鎌倉市内の野菜直売所「鎌倉農協連即売所(レンバイ)」などを調査!
ココがキニナル!
鎌倉にたくさん農産物直売所があるようですが、主要な直売所を紹介してください。キニナル。(にゃんさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
鎌倉には農産物直売所が10ヶ所あり、農家が自作の野菜を販売している。今回はその中でも、複数件の農家が一同に集う「鎌倉農協連即売所」と飲食コーナーも併設する「かん太村」を紹介。
ライター:福田 優美
早朝はプロの人、午前中に近所の人、昼過ぎから観光客も増えてくる
−お客さんはどんな人が多いですか?
「昔は近所の人だったけど、15年か20年前くらいから、ヨーロッパ帰りのイタリアンやフレンチのシェフたちが買いに来ることが増えたんだよね。それであっちで知ったハーブとか葉野菜を作れないか、って頼まれるようになって種類がどんどん増えていったんだよな」
鎌倉野菜の畑は色とりどりなことから七色畑と呼ばれる
地産地消されていた鎌倉野菜は、知名度があがるとともにどんどん新しい品種が栽培された。ここであることに気づく。そういえば、「鎌倉野菜」の定義って一体なんなのか。
ひっきりなしにお客がやってくる。観光客っぽい人もちらほら
「鎌倉野菜ってのは、役所の農水課の人と、逗子レンバイの人たちと一緒に30年前くらいに始めたブランドなんだよ。鎌倉野菜って名乗れるのは鎌倉市内で採れた野菜と、旧鎌倉郡時代からレンバイで商売をしていた長尾台(現在の横浜市)の農家で採れたものだけ」
京野菜のように品種が決まっているわけではないという。ブランディングは大成功した、ということだ。ところで、平井さんはなぜおばあさんのように野菜ではなく花をつくっているのか気になった。
「だって、親と同じことしたくないじゃん(笑)」
ご夫婦そろってつかのまの一休憩
ぐうの音も出ない。平井さんに一通りレンバイの話を聞いたところで、ひときわ多くの種類の野菜を売る盛田勝美(もりた・かつみ)さんに声をかけた。平井さんと同じく、おじいさんおばあさんの代から続く、レンバイ出店3代目。サラリーマンを辞めて家業に入ったそうだ。はきはきとした明るい声が営業マンだったことを彷彿させる。
変わり種の野菜も並ぶ盛田さんのお店
数ある野菜の中でも、特に目を引いたのは、赤色、オレンジ色、黄色のカラフルで大小そろったトマトだ。聞くと、トマトは注力している野菜の1つだという。
「今はインスタ映えが大事とかいうじゃない。だからカラフルで見た目も楽しくなるように意識してるよ。品揃えが多いと見栄えもするし、買い手が喜んでくれると思ったら、こちらとしても楽しいしね」
この日だけでも10種類ほどのトマトが並ぶ
盛田さんは、レンバイの中では珍しく、トマトを量り売りではなく個包装でも販売している。観光客でも気軽に買っていけるようにと、最近はじめたらしい。盛田さんはお客さんの目線をすごく気にしているようだった。取材中、かぼちゃがなかなか売れないと感じたのか、1/4にカットして個包装をはじめると、つぎつぎと手に取られたので驚いた。
定番だけじゃなく珍しい色や大きさのかぼちゃがそろう
「家で切りにくい、使いきれないっていう理由で売れなくても、ちょっとした工夫で売れたりするんだよね。かぼちゃも丸々1個が使いきれないなら1/4にするとかね。それで使い切ったらまた来てもらえばいい。そうしたほうが新鮮なものを食べてもらえるから、作り手としてもうれしいじゃない」
少しの手間で結果が変わる。直にお客さんを相手にしている商売なだけに、マニュアルではないその場その場の対応がものをいう世界なのだ。
「レンバイの特徴は、珍しいものや質の高いものが置いてあるってこと。普通の野菜でよければスーパーで買えるんだから、わざわざここに来なくてもいいじゃんね」
つるくびズッキーニ。普通のズッキーニより甘みが強いそう
じゃがいもの種類だけでもこんなにたくさん
盛田さんのところでは、やはり多くの観光客が足を止めていた。カラフルな野菜や個包装は盛田さんの思惑通り、手に取りやすいのだろう。対照的にナス、キュウリ、トマトのほぼ3種で勝負するのが星野雄一郎(ほしの・ゆういちろう)さんだ。彩り的には少々さみしく感じるが、こちらも常連さんとおぼしきお客さんがひっきりなしにやってくる。
家庭で使う基本的な野菜に的を絞る
「うちは、一般の方向けに基本的な野菜を作ってます。この時期だと夏野菜の代表のトマトとキュウリとナス。種類をたくさん揃えて販売するほどの量を作るには、人手が必要なんですよ。うちは父が90歳を越えて半分リタイアしてるから、耕作は僕一人。種類を増やすより、限られた品種をたくさん作るほうが効率がいいんです」
星野さんは旧鎌倉郡である横浜市長尾台の農家。古くからレンバイで商売をしているそうで、取材中も2、3代と続く常連さんと会話を楽しむ姿が印象的だった。
「レンバイの楽しさは、お客さんと会話を楽しみながら農作物を売ることです。こないだのキュウリおいしかったよとか、あのトマトはソースにしたよとか。そういうコミュニケーションをとれることがスーパーや市場との大きな違いですね」
お客さんと話すのが楽しいという星野さん
買い物客の中には星野さんに、おいしいトマトの見分け方や、おすすめの食べ方を聞いていく人も多かった。野菜も肉も同時に買えるスーパーは現代社会には欠かせないが、こうしたコミュニケーションはもちろんない。こうした交流にこそ、レンバイの醍醐味を感じるのは売り手も買い手も共通しているようだ。星野さんを観察していると、ついついお客さんに「おまけ」をしているのが、なんとも印象的だった。
キュウリは足がはやいのでレンバイ当日の朝にもぐ
―おまけはやっぱり常連さんだけへのサービスなのでしょうか?
「常連さんだけじゃないですけどね(笑)キュウリのように足が早いものは、持って帰っても次にここにくる4日後には売り物にならないんですよ。それならお客さんにおいしく食べられるうちに持って帰ってもらったほうが僕らもうれしいし、お客さんにも喜んでもらえますしね」
盛田さんも星野さんも「お客さんもうれしいし、僕らもうれしい」としきりに繰り返していた。売り手も買い手も満足しているからこそ、レンバイには人がひっきりなしに来るのだろう。お客さんにも話を聞いてみたい。笑顔が素敵な女性に声をかけてみた。
戸塚から電車で月に数回くるという内海美花(うつみ・みか)さん
―何を買ったんですか?
「今日は、水なす、枝豆、万願寺とうがらし、ミニトマト、かぼちゃ。この品質でこのお値段で買えるんだから、もうスーパーでは買えないですよ。万願寺は昨年食べて感動して、1年間待ちわびてました。やっと買えたから今日はお夕飯が楽しみ。次の季節は長茄子と落花生を楽しみにしてます」
旬のものを1年越しに食べる喜びは、豊かな生活の象徴のようだ。万願寺とうがらしはシンプルにお醤油で食べるとうれしそうに教えてくれた。プロの方にも話しを聞いてみたいが、あいにくこの日は午後に来たため、仕入れの時間帯は過ぎている。そこで、再度出直すことに。