「人口ゼロの町」、横浜の「秘境町」はどんなとこ? 金沢区編
ココがキニナル!
横浜市統計ポータルサイトを見ると、金沢区能見台森、みず木町、昭和町が人口0です。工場地帯や公園で人口がゼロというのは理解できるけど・・・。人口ゼロの「秘境町」はどんなところ?(横濱マリーさん)
はまれぽ調査結果!
金沢区にある人口ゼロの秘境町は、それぞれ保護緑地や斎場、工場地帯という理由で居住者がいなかった。
ライター:細野 誠治
人だけが、そこにいないマチ。横浜市金沢区の秘境町へ
町(まち)とは「人が多く住むところ」を指すわけですが・・・。
それなのに「人がいない」町が存在していると(この場合「該当住所に居住の登録がない」ということ)。
確かに例外はありますよ、投稿の通り工場地帯や大きな公園など・・・。
例えば臨港パークのある「西区みなとみらい一丁目」には人が住んでいない(Googleマップより)
混同しやすい問題なので、軽くおさらいを。
「この場所に、人が住んでいますよ~」と知らせるために住民票(住民基本台帳)を国(市町村)に申請します。これによって各種の支払いが可能になったり行政サービス、手当が受けられたりします。キニナル投稿にもあったポータルサイトにもカウントされる訳です。
間違いやすいのは本籍地。こちらは日本国内、地番のあるところならどこでもOK(Googleマップより)
住民票(住民基本台帳)は本籍地と違い「生活の本拠」に置く義務があります(正当な理由がなく届出をしない場合は、5万円以下の過料に処されることがあります)。
つまり、今回調査するのは「生活の本拠地」として住民票に置けない場所、住めない生活できない町だということ。横浜市内で。
キニナル投稿にある3つの町は、なぜ人口が0(ゼロ)なのか理由が分からないそうで。投稿によると「秘境町」だと(ネーミングセンス!)。
調べよう。
まずは投稿の確認から。横浜市統計ポータルサイトを見てみよう。
こちらが「横浜市統計ポータルサイト」横浜のさまざまな数値が閲覧できる
サイト内の「区町別世帯と人口」ページの最新データ、2016(平成28)年10月のものをチェック。
うん、確かに人口がゼロだ(横浜市統計ポータルサイトより)
投稿の通りに能見台森、みず木町、昭和町の人口はゼロだ。
(ほかに金沢区内で人口ゼロの町は六浦町、釜利谷町、福浦三丁目、八景島、白帆)
数字とは事象を探る共通単位。それでは目で見る真実を探しましょうよ、と。
という訳で投稿にあった金沢区「能見台森」「みず木町」「昭和町」の3ヶ所へGO(投稿者さまは金沢区民なんだろーか?)。
緑のなかの町 能見台森/みず木町
最初の秘境町は横浜市金沢区「能見台森(のうけんだいもり)」。
最寄りは京急本線「金沢文庫」駅となる。
赤く網かけされた部分が能見台森。ものすごく独特な形状(Googleマップより)
不思議だ。一般的に、町の境界は道路や河川などで区切られているというのに。
が、この疑問、詳しく地図を読めばすぐに謎は氷解する。金沢文庫駅前に、近隣の案内板がある。見てみよう。
能見台森のかたちは、そっくりと保全された森林そのものなのだ
なぜ人がいないのか? 見えてくるものがある。能見台森、町内に踏み入ってみよう。
駅から10分ほど。能見台森、六国峠ハイキングコース入口へ。
写真のようなハイキングコースそのものの道のりが続く
金沢区のベッドタウン。そんな街中に突然、山の尾根が現れたような佇まい。町の四方を住宅街に囲まれた、といったらいいか。傾斜のきつい尾根の周りを、住宅街が蚕食(さんしょく)するように地面を覆っていった、とでも言おうか。
宅地開発が進み、手の入らない場所(峠)に充てられた町名、といった趣き(Google earthより)
ここで資料を見てみよう。
横浜市市民局が発行した書籍、その名もずばり『横浜の町名』。
それによると・・・
能見台森(のうけんだいもり) 昭和六十年五月一日設置
昭和六十年の町界町名番地整理事業の施行にともない、片吹、釜利谷町、谷津町の一部から新設した町。
・・・とある。
周辺の片吹、釜利谷町、谷津町の3町が集まって能見台森が誕生(元を正せば、3つに分断されていたのだと知れる)。昭和60年といえば1985年、今から31年前。
町内には「能見堂跡」が残り・・・
不動池に谷津関ヶ谷不動尊がある
また町内には能見台隧道(ずいどう)、横浜横須賀道路(能見台トンネル)が通る。
保全された緑地、それが能見台森
人のいない、住まない理由も同じ。横浜市の保全緑地、ハイキングコースだから人が住まない町。
誰も住まない町は、住人が希望して誕生? ・・・キニナル続きは次のページ≫