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昭和の名残? 横浜市内に点在する「謎のタワー」の正体とは

昭和の名残? 横浜市内に点在する「謎のタワー」の正体とは

ココがキニナル!

南区六ツ川のこども植物園近くの駐車場や磯子区杉田6-29-12にある「謎のタワー」は、何なのか? もしかしたら市内の他の所にもあるのかも。とてもキニナリます!(まさきち557さん/横濱マリーさん)

はまれぽ調査結果!

「謎のタワー」の正体は団地の給水塔だった。昭和の団地には多く見られたが、給水システムの進化で姿を消しつつあるランドマークタワー。今なお残るその貴重な景観を求めて、編集部は市内を巡った。

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ライター:結城靖博

給水塔はなぜ高い?


 
2つの謎のタワーはいずれも団地の給水塔だった。ではなぜ、団地に給水塔が、そして給水塔にあれだけの高さが必要なのか?
それは、1塔の給水設備だけで複数棟の集合住宅の各階に滞りなく水を供給するためだ。
そのことを理解するのにわかりやすい写真がある。
 


内部構造がむき出しの給水塔

 
ただしこれは、東京・練馬高野台にある南田中団地の給水塔。残念ながら横浜市内のものではない。たまたま遭遇し、参考までに撮影した。

ともあれ、見ての通り塔の頂には大きな貯水タンクがある。そして、格子状の塔の内部をよく見ると、地上とタンクをつなぐ金属管が2本垂直に通っている。1本がタンクへ水を汲み上げるため、もう1本がタンクから水を配水するためのものだ。
この1つのタンクに溜められた水が、団地各棟の住戸へ送られている。本来ならばすべての建屋の屋上に必要な貯水槽を、たった1本の塔がまかなっているわけだ。
しかも電力ではなく、重力による水圧で水を巡らせている。だが、大きな水圧をかけるためには貯水槽は高い位置になければならない。それが給水塔に高さがある理由だ。

昭和40~50年代、日本各地に生まれた大規模集合住宅。それとともに林立したのがこの給水塔だった。
ちなみに塔の平均的な高さは約30メートル。その高さゆえ、単なる機能性だけではなく、地域のランドマークとしても親しまれてきた。それが給水塔の面白さだともいえる。
 


杉田台の高台から望んだ杉田大谷団地。遠くに根岸湾が見える

 

上の杉田大谷団地ができたのも1973(昭和48)年。また、最初に取材した六ツ川団地も1968(昭和43)年に築造されている。

ところがその後、給水システムの進化にともない、水をいったんタンクに貯めずに上水道管から直接各戸へ配水する「直結給水方式」が普及したことで、集合住宅から給水塔は次第に姿を消していく。
いわば「給水塔のある風景」は、ノスタルジックな昭和の記憶ともいえるのだ。

しかしまだ横浜にも、給水塔が存在している場所は残されている。その貴重な風景のいくつかを追って、市内各所を巡ることにした。 
 
 
 

給水塔を巡る旅(1)――戸塚区・大正住宅


 
横浜の2本と練馬の内部構造むき出し型を比べてもわかる通り、給水塔といってもさまざまな形がある。だが形状的には、いくつかのパターンに分類できるようだ。
その中でもっとも一般的なのは、やはりキニナル投稿のユーザーさんが「謎のタワー」と呼んだ直方体形のタイプのようだ。
そのタイプの給水塔を、もう1本紹介しよう。

それは、戸塚区の大正住宅にある。団地の築造は1969(昭和44)年。
 

大正住宅は国道1号線原宿交差点のほど近く

 

給水塔は1-7号棟のそばにある
 

配色はなんとなく大阪・千里万博公園の「太陽の塔」を連想させる

 
直方体形のタイプは、ちょっと味気ない形をしていると言えなくもない。だからこそ、すでに見た3つの塔からもわかる通り、色のデザイン性に設計者がセンスを賭けているように感じる。この塔は、白と赤のコントラストがとても素敵だ。
 


「まさかりが淵市民の森」近く、深谷町(ふかやちょう)の高台住宅地からの眺め

 
 
 

給水塔を巡る旅(2)――緑区・長津田(ながつた)団地


 
今度は、ほかの形状の給水塔を見てみよう。場所は横浜の郊外、緑区にある長津田団地だ。
 

長津田団地は東急田園都市線田奈(たな)駅のほど近く
 

給水塔は1号棟の横にある
 

塔のフォルムはこんな感じ
 

反対側から見ると、またちょっと印象が変わる
 

いずれにせよ、この塔も間近から見上げると妙に凛々しい
 

近くを流れる恩田川(おんだがわ)からの遠望

 
東急田園都市線の電車がひっきりなしに横切っていく。この電車を利用する人たちは、いつもこの塔のある風景を眺めているのだろう。