個人店巡りを楽しむ旅。はま旅Vol.62「岸根公園編」
ココがキニナル!
横浜市内全駅全下車の「はま旅」第62回は、チェーン店に負けない個人商店を応援したくなる、岸根公園駅の旅。
ライター:山口 愛愛
横浜市営地下鉄ブルーラインの岸根公園駅。両隣の片倉町駅と新横浜駅、東横線の妙蓮寺駅、白楽駅まで、それぞれ約1.5kmしか離れていない。この狭い範囲に岸根公園以外の名所はあるのだろうか・・・。他の駅の縄張りを荒らさないように気をつけて、さぁ出発!
横浜上麻生道路沿い、岸根公園入口に近い2番出口から出発
旅の始まりは住宅街に隠れた珍店
2番出口から左に進み、横浜上麻生道路を環状2号線の方へ向かって歩いてみたが、目立つものといえば、ファミレスや結婚式場のソシア21くらい。個人店もいくつかあったが撮影を断られてしまったので、駅に戻って聞き込みをすることに。
通りがかりの主婦におすすめのスポットを聞いてみたが予想通り、岸根公園との答え。しかし、4人目のおばさまから「変てこな中華屋があって、昔テレビにも出たらしいわよ」と情報をゲット。
横浜上麻生道路から、坂を上り住宅街へ入っていく。そして、その家は突然現れた。この外観。店ではなく、思わず家といってしまう。
のぼりとメニューはあるものの、どう見ても民家だ
半紙に「いらっしゃいませ」の文字。恐る恐る「お、おじゃまします」
いや、やっぱり、店ではないよね?危ないよね?自問自答しながらも、ゆっくり中へ。すると「いらっしゃぁい」と男性と女性の声がした。人はいるらしい。
「す、すみません。ここお店ですか?」
「ははは、お店ですよ。ちゃんとメニューもあるから。どうぞ、ゆっくりしていってください」とご夫婦が迎えてくれ、取材も快諾してくれた。ひと安心だ。
聞けば、その昔は六角橋で中華屋を営み、その後は原宿や中目黒に移ったが、ご夫婦の年齢も70才を超え、自宅でできる範囲にしようと6年前に自宅の1階を改装して始めたとのこと。もちろん営業許可も取っている。
慣れてくるとくつろげるリビング
「さて作るか」と店主の上重朋文(じょうじゅうともふみ)さん
看板の「上重朋文」が目に入ったとき、一瞬、中国の四字熟語かとも思ったが、店名は店主の名前であった(笑) 記者はタン麺(800円)を注文。鶏ガラと豚骨や野菜を13時間煮込んでスープを作っていると聞き、特別に厨房へ潜入させてもらった。
ぐつぐつと煮込んでいる真っ最中。骨だけで15kgもある
店主が丁寧に作る具だくさんタン麺は、旨みが凝縮したスープと細麺がマッチ
「テレビに出たと聞きましたが?」
「『ぶらり途中下車の旅』ね。なんでこんなところに来たのかわからないけど、放送後にお客さんが押し寄せてすごかったよ」と朋文さん。
「お客さんがたくさん来てくれて3日間も徹夜になってね、過労で1週間入院したのよ。世話ないよね。ははは」と奥さん。80才を超えるというが、お若くて元気。
「東京の店には、ハマショー(もちろん浜田省吾です)、稲葉ちゃんとか松ちゃん(いうまでもなくB’zです)とかもよく来てくれて楽しかったけど、この店も楽しいわよ」
有名人も訪れる中華の名店を経営していた仲良しご夫婦が、岸根公園の自宅でひっそりとラーメン屋を営んでいたのだった。怪しいと思われた店は、なんとも微笑ましい店であった。
ご夫婦の話がおもしろくつい長居してしまったが、散策をしなくては。駅名の通り、岸根公園は外せないので、歩いてみよう。
第二次世界大戦後、米軍が駐留し、野戦病院があった「岸根キャンプ」が返還され公園になったのが、ここ岸根公園。1972年まで米軍が滞在していたという。
広い芝生や神奈川県立武道館、野球場のあるこの公園が米軍キャンプの跡地と思うと趣が違って見えてくる。
芝生の広場とは雰囲気が異なり、武道館の入口は日本庭園を思わせる凛とした空気
水辺の周辺はウッドデッキに。散歩途中のレオ君(9才)もひとやすみ
「アスファルトの道で公園内を周遊できるので、ランニングやベビーカーでのお散歩にもいいですね。武道館もあるので子どもに弓道や柔道も習わせてみたくなりますね」と若いママさんが話してくれた。