本牧ふ頭で見つかった「ヒアリ」、その後は?
ココがキニナル!
本牧埠頭で500匹のヒアリが発見されたそうです。横浜市はどのような対策を取っていくのか?また、横浜市民が取るべき行動、注意すべき行動、慎むべき行動は?港湾施設に近い公園などは大丈夫か?(みうけんさん)
はまれぽ調査結果!
2017年7月に本牧ふ頭で発見されたヒアリは駆除済み。市の対策はトラップの設置・調査と専門家の調査。近くの公園は問題なく、発見したら行政へ連絡
ライター:すがた もえ子
2017(平成29)年6月ごろから、ニュースをにぎわせていた外来生物「ヒアリ」。7月14日には、横浜市の本牧ふ頭でもヒアリが発見されたということだったが、その後の状況はどうなのか、ヒアリの最前線を調査してきた。
まずは、ヒアリについて。
環境省が配布しているヒアリの資料によると、ヒアリは赤茶色の小型のアリで、腹部は色が濃く黒っぽい赤色をしているのが特徴。体長は2.5mmから6mmと大きさにばらつきがあり、いろいろなサイズのアリが群で行動しているとヒアリの可能性が高い。
ヒアリの大きさはさまざま(環境省HPより)
毒性が強く、ヒアリに刺されるとアレルギー症状を引き起こす場合があり、アナフィラキシーショックで死に至る場合もある。また、土でアリ塚を作るのもヒアリの特徴。南米中部原産のアリで、現在ではアメリカをはじめ世界中に広がりをみせているという。
そのヒアリが、7月14日に本牧ふ頭で500匹発見されたとのことだったが、現在の状況はどうなのだろうか?
ヒアリはふ頭で発見された(写真はイメージ、フリー画像)
ヒアリ発見までの流れ
今回お話を伺ったのは、横浜市環境創造局政策調整部政策課
対応してくれたのは、同課環境プロモーション担当課長の小川久美子(おがわ・くみこ)さん、環境プロモーション担当係長の堀光子(ほり・みつこ)さん、環境プロモーション担当の山口奈々(やまぐち・なな)さん。
7月6日時点の各社報道では「横浜港にヒアリは発見されず」とされたが、その後7月14日の発表では「発見」との報道があった。何がきっかけで発見につながったのだろうか。その経緯を伺うことにした。
「兵庫県で国内初の確認報告があったあと、環境省と国土交通省が連携して主要7港でヒアリの確認調査が実施されました。横浜港では7月5日、7日、11日、14日の各日程で調査し、その日の調査結果を都度発表していました」と小川さん。
調査は日程によって場所を変えて行われ、「14日に調査した場所でヒアリが確認された」ということだ。発見されたヒアリはすぐに駆除され、その後周辺で調査を行ったが発見されなかった。
9月5日確認にされた本牧ふ頭のコンテナ内で見つかったヒアリ(環境省HPより)
8月に取材して以降、9月・10月に本牧ふ頭・大黒ふ頭でヒアリが確認されている。横浜市はヒアリに関する情報をホームページで随時お知らせしているので、最新情報はそちらをチェックしてほしい。
ヒアリの駆除方法は?
さて、7月14日に発見されたヒアリはどんな方法で駆除されたのだろうか。
小川さんによると「ヒアリを発見した場所では薬を撒いて殺虫しました。もしかしたら生き残っているものもいるかもしれないので、発見場所の周りを囲うように置き餌およびトラップを仕掛け、万が一に備えていました」とのこと。
専門業者による液剤の高圧散布(環境省の『ストップ・ザ・ヒアリ』より)
今回の駆除作業では、まず液剤を撒いた。すでに日本に侵入してきている特定外来生物「アルゼンチンアリ」対策として市販されており、ヒアリにも効果があるとされている製品を使用したということだ。
また、アリは餌を食べたら巣に持って帰って仲間に分け与える習性がある。その習性を利用して置き餌も併用して設置した。
置き餌(環境省『ストップ・ザ・ヒアリ』より)
そのほか、生き残っているヒアリがいた場合を考え、発見場所の周囲をトラップで囲った。設置した捕獲トラップとは、どのようなものなのか見せてもらった。
ごきぶりホイホイのようなつくり
内部に粘着テープが施されており、この中に入ったアリを捕獲するというもの。紙製のこのトラップは、風で飛ばされたりはしないのだろうか?
堀さんによると、トラップをガムテープで固定する場合もあるが、コンテナヤードの中は風も強くそれだけでは対応しきれないため、今回は重めの鎖を中に通して飛ばないように対策したとのこと。
また、このトラップは、いくつくらい仕掛けていたのだろうか。
伺ってみると「巣の周囲を囲むような感じで3個です(取材時)」と堀さん。
1週間くらいでトラップを交換していたが、その後ヒアリは確認されなかったため、この場所での調査・防除は8月末で終了した。
ヒアリはコンテナなどに付着してくるという(写真はイメージ、フリー画像)
今後もヒアリが日本にやってくる可能性があると思うのだが、横浜市は何か対策をとっているのだろうか。
「国と調整しながら2つの調査を行っています。ひとつはトラップなどを仕掛ける調査、もうひとつは専門家が実際に見て歩くということです」と小川さん。これらの調査の最新情報については、環境省が10月13日に報道発表をしている。
また、港湾関係者にも注意して見てもらうようにお願いをしており、常時監視の目行き届くようにしているとのこと。実際、港湾関係者の方からも港湾局を通じて「このアリはヒアリだろうか」という問い合わせもあるそうだ。
葉っぱに群がるヒアリ(環境省HPより)
つまり、対策は日々の注意と調査を組み合わせて行われているということだ。
環境省の公開しているヒアリの情報では、ヒアリの女王アリは毎日1000個単位で卵を産むため、繁殖力が強く、いったん定着を許してしまうと食い止めることが難しくなっていく。そのため、水際で食い止めることが重要になる。
侵入と定着を許さないために、環境省と国土交通省、港湾関係者と横浜市が一体となって対策を行っているのだ。
ヒアリの世界分布図(環境省HPより)