横浜公園にある謎の虫網の正体とは?
ココがキニナル!
横浜公園で謎の虫網を見つけましたが、あれってなんですか?(かなたさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
蚊を採取し、海外からの病原体の侵入に備えて検査する機械だった!
ライター:越中 矢住子
公園で見つけた謎の虫網
横浜市民の憩いの場所、横浜公園。緑が多く、サラリーマンも子供もお年寄りも皆、癒される場所である。
そんな横浜公園に突然、出現した謎の虫網。何やらブーンと 低いモーター音が鳴っている。横には「調査中です。手をふれないで下さい」と書かれた黄色い札が下っており、その札には「横浜市衛生研究所」の文字が。
イ ンターネットで検索すると、どうやら横浜市磯子区に同研究所が存在するようだ。
はたしてこの物体は何なのか?早速、その事情を伺った。
謎の虫網と問題の札(写真協力:横浜市衛生研究所)
横浜市衛生研究所
この網は一体何なのか?横浜市衛生研究所、池淵課長の話によると、謎の虫網は蚊を採取するための機器だという。毎年6月から10月にかけて、横浜市内の横浜公園など大きな公園を10ヶ所選択し、園内の木に機器をぶら下げておく。
そこで収集した蚊を集めて、ウエストナイル熱などの病原体を持っているかどうか、その状況を調べているようだ。この調査により蚊が媒介してそれらの感染症が横浜市へ侵入しているかどうかを見極め、万が一の侵入に対して、すぐに対応ができるように備えている。ちなみにウエストナイル熱とは、数年前にカナダやアメリカで大流行した感染症である。
ワクチンなど対応する薬が開発されていないため、発生したら熱を下げる薬を投与するなどの対処療法しかなく、重症化することもある危険な感染症の一つなのだ。
採集された蚊
日本では、アメリカで感染した人が帰国して発生した例が一件あるだけで、国内でこの感染症の発生例はまだない。それでは、なぜこのような検査を強化しているのか?
それは大規模な貿易港を持ち、米軍基地もあり、APECなどの国際的な会合が盛んな横浜市の特性から、海外からの病原体の流入が日本国内で最も懸念されるからである。そのため、他の地域と比較して独自に事前調査を徹底しているそうだ。
ウイルス調査方法はまず蚊の仕分け
では、その調査手順はどうなっているのか。まず、横浜市内の横浜公園など大きな公園へ1区1機器、合計10ヶ所に蚊を採取する機器を設置。機器上にはドライアイスが入った箱があり、気化したドライアイスから出される炭酸ガスに引寄せられる形で蚊が集まってくる。
そして、月2回採取された蚊は、同研究所の検査研究課医動物担当の小曽根さんと伊藤さんが、目視と実体顕微鏡を使って種類と性別を分類する。
このように実体顕微鏡を使って蚊を分別していく(写真協力:横浜市衛生研究所)
昨年、仕分けた蚊の調査実績は5592匹。これは雄を含んだ数らしく、ここから雄は引いて計上される。
なぜ雄だけ引くかというと、人の血を吸うのは雌だけなので、そのため雄と雌は分別するとのこと。
なお、捕まえた蚊の種類は約13種類ほどらしい。
「捕まえた蚊の種類を見分けることにより、侵入するウイルスの目星がつきます。」(小曽根さん)
病原体を媒介する可能性のある蚊をどれだけ多く捕まえたかで、疾病の予測ができ、万が一の場合も早期対応ができるなど危機管理に備えられるそうだ。蚊とそれが媒介する感染症の一覧を示して解説してくれたが、日本脳炎やマラリアという名前が並び、背筋に悪寒が走る。蚊に刺されるということは、感染を考えると本当は怖いことなのだ。
そして種類毎に蚊を分類した後はシャーレに入れ、ウイルス検査を行うものは専用の冷蔵庫へ入れられる。