京急線の駅名で最初に「京急」がつく駅とつかない駅がある理由とは?
ココがキニナル!
京急の駅には、京急川崎、京急久里浜など、地名の上に「京急」がつく駅がいくつかありますが、つく駅とつかない駅の違いは?他社の駅名とかぶらないためかとも思いましたが例外もあり、気になります(だいさん)
はまれぽ調査結果!
資料がなく詳細は分からないが「京急」がつく駅名は他社の駅名と被らないようにしている可能性大。他社と同駅名で「京急」がつかないのは駅や前身施設の開業時期の違いなどの理由があった
ライター:中田 淳也
2019(平成31)年1月25日、2020年3月に仲木戸駅を「京急東神奈川駅」に駅名を変更すると京浜急行電鉄が発表した。理由は、隣接しているJR線の東神奈川駅との乗り間違いを防ぎつつ利便性を高めるため「京急」を冠した同駅名にするという。
乗り換えできる駅として認知されやすいように駅名を変更
この新駅名も含め、京急の駅名には、駅名の最初に「京急」がつく駅名とつかない駅名が確かにある。
「京急」がつく駅名には、他社の同駅名と被らないようにすることも考えられるが、キニナル投稿では例外もあるという。今回は「京急」がつく駅名とつかない駅名の違いと、その例外について調査することにした。
まずは「京急」がつく駅名を、はまれぽ調査対象区域である京急川崎以南からピックアップしてみる。京急川崎、京急鶴見、京急新子安、京急富岡、京急田浦、京急大津、京急久里浜、京急長沢の8駅があった。
京急路線図(京急電鉄オフィシャルサイトより)※クリックして拡大
調べてみると、これらの駅についてはいずれもJRに同じ駅名があった。川崎、鶴見、新子安、田浦、久里浜については近隣にJRの駅があり、富岡駅は福島県、大津駅は滋賀県、長沢駅は山形県にJRの駅がある。
このうち、新子安を除く7駅はJR(当時は国鉄)の駅が先に開業していたため、時期によって「湘南」や「京浜」と移り変わり、京急という社名を地名の前に冠することになったと推測される。実際に京急富岡駅は、京浜急行電鉄の前身である「湘南電気鉄道」の「湘南」を冠した「湘南富岡駅」だった。1963(昭和38)年に現在の京急富岡駅に駅名を変更している。
京急富岡駅
唯一の例外である新子安については1910(明治43)年に京急(当時は京浜電気鉄道)が開業し、1943(昭和18)年に国鉄の駅が後から開業している。開業当初は「新子安駅」だった京急の駅名は、国鉄開業後に「京浜新子安」に変更している。
京急新子安駅は国鉄よりも先に開業していた
そのほかの7駅と新子安は状況が違うが、「京急」を冠する駅名の由来について京急担当者に伺うことにした。京急の担当者に確認すると「これら8駅の駅名の正式な由来については開業時期の違いによるものと思われるが、いずれも正式な資料は残っておらず分からない」とのことだった。
新子安以外の7駅については、国鉄の駅開業より「京急」の駅開業が後だったため、駅名に「京急」をつけている可能性があるようだ。しかし、「京急」の駅が先に開業している新子安が、駅名に「京急」をつけたのは、国鉄の駅を主軸とした当時の駅名の付け方があったのかもしれない。
「京急」がつかない駅名についても調査
「京急」がつく駅名にはすべてJRに同じ駅名があったので、キニナル投稿にある「その例外もある」というのは、おそらく他社に同じ駅名があるのに「京急」がついていない駅があるということだろう。
そこで駅名に「京急」がつかないものの他路線に同名の駅があるものを、はまれぽ調査対象区域で調べてみることにした。すると、弘明寺(横浜市営地下鉄ブルーライン)、杉田(JR東日本)、金沢八景(横浜シーサイドライン)の3駅が見つかった。
このうち、弘明寺駅については以前調査したこちらの記事にその経緯が書かれている。また、杉田駅については福島県に同名の駅がある。駅の開業は京急が1930(昭和5)年、JRが1948(昭和23)年と京急の方が古い。
しかし、福島県の杉田駅の場所にはもともと杉田信号場があった。その開設は1917(大正6)年と京急よりも古かったが、駅ではない施設だったため、結果として京急は杉田駅を採用したのではないだろうか。京急の駅開業以前から電車の駅以外の施設があったという意味では、弘明寺駅と同じような経緯をたどったと言える。
弘明寺駅
杉田駅
一方、少々変わった状況なのが金沢八景駅。こちらは京急の開業が1930(昭和5)年、横浜シーサイドラインの開業が1989(平成元)年。重複を避けるという意味ではシーサイドラインの駅を別の名前にするか、「シーサイドライン」などの名称を冠する必要があるかと思われる。
その点についても京急に問い合わせてみた。担当者によると「両駅は都市計画上は共同使用駅で、現在のシーサイドラインの駅は仮駅であることから、同じ名前になっている」という。シーサイドラインの駅は延伸計画があり、2019年度に京急の金沢八景駅と繋がる予定になっている。
現在工事中の金沢八景駅
工事中の金沢八景駅前通路図。京急の駅とシーサイドラインの駅が隣接する
また、「共同使用駅」という耳慣れない言葉が出てきた。全国の民営鉄道各社が加盟し、安全性や利便性の向上のために活動している一般社団法人「日本民営鉄道協会」のホームページでは、「共同使用駅」について以下のように説明されている。
「2つ以上の輸送機関(交通事業体)の接続駅など1つの駅を共用している場合を指します。一方の運輸機関が他の輸送機関の駅務の代行を含めて一元的に扱っていることが多いです。
運輸機関がそれぞれ施設を設けるのは経費が余計にかかり、業務も重複するだけでなく、お客さまにとっても不便なことがあり、共同使用駅そのものを設ける段階から共同の合意があって、連絡設備の設計や駅務の内容、その処理方法などについても協議します。
その延長線上にある駅共同使用契約は、駅ごとに関係各社間で結ばれ、駅務の区分と範囲、共同設備の使用範囲と保守の範囲、共同使用負担費の算出方法と清算方法などが定められます。」
日本民営鉄道協会ではさまざまな鉄道用語の解説がある(日本民営鉄道協会ホームページより)
簡単に説明すると複数の路線が乗り入れる駅で重複する業務を一元的に管理する駅ということ。京急線では金沢八景のほか、横浜(JR)、八丁畷(はっちょうなわて、JR)、天空橋(東京モノレール)、品川(JR)、泉岳寺(東京都交通局)が共同使用駅となっている。そのため、金沢八景駅については現時点で離れた場所にあっても同じ駅名なのは、元々は一つの駅として計画されていたというのが正しい見方だろう。
横浜駅
駅名の付け方について、正式な資料がないため推測の域は出ないが、基本的には他社の駅名と同じにならないようにつけられているようだ。ただ、信号所など駅以外の施設で同じ名前のものがあり、そこに駅がつくられた時には結果として駅名が同じになってしまうこともあるようだ。