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横浜市内の動物園にいる猛獣が脱走することはあるのか!?

ココがキニナル!

ある動物園が猛獣の脱走を想定した対策訓練をやっている映像を見たことがあります。市内の動物園でも同様の訓練をやっていると思うので、どんな様子なのか気になります(だいさんのキニナル)

はまれぽ調査結果!

まずは脱走させないように、フェンスや堀、電柵などを含めハード・ソフト両面で徹底管理。万が一の場合に備え、年に1回の訓練が行われている

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ライター:田中 大輔

ご存じの通り、横浜はひとつの自治体内に3つもの動物園を持つ街だ。
動物園や動物が好きな人にはうれしい限りの環境だが、万が一動物が展示場や獣舎から逃げ出してしまったら・・・。
 


もし目の前に大きな動物が現れたら・・・
 

2015(平成27)年5月、名古屋市の東山動植物園でマレーグマの「マーチン」が脱走を企てるという出来事があった。こちらは幸いにも未遂で終わったが、数週間後の中国・山東省にある動物園では、ライオンが飼育員を襲って脱走し、警察に射殺されるという事件もあった。

また、6月にはジョージア(旧グルジア)で、大雨による洪水で動物園から動物が逃げ出し、男性がトラに襲われて死亡するといったニュースが報じられた。

幸いなことに、横浜市ではこれまでに猛獣が脱走したことはないそうだが、こういった万が一の事故を防ぐため、横浜の動物園はどんな対策を取っているのだろうか。横浜の動物園を代表し、国内初の取り組みとなる草食動物と肉食動物を一つの展示場で展示する「アフリカのサバンナ」を誇る、よこはま動物園ズーラシアに取材へ向かった。



脱走を防ぐ三本柱



まず、キニナルにある「動物が逃げてしまった場合の訓練」の前に、そもそも動物が逃げ出さないようにどんな工夫をしているか、から話を始めよう。

取材に対応してくれた飼育展示第一係長の齋藤憲弥(さいとう・のりや)さんによると、お客さんが普段見ている展示場からの脱出防止には力を発揮する「三本柱」があるそうだ。
その三本柱とは、フェンス、モート、電柵の3つ。

フェンスは説明するまでもなくフェンスだ。モートというのは、いわゆる掘のことで、展示場の中でも園路側に設置されていることが多い。
 


ウンピョウの展示は天井まで金網で覆われている
 

こちらはニホンザル展示場のモート。そうそう逃げ出せなさそう
 

フェンスやモートの高さや深さに法的な決まりはないそうだが、海外の飼育マニュアルなどを参考に、動物のサイズや身体能力を考慮して作られている。特に新たに「特定動物」の展示場が作られる際は、第三者機関によって逃亡対策など安全性が適切かどうかが判断されるそうだ。

「特定動物」については後ほど詳しく説明するが、猛獣や大型の動物など、人に危害を加える恐れのある動物たちを指す。
 


先日お届けした野毛山動物園「
しろくまの家」のモートはこんなに深い
 

もうひとつの電柵は、その名の通り電気の流れた柵で、動物が触れるとビリっとするという仕掛け。こちらはフェンスやモートと併せて補助的な役割を担う。
 


インドライオン展示場のモート。フェンスの向こうに電柵も
 

野毛山動物園の「ラージャー」は、ズーラシア時代に2度モートに落ちた
 

当たり前だが動物もビリビリはイヤなので、そちらには近寄らないようになるというわけだ。

ちなみに、この電柵。展示場で初めて触れると動物がパニックになってしまう可能性があるため、室内で意図的に電柵に触れさせ、あらかじめ学習させるのだそうだ。
 


ホンドキツネの背後に見える白い線が電柵
 

レッサーパンダ展示場では滝の手前に電柵を設置
 

これら三本柱に加え、ズーラシアの場合は獣舎内の檻を劣化のないステンレスでしつらえている。その分、初期コストもかかるため全国的に見ても少ないケースだという。
 


ズーラシアで暮らすオランウータンの寝室
 

ステンレス製の金網。しっかりブロック
 

また、意外かもしれないがライオンの檻よりもチンパンジーの檻の方が頑丈だったりする。

基本的にライオンは押すことしかできないが、チンパンジーは力が強い上に器用に檻を引っ張ることもできる。そのため、檻の格子を編み込むように作っているとのことだった。



不測の事態が起きたとしても・・・



脱出事故は「動物園で最もあってはならないこと」と話す齋藤さんだが、数年おきにこの手の事故を耳にするという。「一番多いのは人為的なミスによるものだと思います」と齋藤さん。つまり、飼育係のカギのかけ忘れなどによる脱走劇だ。
 


動物によっては複数のカギをかけて安全性を高めている
 

飼育係の責任者である齋藤さんは、指差し確認を徹底させるなど、人為的ミスによる脱走を起こさないよう腐心している。

その一方で、万が一カギのかけ忘れや扉の閉め忘れがあっても、即脱走とはならないような工夫も建物に施されている。
 


この窓と動物の寝室はつながっていないが、ガードはきっちり
 

「動物が寝室から外に出るまでには、何枚もの扉を通らないといけないんです」と齋藤さんは話す。寝室の扉、寝室を出た通路にも扉、通路の向こうにある前室にも扉、展示場へ行くためにも扉、と何重にもカギのかかる扉を用意し、簡単には脱走ができないようになっているというわけだ。
 


赤い部分に扉がある。前室にはガラス部分があり、中の様子をチェックできる
(画像はイメージです)
 

また、動物園の施設は思っている以上に頑丈だと齋藤さんは話す。「3.11の震災のときも、停電以外の問題は起きなかった。停電も発電機で対応できた」そうだし、「震源に近い地域の動物園でも施設が壊れて動物が逃げたといった話は聞いていない」とのことだ。

冒頭のジョージアでの一件は、洪水の規模や動物園の作りが伝わってこないが、日本の動物園については、よほどのことがなければ大丈夫なようである。