特別自治市については否定的な神奈川県

横浜市の特別自治市構想（提言）について意見を伺うと、制度論として未熟だと川瀬課長は切り捨てた。

何兆円軽減できるとか、職員数を千人減らせるとかの一般ウケしそうな論調で報道されているが、そのような二重行政的な問題は、特別自治市でなければ解決できない問題ではない。実際に市が行なった方が良いと思われるものについては、現在も県から市への移譲は少しずつ行っている。

特別自治市という狭い枠で完結させること以上に、広域的な行政サービスを提供する必要がある。
危機管理などについては、より広域な観点で進めていくべきことだし、具体的なことでは、横浜市の水道は相模湖や酒匂川から引かれているが、良い水質を維持するため、相模湖周辺など取水地周辺での開発制限などは神奈川県が行なってきたもの。

横浜市などが特別自治市について検討するのは良いことだけれども、より広域な行政サービスを効率良く行なうためには、県（あるいはより広域な行政区）が必要だというのが、神奈川県の考え。
　

広域自治体としての県の機能の強化。そして市町村への支援とある

国→特別自治市という2段階の行政システムよりも、現在の県あるいは道州制という存在がある3段階の地方行政システムが最も効率が良いというスタンスを県はとっている。

道州制については、真の地方分権改革のために検討しているが、制度を変えるにはまだまだ時間がかかる。しかも、これは国が法律で定めること。
そこで、神奈川県は、今の県、市町村というシステムの中で実施する、国から地方への権限移譲に重きを置いた改革案を作成している。



ひとつのプロジェクト

「京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区」という、プロジェクトが動き出している。
これは、神奈川県、横浜市、川崎市が共同で進めているプロジェクトで、川崎市臨海部にライフサイエンス分野の国際競争拠点を創ろうとするもの。
　

特区は羽田空港の対岸にできる

すでに国の認可が下り、この特区については、税制支援や規制緩和が行なわれ大きな経済効果が期待されている。
国際的競争力を高めるため、たとえば医薬品・医療機器の承認手続きに係わる規制の特例措置や、特定保険用食品における許可基準の緩和が予定されており。また、外国人医師や研究者の出入にも特例措置がとられる。

このプロジェクトは一見、地方分権のテーマとは違うように感じるかも知れないが、医療の規制緩和などについて、特別自治市や道州制などの制度を変えなくても、国、県、市の共同政策として規制の緩和などが行なわれるひとつの例。

このプロジェクトも確かに、国の承認というステップが必要ではあったが、現行の行政システムでも実現したこと。

最後に

「神奈川独立国」は「～のような」が付く、神奈川県としての地方分権案だった。東京へ行くのにパスポートが必要になったら不便だなと思った……などという冗談はさておき、

横浜市、川崎市の特別自治市構想、そして神奈川県の地方分権制度と取材してきた。
川崎市では特別自治市と共に道州制もあるべきという意見だったが、横浜市・川崎市は市として、神奈川県は県として、現在の行政単位でより大きい権限の移譲を求めるものであった。

それぞれの具体的な例を聞くと、確かに地方自治体に権限があるべきと思う内容が多い。
また、同時により広域な行政単位で処理すべき内容もある。

何れにしても、二重行政などのムダは改善されなければならないし、地方の特性に合った多様な取り組みが求められる事項は地方に決定権があるべきだろう。
　
今、できることから改善していく。その延長線上に制度の改革があるように思う。


― 終わり―


◆参考
神奈川県政策局地域政策部広域連携課
http://www.pref.kanagawa.jp/div/0111/

京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区
http://www.city.kawasaki.jp/20/20rinkai/home/tonomachi/shinsei-kihon.pdf