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横浜の凄い会社5・世界初の超微細孔式ナノバブル発生装置を開発!安斉管鉄

ココがキニナル!

横浜にこんなすごい会社があった! 第5回は世界初の超微細孔式ナノバブル発生装置を開発し「世界の海をきれいに」を目指す株式会社安斉管鉄をご紹介!

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ライター:吉田 忍

安斎さんの歩いてきた道



「オヤジが福島から集団就職でこっちに来て、ガス会社で働いていたんです。プロパンガスの配達に行くと、配管をしてくれないかという依頼が多かったので、独立して配管工事の会社を作った、これが安斉管鉄の始まりです」

工業高校を卒業した安斎さんは、まず、安斉管鉄で働きはじめる。

「社長の息子は普通の社員の10倍働いて当たり前と思われるんですね。それで頑張りすぎて肩を壊してしまった。重いものを運べなければ配管工事の仕事は難しい。僕は次男だったので好きなことをしていいよとオヤジに言われて、だったら設計開発をやってみようと思ったんです」
 


プロパンガスを一度に3本担いで…肩を壊したんです


その後、安斎さんは機器の設計開発を行っている会社に入社する。
研究室や企業では市販されていない特殊な機器が必要となる場合が多い。新しい理論に基づいた働きをする機器などは、既存の機器を改造して作ることもできない。そういった機器を設計し、製作する技術者を抱えている会社だ。研究室や企業に設計開発を行える人材を派遣する業務がメインだったが、依頼された機器の設計開発を本社で行う部署もあった。

新人はまず本社で設計開発の部署に回され、適正やスキルがわかったところで派遣に回されるというシステムを取っており、安斎さんも本社で企業や大学の研究室などからの数多くの依頼をこなしていった。

「時給320円で、人が嫌がる仕事ばかり回されていじめられたんですよ」と安斎さん。続けて「でも、本社には素晴らしい図書室があって、暇さえあればそこにこもって猛勉強しました」専門の知識を持っていたわけではないので、ひたすら勉強して、なんとか注文に応え続けた。

お話を伺っていて、いじめられていたというより、こいつならできるだろうと信頼されて困難な仕事を任されたというのが本当のところではなかろうかと思う。

「2年ほどしたころ、課長になれと言われたんだけど、俺を課長にするような会社はダメだと思って辞めました」というから、この人は考え方が普通の人とは違う。

1年ほどスペイン放浪の旅の後、帰国すると、彼の才能を知る人から、揮発性の液体を混ぜる装置の開発を手伝ってほしいと頼まれ、参加。

「こういう仕事は装置が完成しないとお金が入らないんです。私が手伝っていた、その仕事を受けた会社の社長が資金難になって…大変なことが起こったんです」
 


手伝っていた会社の社長が、とんでもない事件を・・・


「強盗しちゃったんですよ」安斎さんは沈痛な表情で、「社長はとても真面目な人だったので、誰にも相談できず思いつめてしまったんですね」と続けた。

その後、安斎さんが開発を引き継ぐことになるが、個人では取引が出来ないので、父と兄の会社である安斉管鉄で引き受けることになり、その時に安斉管鉄へ改めて入社し、MCS事業部を社内に立ちあげた。その後、揮発性の液体を混ぜる装置は無事完成する。

「それをきっかけに、いろいろな機械の注文を受けて開発することになったのですが、その中で、食品を乾燥させる機械を受注したんです」

水やお湯をかけると元に戻るというインスタント食品の具材を作る機械だが、セラミックの遠赤外効果を利用して細胞をほとんど壊さずに乾燥させる方式を考案し制作した。

「一般的なフリーズドライもかなり技術が高くなってきていますが、それとは問題にならないくらい『生と区別つかない』ものが実現できるんです。みなさん本当に驚かれますね。ただ、既存の機械と入れ替えるとなると費用がかなりかかってしまいます。設備投資にお金をかけにくい時代背景もあり、それがネックでまだ採用してくれる会社は少ないんです」と苦笑い。

「その装置の実験でセラミックの上に氷を乗せて溶かしてみたところ、裏側から水がポタポタ垂れてきたんです」

亀裂があるのかと調べてみたが、そうではなく、そのセラミック自体に微細な穴があって水が通り抜けていた。

「そこで、そのセラミックを加工して気体を通してみたら、今までは穴を通す方法では不可能だったナノバブルが出たんです」
 


大学の先生にも最初は信じてもらえませんでした


ナノバブルを研究する大学教授に知らせると、実際に確認するまでは本当のことだと信じてもらえなかったという。小さな穴から気体を出すという方法は不可能で、これほど簡便な装置で安定的にナノバブルを作ることはできないと当時は考えられていたのだ。

超微細孔式では、ほかの方法ではできないゲル状の液体や油にもナノバブルを混入させることができるので、より多くの可能性を秘めている。

安斎さんはすでに二つの特許を持っているが、この装置についても西研デバイズと共同で特許申請をしており、まもなく認定されるとのこと。
 


ナノバブルで世界の海をきれいにしたい



ナノバブルの持つ特性、生物の成長促進や、殺菌効果などは多方面で実用化実験が行われているが、安斎さんは、水の浄化に役立てたいという。

「横浜市と八景島シーパラダイスで水質浄化の実験を行っています」と安斎さん。
 


装置を設置している様子(※写真提供 株式会社安斉管鉄)


