洋食の街、横浜の料理人に密着「横浜コック宝」 伊勢佐木町「グリル桃山」編
ココがキニナル!
横浜の洋食文化をつくった老舗洋食店の料理人に密着取材する「横浜コック宝」。第5回は、こだわりと必死!? な完璧主義者、伊勢佐木町「グリル桃山」店主、山口勝弘さん。
ライター:クドー・シュンサク
「ラクしちゃダメ。41年間この店でやってきて思った大事なことは、美味しい、いつもの味を丹精に作る。あとはお客さんの判断だからね。いつも勝負だよ(笑)。だからラクはできない」
洋食の街、横浜。変わらない、穏やかで、それぞれの確かな思い出がつまった横浜の洋食の味。そして、その文化。美味しい、嬉しい、いつもそばにある洋食を支え続けるコックさん。横浜が日本に、世界に誇る「横浜の洋食」を作るコックさんを、横浜の国宝としてその1日に密着し特集する「横浜コック宝」。
今回のコック宝はこの方
5人目となる今回は、伊勢佐木町で80年以上続く老舗「グリル桃山」の3代目である山口勝弘(やまぐち・かつひろ)さん。いつかの映画俳優のようなダンディズムと確かな腕を持つコック宝。
灼熱のこの季節に、怖気づくような暑さの厨房からお届けします。
それでは。
始めたいと思います
グリル桃山。ここ、やりたかったんです。
あざやかな手さばきと確かな調理
コック宝のコック選出には諸々の方法がある中、自分の舌と評判、取材交渉の場でのお話。それぞれを加味してお話の段階によっては見送ることもしばし。
早朝、開店前のグリル桃山
そんな中、今回のコック宝は筆者の舌と取材交渉の際のお話で必ずやりたいと思った取材。忘れじの、その味と、コック宝のスマートな心意気で実現。
「いいですよ。そういうことならお好きな時に言ってくれれば」
突然の訪問にも、静かに話を最後まで聞いてくれて、笑顔で返してくれた。
約束の日の午前9時にお店へ。仕込みと開店準備に取り掛かるところからおじゃまさせていただくことに。
開店2時間前に厨房で各種火入れと仕込みが始まる
まずは大量のタマネギのカットから
デミグラスソースにも火が入る
あらためて今回のコック宝の紹介。
山口勝弘さん御年59歳
コック歴は18歳から数えて41年。洋食一筋、18歳から41年間積み上げてきたその腕とコック人生。横浜と東京のレストランなどで6年間修業をした後に、グリル桃山へ。先代から店を引き継いだのは今から20年ほど前。頑なに、洋食と向き合ってきたコック宝。
ハンバーグの仕込みに入る
丁寧でいて、やわらかく素早い手つきで
ハンバーグを仕上げていく
なじんだところで少し休ませる
素早さについてコック宝は「自分の味。それをいかに的確に素早く実現させるかが大事。いい加減に手早くやるんではなくて、しっかりと、仕上げる。うん(笑)」
そして。
コック宝は
灼熱の厨房の中を静かに
次々と
仕込みをこなしていく
おそらく50度はあるであろう厨房内でコック宝はスマートに無駄のない動きで仕込みを次から次へと仕上げていく。作業の合間に「暑くてつらいでしょう。少し客席で休んでいいですよ」と声をかけていただいたが、そういうわけにもいかないので付きっきりで。
するとコック宝は「ラクしないのいいね(笑)。無理はしちゃいけないけど、ラクしたらだめだからね。私たちも、いつも必死ですから(笑)。当たり前な気持ちでやったら・・・腕は落ちるでしょう。必死にやることに意味があるし、お客さんの気持ちを裏切ることは絶対に・・・まあ、できないからね」
あっという間に
2時間弱の仕込みの時間が過ぎた。仕込みの合間に暑さでフラフラの筆者を気遣って話してくれたり、綺麗にカットされたニンジンのグラッセが美味しくできたと味見させてくれたり、時折ジョークを挟んで和ませてくれた。
開店前にしばし休息をとるコック宝
そろそろ、11時半のランチの時間が始まります。