大船駅バスターミナルに出没する小さなバン「小雀乗合バス」はどうやって運行されたの?
ココがキニナル!
大船駅で見かける「小雀乗合バス」という小さなバンが気になっています。どういう経緯でできたの?他でも要望により運航してもらえるの?(こうなんぼうさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
「小雀乗合バス」は横浜市道路局の地域交通サポート事業の中で実現!申請することで新たなバスが運行される可能も
ライター:大和田 敏子
鎌倉市に程近い大船駅バスターミナルを起点に運行する「小雀乗合バス(こすずめ号)」というものがあるという。
「乗合バス」という響きが新鮮だ。調べてみると、乗合バスと路線バスは、ぼぼ同義のようだが、乗合バスに、よりローカルなイメージを抱いてしまうのは筆者だけだろうか。
イメージはともかく、「小雀乗合バス」の実態を知るべく、まずは、運行に関わっている横浜市道路局計画調整部企画課交通計画担当でお話をうかがうことにした。
道路局企画課があるのは、市庁舎の隣にある横浜関内ビル8階
道路局計画調整部企画課交通計画担当係長、高橋陽太さんと鹿島裕太さんに対応していただいた。
鹿島さん(左)と高橋さん
第2、第3の「こすずめ号」が誕生する可能性がある!
「小雀乗合バス(こすずめ号)」は、戸塚区小雀地区と大船駅を結ぶ乗合バス。横浜市道路局がおこなう地域交通サポート事業の中で、実現したものとのこと。まずは、この事業について説明していただいた。
2007(平成19)年度から道路局は「地域交通サポート事業」を立ち上げている。これは、バス路線がなかったり、不自由だったりといった問題を解決するための、地域の主体的な取り組みに対して支援するもの。
地域に適した交通手段を導入するための事業
まずは、交通手段に不便を感じている方々が、5人以上のグループで登録し、地域交通サポート事業に申請する。地域の窓口となる区役所の区政推進課への交通問題の相談に対してこの事業を紹介し進めていくことが多いが、直接、道路局企画課に相談されることもある。町内会・自治会などで運行委員会・改善委員会を立ち上げて申請する場合が多いという。
町内会で話題に上った交通問題がきっかけになることも多い
その後は、市職員、街づくりのコーディネーターが加わり、実態に合った形でバスが運行されるよう、地域で話し合いを重ねていく。その間、住民に対するアンケート調査などもするが、その分析に関しては市職員が行う。配布・回収は町内会などのグループで行うという。
その後、運行手段やルート、運賃などの詳細を検討し、採算性が取れるようなら、市側が、バス事業者やタクシー業者に、運行計画を考えてもらえるよう交渉していくという。
地域によって事情が違うので運行手段もさまざまだ
地域によって抱えている問題はさまざまだ。
バス路線がない交通空白地帯には路線の新設を、バス路線はあるが、開発が進んでその先まで進み、バス停までが遠いなど実情に合わなくなっている場合は路線の変更や延伸を検討することになる。小雀地区のように、道幅が狭く、大型バスの乗り入れが難しい状況の場合は、ワゴンなどの小型の車両を検討することになる。
運行業者が決定したら、実証運行が行われ、その結果を検証した上で本格運行が開始される。基本的に市が赤字補てんなどの支援を行うのは実証運行までで、本格運行するかどうかの最終判断は、採算性も含めて事業者に任される。
実証運行までは、運行の赤字補てんなど、支援が行われる
現在、横浜市内の23地区で取り組みが行われ、小雀地区を合わせて9地区で本格運行が開始されている。現在のところ、実証運行後、本格運行ができなかったところはないそうだ。
通常ならバス路線新設のためには、事業者自ら調査を行い需要を把握したり、ルートやバス停の場所の交渉をしたりと、全てを行う必要がある。しかし、地域交通サポート事業においては、地域主体で課題を解決し、市側が正確なデータ取りをして事業予測をした上で、検証するための実証運行などでは赤字の補てん(最長1年間、500万円まで)をする。そのため、運行事業者にとってリスクが少ないという点が、この事業の最大のメリットだという。
しかし、乗合バスとはいえ、どうして市バスや市営地下鉄などを運営する交通局ではなく、道路局が携わるのか。それは、幹線道路網の構築などをはじめ、交通アクセスを改善する事業は道路局の管轄となるから。交通の便を改善してほしいという住民の声に応える同事業に関しても、道路局の担当となるそうだ。
「こすずめ号」実現までの過程は?
次に、こすずめ号実現までの過程をうかがった。
2007(平成19)年に小雀地区の方々がグループ登録をし、地域サポート事業に基づき交通手段の検討を始めた。その年、利用動向のアンケート調査を行い、同地区の方々が「大船駅に行くための交通手段がほしい!」と希望していることがわかった。アンケートに回答した過半数が60歳以上で高齢化が進んでいる地区でもある。小雀地区から大船駅に出るための既存のバス停までは坂道も多く、徒歩で20分以上かかり、特に高齢者が大きな不自由を感じているという実態がわかってきた。
また、道幅が狭く大型バスの運行は不可能なため、ワゴン車をバスとして使用するという方向で検討された。
小雀地区には道幅が狭い所も多い。ワゴン車を使用し運行ルートに
地域主体で、ルートやバス停の位置などについて、繰り返し細かな話し合いが行われたという。話し合いには、市職員、株式会社共同(現在、こすずめ号を運行している事業者。町内会から直接声がかかり、計画当初から関わってきた)が加わった。
こすずめ号運行路線図。赤い線は幹線道路
警察や土木事務所など交通管理者に、その場所にバス停を置くことができるか、ルートの安全性に問題がないか確認がなされ、採算性についても目途が立つと判断し、2008(平成20)年10月、実証運行開始。約9ヶ月の実証運行期間を経て、2009(平成21)年7月、本格運行が実施された。
現在は、平日28便、土日祝15便が運行されている
午前6時台~午後10時台の運行で、通勤通学の利用もフォローしている。運賃は大人300円、小人150円。乗車定員は13名。現金払いのみで交通系ICカードや高齢者パスは使えない。