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新子安駅から見える極端に細い橋脚は強度的に問題ない?

ココがキニナル!

JR新子安駅を跨ぐ跨線橋の橋脚が根元のところで極端に細くなっています。これで強度的に問題ないんでしょうか。何のためにこの様な構造になってるんでしょうか。気になります。(N.G.さんのキニナル)

はまれぽ調査結果!

細い部分は温度差による橋桁の伸縮を吸収している「支承」という部材。ほとんどの橋に設置され、橋には不可欠ともいえる部材で強度に問題ない

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ライター:永田 ミナミ

その名は新子安橋(つづき)

歩いてみるとJR、京急だけでなく第一京浜も首都高も越え、首都高入口とは交差して、さらに貨物列車の線路もまたいで埋立地に舞い降りる、長さ400メートルほどの大きな橋だった。
 


京急、JRだけでなく第一京浜も越え首都高とは交差する。橋長は約400メートル
 

それだけ大きな橋なので、ホームから見えたもの以外の橋脚も軒並みどっしりとした太いものばかりだった。どうやらJRの線路の隙間に立つ、あの「伐採間際橋脚」だけが例外的な存在のようだ。
 


ちなみに第一京浜の下は安心感のあるこの太さ
 

京急横の橋脚も鋼鉄の鎧をまとう、なかなかしっかりしたつくり
 


横浜市役所道路局建設部橋梁課にたずねる

1968(昭和43)年に完成した新子安橋は、調べてみるとやはり横浜市が管理していることがわかった。そこで道路局の橋梁課に問い合わせてみると、あのキュッと細くなった部分は橋の構造には不可欠な「支承(ししょう)」という部材であるという。
 


その名は「支承」
 

とはいえ、ふつうは外部から比較的見えにくい橋脚と橋桁との間に設置される部材であり、橋脚と基礎との間に設置されるケースはあまり多くないそうだ。

対応してくださった西島さんから「新子安橋も橋脚の上を見てみると、橋脚と橋桁の間に支承が設置されているのがわかりますよ」と教えてもらったので、さっそく撮影済みの写真を拡大してみた。
 


おお本当だ、上も細い。そして少しずつ橋に夢中になっていく自分に気づく
 

無意識に撮った写真だったので改めて撮り直した橋脚上の「支承」
 

京急側の橋脚にならぶ支承は架線がなく見やすい。形状が少しちがうようだ
 

橋脚の上の支承は少しかたちが違うが、「おそらく橋脚の下にも支承を設置することによって、線路の下に大きな基礎をつくらなくてすむ工法をとったのだろう」という。そしてこれは橋をつくる市の判断で、やはりJRなどは関係していないとのことだった。



そして支承とは



さて、「支承」の働きはというと、温度差などによる橋梁の伸縮によって生まれる「モーメント」という力を吸収する部材であるという。

モーメントは高校物理で学習するということだが、方向性のちがいから高校1年生の間だけのごく短い、しかもぎこちない交流しかなかった記者にとって、物理との距離は天文学的に遠い。とはいえ橋に対する興味が加速度的に高まっていたので、橋梁工学や建築構造力学の資料をいくつか読んでみた。

 

ざっくりモーメント解説図。回転する力(緑→)がモーメント
 

Aのように力が中心に向かって働くと物体は回転しないが、Bのように中心点からずれると回転する。そのときの回転しやすさをモーメントといい、力の大きさが同じであれば、中心点から離れるほどモーメントは大きくなることになる。このへんは梃子(てこ)の原理をイメージするとわかりやすい。


と、書いてあった。

モーメントにはいくつかあり、橋梁の自重や通行車両などによる上からの重量に対する橋桁の変化を吸収する力に「曲げモーメント」があるが、西島さんによると新子安橋の「伐採間際支承」は、荷重に対するものというよりも温度差が起こす伸縮を吸収するためのものであるという。

 


橋の構造の奥深さにまた一歩引き込まれている瞬間
 

冬と夏といった季節の変化による温度差だけでなく、1日のなかの朝昼夜の温度差によっても橋梁の金属ははわずかに伸び縮みする。そのため、新子安橋のあの橋脚はちょうど肩の関節のような構造をしていて、その伸縮を吸収しながらミリ単位で回転しているそうだ。 


ざっくり新子安橋図。赤い部分が支承で、中央の橋脚が伐採間際橋脚
 

なるほど。橋というのはすべての部材ががっちりと固定された堅牢な構造物のようなイメージがあったが、確かに橋の上を歩いていて車が走れば振動する。通行する車両の重量を受け止めなければならないし、温度差で金属部材が伸縮するとなれば、ただがっしりとしていればいいわけではなく、柔軟性も必要なのは当然だ。

そして、それを意識して新子安橋の写真を改めて見直してみると、なるほどいろいろな場所に発見。
 


第一京浜沿いのこの橋脚と橋桁の間には鳩よけらしい金網越しに支承
 

コンクリート橋脚の向こうで橋桁を支えているオレンジ色の橋脚上にも支承