「じゃがどら」は、区政80周年の記念商品だった

斉藤さんによれば、「じゃがどら」は、保土ケ谷区から相談を受けて誕生したらしい。
区政80周年にあたる2007（平成19）年、当時の金子宣治（せんじ）保土ケ谷区長は、地元産品をアピールする記念事業に取り組んでいた。

区長が目を付けたのは、かつて保土ケ谷区内で幅広く栽培されていた「保土ケ谷いも」というジャガイモ。今では日本各地で栽培されているジャガイモだが、かつては「保土ケ谷いも」が全国に出荷され、種芋として根付いていったのだという。
例えば、保土ケ谷区内では現在、「キタアカリ」という改良品種が栽培されている。
　

サツマイモに似た風味がある「保土ケ谷いも」（画像提供・保土ケ谷区役所）

この「キタアカリ」を使って何か記念になる商品ができないかと相談されたのが、保土ケ谷区に住む、横浜文明堂の平川兼寛（かねひろ）会長（当時社長）だった。

「ジャガイモに含まれるデンプンは、こねすぎるとドロドロになるし、あまり混ぜないとガチガチになる。商品化には、かなり苦労したようです」と斉藤さんはいう。
幸いにして同社には、半世紀以上商品作りを手がけていた職人さんがいたそうだ。「じゃがどら」の“あん”の元となるジャガイモに、砂糖や水あめ、バターなどの配合を何度となく試みて、職人のプライドをかけて「じゃがどら」を完成させたとのこと。

今まで保土ケ谷区が主催するイベントのみで提供していた理由は、日持ちがしない上、もともと区からの要望によって誕生した記念品だったからである。なお、ジャガイモのねっとりした風味にハダーのコクが混ざり、ほかにあまり例を見ない逸品となっている。
　

実際に販売している様子（画像提供・文明堂）

「2007（平成19）年の販売開始以来、想像を超える問い合わせがあり、正直驚いています。そうしたお客様のご期待に添うためにも、今年から保土ヶ谷店のみ、取り扱いを開始しました」と斉藤さんは話す。
昨年までは1300個前後と、調達できる「キタアカリ」の量によって製造される個数も違っていたが、今年は早い段階から1600個体制を整えてきたとのこと。繰り返しになるが、同店での販売もイベント期間中の3日間だけ。ぜひこの機会に、幻のどら焼きを味わってみては？

ほかにもあるの？　季節限定どら焼き

取材当日の10月4日（金）、ちょうど保土ヶ谷店内に、季節限定コーナーがあった。「特製くり饅頭」など一緒に並べられていたのは、「栗入り三笠山」（179円）。
　

10月11日（金）までの販売なので、「じゃがどら」とは同時に購入できない
　

クリあんではなく、通常のあんにクリの実が入っている

また、春先には、白あんの中に塩漬けした桜の花が入った「さくらあん三笠山」も定番として人気。「じゃがどら」と違ってこれらの商品は、横浜文明堂の他店でも取り扱っている（一部取り扱いのない店舗あり、時期も店舗によって異なる）。

こうした季節限定商品の中でも、特にプレミアム性が高いのが、今回の「じゃがどら」。昨年までは1300個しか作られず、販売場所もイベントブースのみだった。しかし、今年からは300個増量し、店舗でも一部販売される予定。
職人のプライドがこもった逸品、ぜひ、トライしてみてはいかがだろうか。


―終わり―


◆文明堂保土ヶ谷店
住所／横浜市保土ケ谷区岩井町1-7　アーバン保土ケ谷駅ビル1F
TEL／045-334-0002
営業時間／9:00～20:00　※1月1日～3日は営業時間変更
定休日／年中無休