水中の気泡は普通、水面に浮いてしまうが、ナノバブルは水中に漂い、ヘドロの中にも浸透する。水中やヘドロの中に空気(酸素)を含ませることになり、それが微生物を活性化させ、有機物(ヘドロ)を分解する。ヘドロが分解されることにより、メタンガスなどの発生を防ぎ、水が浄化される。
 


水中にナノバブルが放出されている様子(※写真提供 株式会社安斉管鉄)


また、有機物の多い水には植物性プランクトンが増えすぎることもあるが、水中の酸素が増えれば植物性プランクトンを捕食する動物性プランクトンが増える。すると、またそれを餌とする小魚、さらに小魚を食べる大きな魚も増えて、食物連鎖が正常に働きはじめ環境が豊かになる。

はがき大のセラミック板8枚で、20m四方くらいに有効で、従来の方式に比べ、電気代も2割程度しかかからない。水上に設置したソーラーパネルの電力だけで運用することも実験されている。

現在、東京湾のヘドロは掘り出して運んで乾燥して焼却という手間も費用も莫大にかけて処理されている。

「ナノバブルは従来の物理法則で説明がつかない性質を持っています。しっかり実証実験を行ってその特性を見極めて、いずれは下水処理もナノバブルで完全に行えるようになれば、人間も食物連鎖に組み込まれつつ豊かな環境を取り戻すことができる。人類がため込んだヘドロを自然に帰して人類が自然の中で共存できる世界を実現したい。それが夢ですね」と安斎さん。

実用化にはまだまだ時間がかかるだろうが、八景島シーパラダイスでの実験では以下の通り良好な効果が報告されている。

以下のグラフは、6月にNB地点にナノバブル発生装置を設置し、7月~8月の2ヶ月間作動させ、6月~9月まで上記の3ヶ所での底生動物の増減状況をグラフにしたもの。
 


ナノバブル発生装置効果検討資料より抜粋(※データ提供 八千代エンジニヤリング株式会社)
<クリックして拡大>


「NB地点」は、ナノバブル発生装置設置地点
「A地点」は、NB地点から3m離れた地点
「B地点」は、NB地点から20m以上離れた地点

まず、NB地点では、作動中に爆発的に個体数が増加。特にヨコエビ、コノハエビが増えている。マルスミダレガイは減少しているが、ナノバブルの影響がないB地点でも減少しているので、ナノバブルがマイナス作用したのではなく、影響が少ない種だと考えられる。

A地点では7月に爆発的増加を示したものの8月には減っているが、ナノバブルの影響を受けないB地点で減少していることから、自然環境において減少する時期だと思われる。NB地点では8月も全く減らず横ばいなのを見ると、A地点からNB地点に移動したことも考えられる。

今後も継続した実験が行われ検証が行われるが、ナノバブルが底生動物の増加、あるいは住みやすい環境を作ることに効果があることは間違いなさそうだ。
 


ナノバブル発生地点付近の写真。魚、貝、海草が見られる(※写真提供 株式会社安斉管鉄)

 


取材を終えて



安斉管鉄 MCS事業部では、横浜に生まれ、横浜に育った安斎さんという技術者が、きれいで豊かな横浜の海を取り戻すための画期的な装置を作り上げていた。

「良い結果・効果だけを簡単に売り込みたくない」。これはインタビュー中に、安斎さんが何度も繰り返した言葉。
 


きれいで豊かな横浜の海を取り戻したいと安斎さん


殺菌効果があるのに、微生物が増えるというのは、実は反対のこと。ヘドロの中に酸素を送り込むと、微生物が生きられるようになって有機物を分解してくれる。しかし、酸素が過剰に供給されると、特に植物と同様に二酸化炭素を必要とする海草などは生息できない。

「マイナス面もきっちりと検証した上で役立つものを作りたいのです。特に水に関することは環境面に大きな影響を与えます。想定外があってはならないし、自分に都合のいいデータだけ集めていては大きな問題にもつながる可能性があります。ですから徹底的に調べて安心できるものを作っていくことを肝に銘じています」と安斎さん。

新しい技術を開発する人からこういった言葉を伺うことができるのはうれしい。


―終わり―
 
株式会社安斉管鉄

 

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  • とても興味深い記事でした。ただ、一部の写真の引用部に誤りがあるようです。(×産創研、⚪︎産総研) 参考: http://www.aist.go.jp/aist_j/science_town/environment/environment_10/environment_10_03.html

  • 最後の「株式会社安斉管鉄」へのリンク、:(コロン)が抜けてて飛べないよ。確認ぐらいしようよ。

  • 最新技術をわかりやすく解説してくれたライター氏、お疲れ様でした。今後も労を厭わないレポートを期待します。

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