【横浜の名建築】横浜市イギリス館
ココがキニナル!
横浜にある数多くの名建築を詳しくレポートするこのシリーズ。第31回は、『横浜市イギリス館』英国総領事公邸として1937年に建てられた威厳と風格あるこの建物は、映画『英国王のスピーチ』にもゆかりがあった
ライター:吉澤 由美子
アールヌーボーのディティール
玄関は、英国の威厳に来客を迎える暖かさが絶妙に加わっている。
天井から下がる照明器具は、創建当時からのもの
上品なアイアンワーク
玄関は、ガラス扉と木製扉の2重になっていて、その間の天井にはガラスがはめ込まれたスカイライトがある。
カーブを描いた天井に並ぶ丸いガラスはアールヌーボーの意匠
深い庇の奥にありながら、このスカイライトが玄関に柔らかい光を届けている。
天井から壁へとつながるなだらかなラインはイギリス的。7段という細かさで入った天井と壁の間のモールディングは、アールヌーボーの意匠だ。
玄関ホールのライトも総領事公邸時代のものらしい
玄関横にはクローク。中に入ると腰高にタイルが貼られ、コート掛けが並んでいる。
クロークは現在、女子トイレ。女性はお見逃しなく
玄関ホールは左に曲がり、ホールや階段、キッチンにつながっていて、階段の横には壁を丸くくぼませたニッチと呼ばれるスペースがある。
こちらは、ジョージ6世の肖像画がかかっていたとされている場所
よく見ると絵を掛けたであろう小さなフックが残されている。
奥の配膳室には作り付けのカップボードが並び、ベージュのタイルが壁をめぐる。
清潔感の溢れる配膳室
中心が丸く膨らんだタイルはこれまでも見たことがあったが、ここのタイルは中心がへこんだ形のタイルもあって、その徹底したこだわりに驚く。
カーブを描いたタイル
隣のキッチンのタイルは、上部にある茶色の帯が壁の印象を引き締めている。
公邸にしては狭いキッチンは英国的?
部屋から使用人を呼ぶ表示パネルはナショナル製
ドアノブや階段の手すりには、巻貝のような意匠が共通して使われている。目立たない装飾だが、印象を和らげ家庭的を加えている。
ノブの角度や鍵穴の形も魅力的
厚みのあるふくらみの手すり