多くの映像作品のロケ地となる横浜の「横浜フィルムコミッション」、撮影許可する作品内容の選定基準とは?
ココがキニナル!
横浜市では映像産業を推進しているという記事をみましたが、実際のロケの撮影基準などは何か決まりがあるのでしょうか?(619さん)
はまれぽ調査結果!
横浜フィルムコミッションの基準では横浜のイメージアップにつながるような作品が中心。その基準が特定の撮影を難しくしているという声もある。
ライター:小方 サダオ
横浜がドラマなどの舞台によく登場するのは、港町として絵になるからなのかもしれない。その横浜市が、映像産業を推進し、横浜での映像作品のロケーション撮影を支援してくれるのだとしたら、制作者側にとっては助かるのではないだろうか?
横浜フィルムコミッションと、映像制作者を仲介しロケ地の手配等を行うロケーション・コーディネート会社の関係者を中心に取材することにした。
横浜フィルムコミッションとは
国内外の映画・映像作品の製作支援をはじめ、日本の撮影環境の発展に寄与することを目的とする団体として、2009(平成21)年4月に設立された、特定非営利活動法人ジャパン・フィルムコミッションがある。
そして横浜での映像作品の撮影を支援するのが、市文化観光局が所管の横浜フィルムコミッションだ。
中区にある横浜市文化観光局
文化観光局のホームページによると「フィルムコミッションは、映画・テレビ・コマーシャル等のロケ撮影に際して、ロケ場所の紹介、許可・届出手続きの調整や取次ぎ等による支援を行う組織である」とある。
横浜に誕生した経緯に関しては「全国的に、民間企業有志や映画関係者、映画監督などが集まり、国内に『フィルムコミッション』を設立しようとする『フィルムコミッション設立研究会』がスタートし、2000(平成12)年2月に大阪で日本初のフィルムコミッションが設立された。その後、同年9月に神戸と北九州で設立され、横浜は同年10月に国内で4番目のフィルムコミッションとして事業を開始した」とある。
横浜フィルムコミッションが撮影協力した、NHK連続テレビ小説『まれ』
また撮影支援を行うことで、考えられる効果に関しては、以下の表のように考えられている。
撮影支援事業により考えられる効果を示した表
また、制作者側への支援内容に関しては、下記の表のようにある。
支援内容について示された表
さらに文化観光局は2010(平成22)年に「クリエイティブシティ・ヨコハマ」と称し、文化促進の提言を行っている。
「横浜は、港を囲む歴史的建造物や港の風景など、個性的で魅力ある都市景観や地域資源を有し、その魅力により多くの市民や観光客を惹きつけ、さまざまな芸術や文化を育んできた。横浜が都市としての自立と持続的な成長を維持していくためには、文化芸術により人口などの都市の規模だけでなく、都市の新しい価値や魅力を高め、発信していくことが求められている」とある。
山手にある近代文学館
その提言の一環に「映像文化都市」づくりというものが含まれ、その歩みとして、ロケーション撮影を支援する「横浜フィルムコミッション事業」を開始したのだ。
横浜フィルムコミッションは、観光事業とともに、映像文化の推進事業として組織されたともいえるのだ。
そして投稿の横浜フィルムコミッションの撮影基準に関しては、事業実施要綱に撮影支援の対象外の案件が示されている。
そこには「その他、文化観光局長が対象外と認めた撮影又は映像作品」など、撮影基準が当局にゆだねられているものもある。
その撮影基準に適さない場合が多いのか、ロケーション・コーディネート会社の関係者に伺うと、「横浜での撮影の難しさ」に関する話が出てくる。
続いて横浜フィルムコミッションを介しての撮影の実情について、関係者に伺った話を紹介したい。
ロケーション・コーディネートの関係者から話を伺う
あるロケーション・コーディネートの会社の経営者からは、次のような話を伺った。
「例えば、当社では大さん橋で定期的にミュージックビデオのロケなどを行っていましたが、ある日を境に許可が下りなくなってしまいました。周辺住民から『音がうるさい』とクレームが出たため、使用が難しくなってしまったのです。その際に横浜フィルムコミッションが間に入りトラブルの仲介を行っていただけると助かるのですが、安易にクレームに答えてしまうのが残念です」
大さん橋で撮影をしていたところ、周囲からクレームが来たという
「周辺住民の騒音のクレームを受けることは当然ですが、横浜市は人口の多い都市で、観光地でもあることを考えると、中心部に住む住民には、騒音が生じやすい環境に住んでいる、という自覚があってもいいといえ、『エンターテインメント産業を育てる』という確固たる意志を持ち、そのような苦情に対して行政側が説得してくれると助かるのです」と答えてくれた。
さらに横浜フィルムコミッションとの交渉で難しい点に関して伺うと「作品の内容を検案されることです。横浜のイメージと合うかどうかが問題になり、台本を見せないと許可が出ない場合があります。例えば殺人シーンは良くない、などと言われるのですが、今時殺人シーンを放映したからといって連鎖して殺人事件がおきる、などということがあるでしょうか?」
横浜を舞台にした本格的な刑事ドラマは作られなくなる?
「また港での武器や麻薬の取引の場面はやめてほしいなどと言われると、刑事物やサスペンス物は撮れなくなってしまいます。もっと芸術的表現に関する寛容さを持ってほしいです」
「横浜のイメージを大切にするあまり、これは良いけれどあれはだめということですと、おとぎ話しか撮れなくなるのではないでしょうか? その意味では東京都の行政側のほうが、表現に関する自由度を認めてくれます」
横浜フィルムコミッションが支援した、映画『恋するヴァンパイア』
「また施設利用許可の申請期間は2週間と長くなっています。民間の世界は時間が勝負のため、もう少し融通をきかせて短くしてほしいです。さらにさまざまな交渉を始めても、1年で人事異動があるため、長い交渉の場合は、その都度、始めから担当者と交渉をし直すため、なかなか話が先に進みません」と答えてくれた。