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新子安駅から見える極端に細い橋脚は強度的に問題ない?

ココがキニナル!

JR新子安駅を跨ぐ跨線橋の橋脚が根元のところで極端に細くなっています。これで強度的に問題ないんでしょうか。何のためにこの様な構造になってるんでしょうか。気になります。(N.G.さんのキニナル)

はまれぽ調査結果!

細い部分は温度差による橋桁の伸縮を吸収している「支承」という部材。ほとんどの橋に設置され、橋には不可欠ともいえる部材で強度に問題ない

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ライター:永田 ミナミ

支承いろいろ



まったく支承ってやつは何という生粋の縁の下の力持ち部材なんだ、と感心しながら調べてみると、支承にはいくつかの種類があり、「伐採間際橋脚」の下のあの支承は「ピボット支承」という種類であることがわかった。
 


ピボット支承(画像提供 株式会社川金コアテック)
 

〈参考〉ピボット支承の構造。断面図はわかりやすいように色分けしてみた
 

断面図でいうオレンジ色の下沓(したしゅう)の球面状の凸部が黄色の上沓(うわしゅう)の凹部に関節のようにはまっており、全方向に回転することが可能な構造になっている。「沓」を「しゅう」と読むのは「shoe」に由来するそうだ。

ちなみに新子安橋の橋脚の上部、橋桁との間に設置されているのは「ピン支承」という種類だった。ピン支承は、上沓と下沓を円柱状のピンで連結した構造となっており、一方向にのみ回転可能な支承である。
 


新子安橋のピン支承にズームイン
 

ピン支承(画像提供 株式会社川金コアテック)
 

〈参考〉ピン支承の構造。赤い部分のピンを軸に左右方向に回転する
 

資料には、阪神・淡路大震災後にはゴム支承が採用されることも多くなったとあったので、どこかで見つけられるかなと思っていたら、新子安橋と平行するように線路をまたぐ、2001(平成13)年に完成したオルトヨコハマの歩道橋「オルトスカイデッキ」の支承がゴム支承だった。
 


どっしりとした橋脚の上をよく見てみると
 

橋桁の下にゴム支承が2つ設置されているのがわかる
 

ゴム支承(画像提供 株式会社川金コアテック)
 

〈参考〉ゴム支承の構造。ゴムがあらゆる方向に伸縮して力を吸収する。
 

橋にはこうした支承が各所に設置され、モーメントを吸収して絶えず変化する橋桁を支えている。つまり、支承があるからこそ安定しているのであり、新子安橋のあの伐採間際のような橋脚も、あの形状によって橋の強度を保っているのである。



橋もいろいろ



もちろん橋梁にはさまざまな種類があり、橋脚と橋桁がしっかりと剛結合(継ぎ目がなく一体化した構造)されている「ラーメン橋」のように、橋脚と橋桁の間に支承がない場合もある。ちなみにラーメン構造のラーメンはもちろんあのラーメンではなく「骨組み」を意味するドイツ語の「rahmen」に由来する。
 


通りかかった御茶ノ水橋が鋼ラーメン橋だった
 

ラーメン橋は、支承がない代わりに荷重や伸縮などの力に、しっかりした構造で抵抗できるように設計される。ラーメン橋と対照的な構造は「トラス橋」である。ピンで接合した回転可能な部材を、連続する三角形になるように組み立てたものであり、汽車道など鉄橋の多くに見られる構造である。
 


横浜市歴史的建造物、かながわの橋100選に選ばれた浦舟水道橋もトラス橋
 

ほかにも平沼橋はアーチ橋で
 

やはり橋脚と橋桁の間に支承を確認できた
 

そして最後に、今回のキュッと引き締まったピボット支承の「伐採間際橋脚」を持つ新子安橋はというと、橋脚をつくってその上に支承をはさんで橋桁を乗せる「桁橋」という種類の構造である。
 


いろいろなものをまたいでいるため橋脚の形状や配置がさまざまな新子安橋
 



取材を終えて



今回は少し不思議な橋脚のかたちから、支承の存在、そして奥深い建築構造力学の世界を、ほんの入口だけかもしれないがのぞくことができた。

その入口からは、橋にはいろいろな種類が存在し、ラーメン構造の橋を除いて、橋桁は支承という無数の点で支えられながら橋脚の上に乗って、荷重による鉛直応力だとか反力だとか、耐風安定性だとか温度変化による伸縮などなど多様な力の影響を受けていること、そしてそれらの力を常に受け止め、逃がしたり抵抗したりしているのだということがわかった。

いや、確かにわかりかけたような気がした瞬間はあったが、今となってはすでにぼんやりしはじめてしまっている。ともかく、新子安橋のあの橋脚は、今日も日増しに暖かくなって伸びる橋脚の変化を受け止めている。

ちなみに横浜のシンボルのひとつである横浜ベイブリッジは、橋脚から斜めに張られたワイヤーで橋桁を支える、世界最大級の斜張橋(しゃちょうきょう)である。
 


全長860m、橋脚間最大460mのベイブリッジを工業地帯から眺める
 


―終わり―

 
参考文献
『図解入門 よくわかる 最新「橋」の基本と仕組み』五十畑弘著(2013 秀和システム)
『改訂版 初めての建築構造力学』〈建築のテキスト〉編集委員会編(2013 学芸出版社)
『新編 橋梁工学』中井博・北田俊行著(2003 共立出版株式会社)
『すぐに役立つ 構造力学』羽切道雄・前林和彦著(2012 彰国社)
『橋梁技術の変遷 道路保全技術者のために』多田宏行著(2000 鹿島出版会)
 

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  • 「支承」という部材。ほとんどの橋に設置され、橋には不可欠ともいえる部材で強度に問題ない・・・つまりは言いたいのは、「支障はない」ということですね?よくわかりました。

  • 力学の素人さんがここまで調べたことに拍手。橋は奥が深いです。

  • レポートありがとうございます。図解入りでとても解り易かったです。

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