買いたたかれている? 横浜市のネーミングライツの仕組みってどうなっているの?
ココがキニナル!
横浜市のネーミングライツ。更新時に大幅に安く買いたたかれている?市はどんな営業をしてるの?募集かけて応募を待つだけ?私ならトヨタやホンダに日産スタジアムを売りに行きます(さぶさぶろーさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
更新時は現在の契約者と優先的に交渉するが、折り合わなければ公募。更新時の経済情勢や契約者の思惑が影響する。他都市でも金額が下がっている
ライター:はまれぽ編集部
やっぱり「買い叩かれている」のでは?
契約金の推移を見ると、投稿にあった通り「買い叩かれている」という印象はぬぐいきれない。では、他都市の例はどうだろう。実は、全国的に見てもNRの契約金は前述のリーマン・ショック以降、全国的に抑えられる傾向にある。
例えば、神戸市の「神戸総合運動公園野球場」は2003(平成15)年~2005(平成17)年に「Yahoo!BBスタジアム」の名称で年間1億円の2年契約を交わした。更新時の契約では「スカイマークスタジアム」として3年(2005年~2008〈平成20〉年)契約で総額2億円と年間ベースで3000万円以上の値下がり。「ほっともっとフィールド神戸」となった2008年からは、さらに安い年間3500万円の契約を結んでいる。
全国的に「買い叩かれる」NR(ほっともっとフィールド神戸ホームページより)
また、大分県の「大分スポーツ公園総合競技場」は2006(平成18)年から2009(平成21)年までの3年間は九州石油が総額7350万円でNRを取得し、「九州石油ドーム」となったが、契約満了時に更新しなかった。
その後、3年5000万円で公募したものの、「買い手」は付かず、結局4200万円で大分銀行が権利を買い取り「大分銀行ドーム」となった。
この点を踏まえて伺うと、宮崎担当係長は「市にとってメリットがないような金額に下げられてまでNRを続ける必要はないと考えている」と説明する。
NRの目的は先にも述べた通り、その収入によって施設を維持管理・運営することにある。
施設維持には莫大な費用がかかる
ガイドラインの11条で「現在のスポンサーと優先して交渉する」という条項を設けていることについて市は「名前が変更するたびに市民に混乱を与える恐れがあるため、一つのスポンサーが継続してくれることが望ましい」と説明しているが、同12条で「標識や看板の架け替えに関する経費は、原則市が負担する」と規定してある。
このため、頻繁に施設名が変わることで生じる架け替え費用をできる限り抑えたいという思惑も見え隠れする。
架け替え費用は、原則市の負担となる
日産スタジアムを例に挙げれば、4億7000万円から1億5000万円に「買い叩かれ」ているわけだから、市としては年間で3億2000万円の収入減となる。
宮崎担当係長が言うとおり、メリットがないと判断すればNR契約をしなければいいだけの話だが、となると、現在の年間1億5000万円という収入すらなくなってしまう上、看板をもとの「横浜国際競技場」に戻して、その看板などの架け替え費用などが新たに生じる。
そして、その費用とぽっかり穴のあいた収入を補える方策がないのが横浜市の現状だ。
従って、契約金額が落ちても施設の維持管理のための収入の一部でも確保出来る以上は、NRに意義はあるということになる。
「企業提案型」のNRも!
ここまで聞くと、投稿にあるように「公募して金額が下げられても待っている」という感じも否定できない。
交渉内容については「個別の契約のため、詳細はお伝えできない」とのことだったが、契約金額と期間は公表している。
このため、年に数件は同課に現行の契約より同等もしくは好条件を提示する企業や団体からの相談もあり、更新交渉の際には、そういった情報も交渉の席で参考にすることもあるという。
先の3例は市が施設を指定し、それに必要な管理運営費を契約金のベースにした「施設特定募集型」のNRだが、新たなニーズを掘り起こすための「提案募集型」NRという試みも行っている。これは各企業や団体が、自分たちにとってメリットがある施設のNRを取得したいと申し出るもので、市が特に施設を指定しているわけではなく、積極的な営業をしているわけではない。
これまでに「横浜ベイクォーター」の株主である三菱倉庫が、横浜駅きた東口とポートサイド地区を結ぶ歩行者専用橋を「ベイクォーターウォーク」としたほか、「俣野公園」が「横浜薬大スタジアム」、「新港公園」から「カップヌードルミュージアムパーク」に名称変更した。変わったところでは、トイレ専門サービス業「アメニティ」(神奈川区)が新横浜駅前の公衆トイレのNRを取得し、計4例の実績がある。
ベイクォーターウォークも提案型NRの代表例
特に提案型NRの第1号である「横浜薬大スタジアム」は、2009(平成21)年8月1日から2019年7月31日までの10年間で年間1000万円の契約だが、夏の高校野球神奈川県大会の会場に使用されるため、高校生にとっては馴染み深い名前となり、同大学の知名度アップの役割を十分に果たしている。
ニーズにあった効果的なNR戦略の代表例
また、中には金銭の代わりに「トイレの維持管理作業」を行うという労働力を対価に新横浜駅前の公衆トイレのNRを取得するという企業もある。
宮崎担当係長は「財源確保のためはもちろん、公衆トイレのNRといった行政目線では気づかないニーズがある施設を掘り起こし、市民生活の向上に努めていきたい」と話している。
取材を終えて
金額だけ見れば「買い叩かれている」という印象は否めないがNRは税収上、欠かせないだろう。
また、「トイレのNR」のように大規模な会社・団体だけでなく生活に密着したサービスを提供する中小企業が参入できるという面でも、横浜のNR制度は興味深い。
今後、われわれを驚かせ、生活の質を向上させてくれるような斬新なNRに期待せずにはいられない。
―終わり―
一之助さん
2014年05月05日 14時47分
さぶさぶろーさんが「私ならトヨタやホンダに日産スタジアムを売りに行きます」とか、「市への取材のときに、トヨタに日産スタジアムのNRを売りましょうと言ってほしかったなぁ」と書かれてますけど、これって、「売り出す商品の詳細を勉強しないまま、セールスマンが押し売りに行く」ようなものかと…。トヨタやホンダが「横浜F・マリノスのホームスタジアムの命名権」を買ったところでメリットあるんでしょうか?
たこさん
2014年04月29日 00時43分
ネーミングライツ、やり方によっては施設の維持管理費をある程度賄えるのは良いと思うのですが日産【新横浜】スタジアムみたいにちょこっと地名を入れて貰えないものでしょうか?スポンサーが変わる度に施設名がガラッと変わると場所の見当がサッパリです。
さぶさぶろーさん
2014年04月28日 20時38分
私のキニナルを採用していただき、ありがとうございます。結局は営業に行くと言うことはしておらず、企業側からのアプローチを待っているのですね。市への取材のときに、トヨタに日産スタジアムのNRを売りましょうと言ってほしかったなぁ(笑)。リーマンショックを理由に契約額が下がっているのなら、アベノミクス効果(?)で次回の更新時は今回よりも高額になります・・・よね???