祝・開館25年!「新横浜ラーメン博物館」の今
ココがキニナル!
1994年に世界初フードアミューズメントとして開館。過去の取材から6年、多くの訪日外国人が訪れるようになった「新横浜ラーメン博物館」の今に迫りたい(はまれぽ編集部のキニナル)
はまれぽ調査結果!
世界各地でのラーメン人気を受け、外国人来館者が増加中の「新横浜ラーメン博物館」。多様な食習慣に配慮したラーメンも提供、レトロな雰囲気はそのままに、国内外の人々を惹きつける場所になっていた。
ライター:のなかあき子
ベジヌードル感前面の「RYUS NOODLE BAR」
いよいよ「グローバルスタンダードラーメン」の実食だ。
まずは、2018年10月17日にオープンした、カナダ・トロントに本店がある逆輸入ラーメン店「RYUS NOODLE BAR(リューズ ヌードル バー)」へ。ラー博は海外で独自に誕生し、地元で支持されている逆輸入ラーメン店の誘致にも力を入れている。
トロントから上陸!
本格的な日本のラーメンと、カナダ人が好む味の融合を目指す「RYUS NOODLE BAR」。鶏の旨味と野菜の甘み、魚介のコクが調和した「鶏白湯ラーメン」が人気の店だ。
店長の岩元亜梨沙(いわもと・ありさ)さん
岩元さんは、ワーキングホリデーでカナダにいた時に、現地の「RYUS NOODLE BAR」で働いていた。4年滞在し、日本帰国が決まったタイミングで「RYUS NOODLE BAR」のラー博店が開業。こちらの店を任されることになった。
「カナダでのラーメン人気は高く、お店も増加しています。トンコツが人気ですが、宗教上食べられない人も多いので、チキンや醤油、そしてベジラーメンの需要も高いですね」
トロントの店舗は移民が多いエリアにある。ベジタリアンも多いために、野菜とオリジナル味噌で作ったベジラーメンが提供されているのだ。トロントと同じレシピの「カリフラワーポタージュのベジ味噌ラーメン(980円、税込み)」を早速実食してみよう。
昆布だしに昼夜浸した焼きトマトが鮮やか!
スープパスタのようなビジュアルだ。麺を箸でつまんでみると、どろっと濃いのがわかった。トロトロのポタージュ状の汁が、太麺にしっかり絡みつく。カリフラワー特有のクセは感じない。かなりボリューム感があり、ベジタリアンラーメンは物足りないのでは・・・という先入観は覆された。
「カリフラワーとジャガイモを煮込んでポタージュ状にして、和ダシとオリジナルブレンドの味噌、豆乳を加えました。野菜の相乗効果と味噌の力を利用したヘルシーなスープです」と岩元さん。
他にはチコリのボートに乗せた辛味和えしいたけ、焼きトマト、白きくらげ、ルッコラが乗っている。トロントでは、茹でた野菜や椎茸の佃煮を乗せるなど、具材が若干違うそうだ。
スープが麺にめっちゃ絡むよ!
来店者のうち、海外の人の割合はどのくらいなのだろうか。
「1割くらいでしょうか。社員は全員カナダ滞在歴1年以上の経験があるメンバーなので、英語対応を求める団体さんを受け入れることが多いです」
思想や宗教上お肉食べられない方や、ヘルシー志向の女性がオーダーするという。さらに多様な食のニーズに対応すべく、グルテンフリー麺に変更も可能だ(+150円)。
「トロント店ではグルテンフリー麺は出していないんですが、麺をライスにする対応はしています」
なるほど、確かにそれはグルテンフリー!
ベジ感隠す「こむらさき」
続いては熊本ラーメンの「こむらさき」へ。ラー博創業時から継続して出店している唯一の店であり、1954(昭和29)年に熊本で開業、熊本ラーメンの元祖として知られる有名店だ。
いい具合に年季が入っている
「こむらさき」の看板商品「王様ラーメン」はとんこつをベースに、鶏ガラをブレンドしたマイルドなスープと、細めの麺、カリカリのニンニクチップのトッピングが特徴だという。聞いただけでよだれが・・・。
でも、私がこれから食べるのは王様ラーメンではない。ベジタリアン対応の「野菜だけで作った王様ラーメン(900円)」だ。動物系を一切使わず、麺も卵不使用、チャーシューの代わりに大豆ミートを使用したラーメンだという。
しかし・・・見た目は看板商品の「王様ラーメン」と変わらない。一体どういうことだろうか。とりあえず実食してみよう。
こちらは「王様ラーメン」※画像:新横浜ラーメン博物館提供
こちらは「野菜だけで作った王様ラーメン」
え・・・これ本当にベジ?ダシに肉、本当に使ってないの?具材も、もやし、メンマ、きくらげ、ねぎ、にんにくチップと、王様ラーメンとほとんど変わらない。チャーシューは・・・あれ、箸でつまんだらホロホロと崩れた。確かにこれはチャーシューではない。食感も全然違う。でもなぜだか肉の味がするような・・・。どういうことか、考案者の椎名純平(しいな・じゅんぺい)さんにお話を伺おう。
「ベジラーメン、成功したと思います」
「野菜だしに豆乳などを加え、とんこつに似せています。スープは野菜ベースの出汁、豆乳。植物性油脂を使って、とんこつ風の味を再現しました」
2014(平成26)年、ラー博からベジタリアンラーメン開発の要請を受け、王様ラーメンそっくりの「野菜だけで作った王様ラーメン」を生み出した椎名さん。本店に出すことは伝え、約1ヶ月試作を重ねたという。
「とんこつラーメンとは全然違うんですが、試行錯誤でここまで再現できました。本当に肉を使ってないのか聞かれるので、成功したと思います。見た目はともかく、王様ラーメンと味は全然違うんですが。海外のベジタリアンの方に人気ですね」
確かにとんこつ味ではないが、動物質を使わず、ここまでコクを出すのはすごい。ベジとか抜きにして、これはこれでアリ!
