儲けは度外視「電池の星野」の秘密

ゆっくりと椅子に腰かけ、「不動産会社は父が先代で私が2代目です。現在も社長業をやっていますが、基本社員のみんなに任せて私は楽しいこっち（電池）の方を主にやっています」と話し始めてくれた。
　

（株）丸進不動産の社長兼「電池の星野」の星野直（なおし）さん

　
先代の元、不動産業に努めていた星野さん。一度、不動産業から身を引き、自分の店を持ち仕事に励んでいた時期があるという。
　

その時やっていた店で時計の電池交換をやっていたのが今につながる

　
「父親には『外出ていくんだったら2度とかえってくるんじゃねーぞ』と釘を刺されましたが、思いのほか店が流行りまして。靴の修理屋だったんですが、そこで時計の電池交換もやってまして・・・軌道に乗ってうまくいったものだから意外にも父親の方から『帰ってきてもいいぞ』と言われましてね（笑）。モザイクモール港北の店だったんですが、そこは知人に譲って、ここに戻ることにしました」。
　

デスクの横に
　

ずらっと
　

大量の時計電池

会社に戻ってきて、自分の自由がある程度持てるようになってから、インターネット上で「電池の星野」として時計電池の商売を再開。モザイクモール港北時代に見つけた独自ルートで安く仕入れ、交換して大きく利益を出していた時とは違い、現在は仕入れ価格から「ほんのり」乗せてほぼ儲けが無い状態で経営。その経営方法の理由を尋ねた。
　

「お客さんの立場になって、親身にやるって決めたらこうなった（笑）」

　
続けて「あくまでも趣味だからね、『電池の星野』は。究極で言うとね、儲けは多くなくていいからお客さんが喜んでくれるかどうか、ネット販売だから地方のいろんなところから注文が入って、お礼の言葉とかいただけるのが嬉しくてね。商売って、元々はそういうもんだと思いますから」と話してくれた。
　

「電池の星野」の安さの秘密についてもう少々

　
時計電池は基本「セット売り」が多く、それをまとめて仕入れお客さんの必要な個数に合わせて販売する「電池の星野」。お客さんが必要な分だけの量を販売。
　

セット売りにしても量販店の5分の1以下で販売

　
独自ルートの安さの秘密としては、日本製・日本梱包ではなく、卸業者を通さずに日本製・外国梱包のものを扱っているという理由も挙げられるという。
　

儲けはあるのか

　
電池は1個65～220円で、1個からの購入にも対応する。送料は何個買っても82円。おおよそ、電池をひとつ売って10円玉が2、3枚の儲け。手間賃など考えるとほとんど儲けはないという。それでも必要な分以上売って儲けようという気持ちはまったくないとのこと。
電池は安くても液漏れが比較的に多いヨーロッパ製の物は扱わず、安心して使えるという日本製の物のみ。注文は1日あたり10件弱。個人でも法人でも問わず注文は受ける。
　

ここで星野さんが経営している不動産業についても言及

　
「商売というのは、どう転んでも信用関係ですから。不動産業も、本来必要としない費用をウチはお客さんからいただかないんです。○○料とか○○金というのは、お客さんに負担させてまで儲けようとは思ってませんでして。大きく儲けるよりも、毎日ごはんが食べれるくらいは稼げればいいというのが私の方針ですし、先代が築いたウチのやりかたなんです」と話してくれた。
　

「関わる全ての人がニコニコできる理想の中小企業をやりたいだけ」と星野さん
　

なんと神主もやっているそうです

　
丸進不動産では、社員の方々の携帯電話（スマートフォン）は公私兼用で電話料金はすべて会社負担。社用車も会社のロゴが外せるようになっていて、好きな時にプライベートでの使用も許可。ガソリン代も会社負担。

休憩では外でしっかり休んでほしいという気持ちから、近所の喫茶店で使える珈琲チケットも支給。会社にいると電話が鳴って出てしまうと休憩にならないからとのこと。
　

感心しきりです

不動産業として、理想の中小企業を掲げる星野社長の心意気と「電池の星野」の爆安さ。つながらなかった不動産と電池でしたが、笑顔を作るという信念のもとに、最後はつながりました。

取材を終えて

「人と人とが信じ合いながらニコニコできる世の中じゃないとダメだ」という星野さん。バブル期とその崩壊後の社会も見てきたが、先代の経営方針のもと、丸進不動産はほぼノーダメージで時代を超えたという。そこには過不足のない笑顔が存在した。
その理念をこれからも続けていくと最後に話してくれた。


―終わり―

電池の星野
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