心の労働災害から身を守るには? 教えて○○さん! 「弁護士」編
ココがキニナル!
日常生活の疑問やトラブルを、はまれぽがイチオシする専門家が分かりやすく解説! 第12回は弁護士が教える「心の労働災害」について
ライター:はまれぽ編集部
日常生活を送るうえで、さまざまな疑問やトラブルが生じることってありませんか?
「教えて〇〇さん!」は、そんな疑問やトラブルの解決方法について、はまれぽがイチオシする専門家が分かりやすくアドバイスしてくれるコーナーです。
日常の疑問を分かりやすく解説
職場で心の傷を負っている人は増えている?
労働災害として認められるのは、ケガなどの目に見えるものだけではない。2011(平成23)年12月、精神障害についての労働災害の認定請求数増加を背景に「心理的負荷による精神障害の認定基準」が定められた。
過重労働やパワハラ、セクハラなどを理由に心の病を患ってしまうその前に、どのような対処法があるのか。
みなとみらい線日本大通り駅より徒歩2分、横浜合同法律事務所の弁護士、田井勝(たい・まさる)さんにお話を伺った。
どんな疑問にも優しい口調で答えてくれる
厚生労働省の報道資料によると、2011(平成23)年度の精神障害による労働災害請求件数は1272件で、2015(平成27)年度には1515件と増加。職場で心の病を患う人は年々増えていると田井さんは話す。
非正規雇用の増加によって、安い賃金で過酷な労働を受けざるをえなくなったことや、長時間労働や強烈なパワハラが行われる、いわゆる「ブラック企業」が蔓延したことが原因だという。
また、ネット環境の発達により、自宅に仕事を持ち帰ることで業務時間とプライベートの境界があいまいになったことも一因なのだそう。
「仕事だから」という責任感に心が蝕まれていく(フリー素材より)
田井さんは「労働災害請求の中でも、特に心身共に消耗が激しい介護職の増加率が高いです。また、さまざまな責任が課せられる中間管理職を任された人が、精神障害に陥ってしまうケースが多いのです」と話す。
また、非正規社員だった人が正社員になった場合、「せっかく正社員になれたのだから」と厳しい環境を我慢し続け、抜け出せなくなるケースも増えているという。
精神障害による労働災害認定基準とは?
増え続ける、労働による心の病。自分は大丈夫だと思っていても、誰にでもふりかかる恐れがあると注意を呼びかける田井さん。
備えあれば憂いなし。いざというときにどのように動くべきなのか。最初の一歩として、労災認定の評価基準について教えていただいた。
3つの「精神障害の労災認定要件」。要件を満たさなければ認定されない
厚生労働省が発表している、心理的負荷評価表をもとに「強」「中」「弱」の3段階により心にかかる負担の大きさを評価する。「強」と評価される場合、労災の認定がおりる可能性が高まるので、「現在職場で困っていることがある方は、一度心理的負荷評価表をチェックしてみた方が良いかもしれません」と、アドバイスをいただく。
厚労省発表の資料内に心理的負荷評価表が記載されている
この評価表。例えば退職について、勧奨は「弱」または「中」だが、恐怖を抱かされる方法で勧奨したり、強要された場合は「強」に認定される。
時間外労働においては、精神障害発病直前の1ヶ月前に160時間の残業をした、あるいは発病直前の2ヶ月間連続して120時間、3ヶ月間では100時間の残業が続いていれば「強」と認定される。
こうして明確化された基準に照らし合わせることと合わせ、もう一つ大切なことがあると田井さん。それはしっかりと「証拠を残す」ことなのだそう。
「同僚の証言などで認定が通ることもありますが、タイムカードの記録を残していたり、パワハラの発言を録音しているケースの方が認定を受けやすいのです。パワハラを受けている際、その上司との会話を承諾なしに録音していても、基本的には違法ではないので、自己防衛に必要な処置として行動に移せます」
証拠があれば労災認定がされやすくなる(フリー素材より)
つらい思いをずっと我慢してきて、病まで患ってしまったのに、証拠がないために泣きをみるなんて救いがなさすぎる。
苦しい中でもこうした認定の事前準備を行っておくことが、後々の救済につながるのだ。