数多くの名建築を詳しくレポートするこのシリーズ。第12回は、三溪園にある重要文化財『春草廬』。信長の弟で、利休の弟子だった有楽斎が作った、9つもの窓を持つ茶室は、穏やかに美しい異世界だった。

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ライター:吉澤 由美子

明るくやわらかい異空間

(続き)

壁に開けられた狭く小さい片引き戸の躙口(にじりぐち)はとても窮屈で、身をかがめて入る必要がある。
 


躙口の右上に見える棚が、刀賭け。茶室に武家らしい趣を与えているが、刀は置けそうにない形だけのもの


這い入るように茶室へと進むと、モンドリアンのように配置された窓の障子から柔らかい光の入る小さな空間が迎えてくれる。

茶室の間取りは、三畳台目(さんじょうだいめ)。
客が座る三畳の客座に、台目畳と呼ばれるやや小ぶりな畳で茶席の亭主がお茶を点てる点前座(てまえざ)がついている。
 


上座から眺めた茶室内部。躙口の隣にある張り出した部分が、点前座。客座と点前座は天井の意匠が違うことがわかる


点前座と客座の間にある袖壁の下部が吹き抜けになっており、点前座に風炉先窓(ふろさきまど)があることで客の席からも茶道具がよく見えるよう工夫されている。

土壁の下部に白い紙が貼ってあるのは、着物の裾が擦れて痛むのを防ぐ腰張り。
天井の低さが江戸の茶室らしさを感じさせる。
 


点前座から床の間を眺める。床の間の脇壁には、墨跡窓(ぼくせきまど)がある


9つの窓は下地窓(したじまど)と連子窓(れんじまど)が組み合わさっている。

土壁を作る時、一部に土を塗らず開口部とする下地窓。
細い材を格子状に組んだ小舞(こまい)という壁の下地が見えている。

細い竹を縦に粗く組んで横抜きが1本渡してある連子窓。
障子を通した光はそれぞれの桟の影で柔らかく散らされ、茶室を優しい明るさで満たす。

茶室の横には、水屋がついている。
その間を隔てているのが、茶を点てる亭主が通る茶道口(さどうぐち)と、襖のある給仕口。
 


茶道口は上部がアーチになっている火灯口(かとうぐち)。奥に雲雀棚(ひばりだな)という小さな釣り棚が見える


この襖は、縁も引手金具もない茶室特有のもの。
シンプルモダンでマンションの和室にも合いそうだ。
 


畳敷きの水屋。背後に簀子流し(すのこながし)などがある