アジア各国で人気のくまもんがあちこちに
「来店者の2割が外国人ですね。アジア系の方が多いです。中国、台湾、マレーシア、タイ・・・観光バスで大勢で来ます。今日も早い時間に来ましたよ」
ちなみに、ベジラーメンは本場・熊本では食べられないレアメニューだそうだ。
野菜感を前面に出した「RYUS NOODLE BAR」と、野菜感を完全に隠した「こむらさき」。同じベジヌードルでもここまで違いが出る。肉を使わずとも、おいしいラーメンは提供できるし、その可能性も限りない。
入場パスを持つネパール人と遭遇!
では外国人の方に、ラー博について話を聞いてみよう。そこに西アジア系の二人組の姿を発見。ネパール人だ、ナマステ!
「こんにちは」
あれ、日本語。左のビスタさんは新横浜、右のケサブさんは新宿在住だそうだ。どんなラーメンを食べにきたか尋ねてみると、ビスタさんから思いもよらない言葉が返ってきた。
日本在住のネパール人だった
「今日はラーメン食べないよ。ラーメンはどこでも食べられるでしょ」
・・・どういうことだろうか?
入場パス(6ヶ月パス・年間パスあり)をお持ちとは!
「中の雰囲気がいいでしょ。友達(ケサブさん)に見せてあげたくて連れてきたんだよ。ここのラーメン屋全部行ったよ。ちょくちょく来るから。そういえば、どうして担々麺はないの?」
ラー博は、ビスタさんお気に入りの空間
ラー博のラーメン店は、ほぼ食べ尽くしたというビスタさん。担々麺がないのがご不満のようだ(笑)。相当なラーメン、そしてラー博通である。
「ちょくちょく店が変わるよね。(八ちゃんラーメンの方を指差し)あそこも最近変わった」
「ちょくちょく」が口癖のビスタさんは、もう20回以上来館しているヘビーリピーター。今日は雰囲気だけを楽しみに来館。まさかのラー博の達人・外国人との出会いであった。
他にもファミリーでとんこつラーメンを食べに来た香港の方、やはり在住で友達と来た欧米系の女性など、団体客・個人客を含めて外国人の来館は非常に多い。
とんこつラーメンを食べにきた香港の3人
次はいよいよ海外進出!
今後のさらなるグローバル対応について、瀧上さんにお話を伺った。
「実は海外進出も考えています。エリアは観光大陸のヨーロッパ。歴史ある大陸で文化に対する関心が高く、アニメなどの日本の文化にも理解があります。食文化としてのラーメンを広げるには、最も適したエリアだと判断しました。中でも展示の部分が重要になると思います」
海外進出の話は20年前から出ていた
創業者・岩岡洋志(いわおか・ようじ)さんの
「ただ新幹線の停車駅がある街じゃない。新横浜という街を盛り上げたい、平日でもお客さんがくる街にしたい」という新横浜愛から始まったというラー博。
新横浜=ラー博がある街というイメージは定着し、世界の人々を惹きつける引力を持つ場所になった。そして世界に羽ばたこうとしている!すごいぞラー博!
取材を終えて
変化するラーメン&エンタメ業界の中で、色褪せない魅力を放つ「新横浜ラーメン博物館」。訪日外国人の増加に伴い、世界の多様な食習慣に対応するメニューを提供するようになり、さらにはヨーロッパ進出も予定している。世界に誇るラーメン文化の発信基地として、100年後も人々に愛され続けているに違いない。
ー終わりー
取材協力
新横浜ラーメン博物館
住所/横浜市港北区新横浜2-14-21
電話/045-471-0503
営業時間/11:00〜21:30(日祝10:30〜)、年末年始休
入場料/大人310円、子供100円、シニア(60歳以上)100円
公式ホームページ/http://raumen.co.jp