祝・開館25年!「新横浜ラーメン博物館」の今
ココがキニナル!
1994年に世界初フードアミューズメントとして開館。過去の取材から6年、多くの訪日外国人が訪れるようになった「新横浜ラーメン博物館」の今に迫りたい(はまれぽ編集部のキニナル)
はまれぽ調査結果!
世界各地でのラーメン人気を受け、外国人来館者が増加中の「新横浜ラーメン博物館」。多様な食習慣に配慮したラーメンも提供、レトロな雰囲気はそのままに、国内外の人々を惹きつける場所になっていた。
ライター:のなかあき子
25周年という節目を迎え、訪日外国人の来場者も目立つようになった「新横浜ラーメン博物館」。今も国内外の人々から愛され続ける理由は何だろうか。
なると柄のエントランスマット!
昭和30年代の街並みが広がるノスタルジックな館内の雰囲気
「今」の魅力と「今後」の展望について、前回の記事「新横浜ラーメン博物館・平成最後の新店「八ちゃんラーメン」とは?」で「八ちゃんラーメン」への愛を語ってくださった、瀧上正樹(たきがみ・まさき)さんに再びご登場いただく。
日本のラーメン=とんこつ
Mr.ラー博、瀧上さん再登場!
訪日外国人には、どんなラーメンが人気なのだろうか。
「やはりとんこつラーメンが強いですね。一『風堂』『味千ラーメン』『一蘭』などのとんこつラーメン店が海外進出し、成功したことによって、日本のラーメン=とんこつというイメージがつきました。せっかく日本に行くなら、本場のとんこつを食べたいという人が多いようです」
世界の人々の胃袋を掴んでいるとんこつラーメン。だが、近年少し傾向が変わってきているという。以前は団体の来館者が多かったが、最近個人旅行者が増加傾向にあり、それに伴い味の好みも広がりつつある。
「ラーメン通の個人旅行者が増えています。2年ほど前からタイや台湾の人を中心に、ヨーロッパ、東欧、遠いところでは南アフリカから個人旅行者がきています。最近は鶏ダシの人気が高くなってきていますよ」
肉がダメでもラーメン食べたい!
ラー博に訪日外国人が増加し始めたのは15年ほど前。その頃から、台湾人旅行者の添乗員に「菜食主義の人のための、鶏や豚を使っていないラーメンはないか?」という相談を受けるようになった。台湾にはベジタリアンの「素食」という食習慣がある。
「鶏や豚を使ったダシを使わず、タレをお湯で割ったもので対応してくれる店が現れました。でも店舗としては、肝心のダシを使っていないので、正直納得がいかない。協力店舗が2、3と増えてきたところで、ベジタリアン向けの対応を真剣に考え始めました」
館内各所に英語表記が
まず「龍上海本店(りゅうしゃんはいほんてん)」が、動物系の食材を使わないベジタリアン向けのラーメンを考案し、問い合わせがあれば対応していた。その後ビザ緩和で訪日外国人が増加したのを受け、施設として本格的に動き始めた。
世界には宗教的・思想的背景によって、様々な食習慣がある。豚がダメ、肉類全般ダメ、魚介がダメ、卵がダメ。日本人ならそれってラーメン無理じゃん・・・と思ってしまうが、外国人は、そういう人々でさえ「日本に行ったら美味しいラーメンが食べたい!」と、ラーメンを求めてラー博にやってくるのだ。
国境も食習慣も越えて、世界中の人々から求められているラーメン。そのラブコールに、ラー博は全力で応じることにしたのだ。
すべての人にラーメンを
ラー博は、2013(平成25)年に、様々な食習慣に対応する「グローバルスタンダードラーメン」を発表した。さらにはグルテンフリーの「グルテンフリー麺」も導入、ラーメンの選択肢を増やした。
「より多くの人にラーメンを届けたいんです!」と瀧上さんは熱く語る。
海外のラーメン店では、ベジタリアンやムスリムに配慮したラーメンを当然のように提供しているという。ラーメンが本当にグローバル化するには、ラーメン界もガラパゴスではいられない。ラー博は、様々な食文化に配慮したラーメンを提供することにした。
現在4店舗で「グローバルスタンダードラーメン」を提供中
同時期に、ムスリム対応として礼拝セットも用意した。
「月に数回しかご依頼はないですけど、希望があれば個室にご案内しています」
館内の秘密の場所がお祈りスペース
ムスリムの人は、1日に5回礼拝を行うという。礼拝の際には体を清め、キブラ(コンパス)を使って礼拝の方位を確認し、専用のマットの上で礼拝をしなければならない。そのためのインフラを用意した。ラー博に来ている最中に礼拝タイムになっても、これなら安心だ!
更に外国人観光客の要望を受けてフリーWi-Fiも完備するようになった。これならデータ通信費を気にせず、ネット上で「raumen now」を伝えられる。
今後、さらなるグローバル対応は考えているのだろうか?
「はい。1階をリニューアルして、ラーメンの歴史を学べる展示コーナーに改装予定です。地下は食べてラーメンを楽しむ空間、1階は頭でラーメンを楽しむ空間にします」
今、ラー博ではラーメン文化を100年後に伝えるために、ご当地ラーメンの歴史を調査しているという。
「そもそもまとまった資料がないんで、自分たちで作るしかないんです(笑)。ご当地ラーメンの地元の図書館に行って、戦前・大正の新聞の中から当時の言葉でラーメンを指す『中華』等という言葉を発見したら複写を取る。ご当地ラーメンの元祖と思われる店の子孫の方々にインタビューもして、『味噌ラーメンの始まり』などの裏付けを地道にとっています」
1階受付にある他言語対応パンフレット
それ・・・メチャクチャ大変な仕事では・・・。
「麺を太い竹を使って伸ばす『青竹打ち』が特徴の佐野ラーメン。その製麺体験など、コト消費的な体験型施設も考案中です」
おいしいラーメンを提供するだけではなく、文化的・歴史的側面からもラーメンを捉えて展示する。なるほど、それこそ「博物館」だ!