もうひとつの駅名とは？

さて、ここで終わってしまうと面白くない。各路線の路線図を見ていると、駅名に“ おまけ ”がついている駅をいくつか見かける。

その“ おまけ ”というのが、副駅名だ。

例えば、みなとみらい線の「元町・中華街」駅には「（山下公園）」というのが付く。これが副駅名。この副駅名を含めてカウントすると、10文字だった元町・中華街駅は18文字にジャンプアップ。

みなとみらい線の場合、隣の「日本大通り」駅にも「（県庁・大さん橋）」という副駅名が付けられていて、こちらも8文字から19文字に増えることになる。
　

駅名板にも副駅名がしっかりと書かれている
　

みなとみらい線では、駅近くにある観光スポットや公的施設が副駅名に採用されているが、最近ではこの副駅名を広告商品として販売している鉄道会社もあるようだ。

野球場の名前などでおなじみとなってきたネーミングライツのような感じで、沿線企業などの名前が「○○社前」のようにくっついている。
　

横浜国際総合競技場が「日産スタジアム」になったのもネーミングライツ
　

例えば、最も長い駅名に選ばれたシーサイドラインの「産業振興センター」駅には、「アルファ本社前」という副駅名が付けられている。

株式会社アルファは、駅から歩いて数分のところにある、住宅用のカギや自動車部品を作っている会社だ。
　

見たことがあるロゴマーク！
　

アルファ本社は駅から見えるほど近い距離にある
　

また、京浜急行でも2013（平成25）年から同様の取り組みが行われていて、例えば「京急鶴見」駅には「京三製作所本社」という副駅名が付けられている。
　

信号機や鉄道の運行管理システムなどを作っている京三製作所
　

しっかり副駅名付き！
　

京急線の場合、各駅に特Aから3級まで5段階のランクを設け、それに応じて広告掲出費用が決定されるシステムになっている。

京急によると、特A駅では月に60万円、そこからランクごとに、特B駅50万円、1級駅40万円、2級駅30万円、3級駅20万円と下がっていく。京急鶴見駅は1級駅にランクされているので、京三製作所は月に40万円の広告料で副駅名を掲出していることになるというわけだ。

副駅名まで含めると

ちなみに、この副駅名までを含めると、8文字だった「京急鶴見」駅は23文字にまで膨れ上がり、一躍優勝候補に飛び出してくることにもなる。
　

駅舎外側の駅名板には副駅名は記されていない
　

当たり前だけれど、副駅名も含めて数えると、長名駅の順位も大きく変化する。では、副駅名も込みでカウントした場合に、横浜市内で最も長い駅名となるのはどの駅なのだろうか。

このパターンで1位になるのは、シーサイドラインの「八景島」駅だ。やっぱりシーサイドラインが強かった。

八景島駅には、「横浜・八景島シーパラダイス前」の副駅名が付いているので、全部で25文字。京急鶴見駅の23文字を上回っての優勝だ。
　

副駅名も含めた無差別級（？）の覇者はコチラの駅
　

横浜シーサイドラインでは、京急よりも早い2010（平成22）年から副駅名を公募していて、現在は全14駅のうち、幸浦、産業振興センター、市大医学部、八景島、金沢八景の5駅に付けられている。

営業などは広告代理店に依頼しているそうだが、現在も募集は続けているので、今後も増える可能性があるとのこと。
　

残りの9駅もこれらから副駅名が付くかも
　

沿線企業や施設と連携しながら新しい収入源を確保する狙いのある副駅名だが、過去にはひとつの駅に数社が名乗りを上げたこともあったという。そういった場合は、駅からの距離などの条件に従って勘案した上で選定しているのだそうだ。

横浜シーサイドラインでは、副駅名のイメージに合わせるように駅舎のデザインを変えたりすることもあり、企業とは違い一般の人が多く訪れるテーマパークの名前が付けられている「八景島」駅では、「駅の雰囲気が明るくなった」、「シーパラダイスに行くワクワク感がある」といった声がお客さんから上がっていると、同社でもよろこんでいる。
　

駅からワクワク！
　

ちなみに、ついでのように発表して申し訳ないが、市内で一番短い駅名は「戸部（TOBE）」駅（京急線）や「瀬谷（SEYA）」駅（相鉄線）といった2文字の駅名だ。

特に、東急田園都市線の「江田（EDA）」駅は、頭文字が母音のため、ローマ字で表記すると、最も短い3文字となる。
　

最短決定！
　

取材を終えて

駅名をつけるときにどこまで文字数を考えているかは分からないが、長くなり過ぎないようにといった配慮はしているだろう（あるいは、いっそ極端に長くしてアピールするか）。

横浜シーサイドラインの担当者も、「長めの名前だとは思っていましたが、市内で一番とは知りませんでした」と話していた。

日常生活では略して呼ばれることも多い長名駅。副駅名まで口にすることはまずないだろう。でも、たまにはそんな部分にスポットを当ててみても面白いかもしれない。


―終わり―