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栄区で福祉サービスに力を入れている美容室がある?

ココがキニナル!

サラリーマンが定年退職後に美容師になり、横浜市栄区で美容室をやっているという内容をテレビで見ました。その美容室は福祉サービスに力を入れているらしいので、詳しく調べてください(ゴーゴーさんのキニナル)

はまれぽ調査結果!

福祉美容室カット・クリエイト21は、藤田巖さんが富士通を定年退職後に開いた美容室。出張や送迎など、年配の方が利用しやすいサービスが特長。

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ライター:吉澤 由美子

横浜市栄区の住宅街の中にある小さな商店街に1軒の美容室がある。赤いテントサインには「カット・クリエイト21」という店名の下に「無料送迎」の文字があり、お店の前には店名ロゴの入った軽自動車が停まっている。
 


新大船商店街にあるカット・クリエイト21


カット・クリエイト21の正式名称は、「株式会社福祉美容室カット・クリエイト21」。福祉に力を入れたサービスを行っている美容室だ。

代表取締役の藤田巖(いわお)さんは、1941(昭和16)年生まれの72歳。富士通株式会社を定年退職されてから美容師の道に進まれたという異色の経歴を持っている。

藤田さんがなぜ美容師を目指され、福祉美容室を開くことになったのか、そして今後の展望についてお話を伺った。



富士通のやり手営業マン

東京生まれの藤田さんは、都立広尾高校から日大法学部に進み、卒業後、富士通信機製造(現・富士通)に入社。その後、横浜市港北日吉に引っ越しをして、それから40年以上、横浜市民として暮らしている。
 


趣味はアルゼンチンタンゴというダンディな藤田さん


富士通では、営業推進部長などを歴任。大型コンピューターの営業を担当し、ブラジルのサンパウロに6年赴任するなど海外駐留も経験した。管理職だったので定年は58歳だが、藤田さんは、50歳になった時、定年後の人生設計を考え始める。「第二の人生の方が長くなるかもしれない。だとしたら今までやったことにないものにチャレンジしよう」と検討を重ねた。

美容師を選んだのは、藤田さんがたまたま目にした新聞記事がきっかけ。老人ホームにいる92歳の女性が、機能的には問題がないはずなのに歩かなくなってしまった。ところが、美容師が女性の髪の毛をきれいにカットすると、積極的にいろいろな場所に歩いて行ってコミュニケーションを取るようになったという読売新聞の記事だ。お医者さんにできないことが美容師にできた、この記事は藤田さんに大きな印象を残した。

そんな中、藤田さんのお母様が高齢になって、お年寄りが美容室に行く大変さに気付く。ふと「自分でカットしてあげられたら」と思ったことから美容師という仕事に興味がわいた。「それまで美容師は自分の職業として全く想像していなかったんですよ」と藤田さん。

「定年後、美容師になろう」そう決心した藤田さんはさっそく支度をはじめた。「10年勉強したら、道が開けてくると考えました」と藤田さん。



仕事と勉強に明け暮れた日々



美容師の資格取得には、2年間の学科受講と1年間のインターン経験が必要となる(現在は制度が変わり、インターン制度はなくなっている)。

藤田さんは、仕事を続ける傍ら、美容学校の通信科に入学。リフレッシュ休暇を利用して必須だったスクーリングも受けることができた。会社には内緒だったので、「最近、付き合いが悪くなったな」と言われたりしたらしい。

さらに、インターンは通常1年間のところ会社の休みである土日のみしか行えないことから、平日は会社で仕事、土日はインターンという生活を2年間行うことで無事修了。

この間、平日も朝と夜は美容師の学科や実技の勉強時間にあて、定年の2年前である56歳の時、美容師の免許を取得した。

定年の挨拶状で、藤田さんははじめて「美容師になって、60歳までに美容院を開業する」ことを宣言。
 


「宣言することで退路を断つという気持ちもありました」と藤田さん


退職後、藤田さんはロンドンのヴィダル・サスーンで2ヶ月間、修行する。ヴィダル・サスーンは、「ウォッシュ&ゴー」という洗ったまま出かけられるカットなど、美容業界に革新的な技術をもたらした世界的なヘアスタイリストであり、サロンの名前。世界の一流を体験し、帰国した藤田さんは金沢八景にある美容室で2年間の修行を積む。

58歳で雇ってもらうのは大変だったのでは?と伺うと、藤田さんは「勉強させていただくという気持ちでしたので、失業手当が出る10ヶ月間は無給で、それ以後は交通費のみという条件で採用していただいたんですよ」と教えてれた。



美容と福祉を結ぶ



実際に美容室に入って、藤田さんの心に疑問が生まれてきた。「祖父のような年齢の美容師が担当したら、若い女性は不安になるかもしれない」

一方、お母様が高齢になられたことをきっかけに、藤田さんは介護の勉強もスタート。ホームヘルパー2級の資格も取得した。そんな藤田さんが施設実習を受けた際、老人ホームの「ヘアカットの日」に立ち会う機会があった。
 


お店には「ホームヘルパー2級資格者の店」とある


「見ていたら、男性、女性にかかわらず同じようにバリカンで髪を刈り上げていました。『施設カット』と呼ばれていて、介護する側にとっても、当のお年寄りにとっても手入れが楽で手間が省けるという理由でそのようなカットをしている。女性にとって命より大事なものである髪をそんな風に扱うとは、本当にショックでした」と藤田さん。続けて、「自分だったら、美容と福祉を結びつけることができる。そこに自分の生きる道もあるのではと気付きました」

お年寄りに軸足を置いた美容室を開こう。こうして、福祉美容室のアイデアが生まれた。車での送迎や、出かけられない人に向けて出張サービスも行おう。さらに藤田さんの心には「福祉美容室を全国に広げていって、いつか日本から施設カットをなくしたい」という新しい夢も生まれた。