神奈川県の観光情報サイトなのに、なぜ「東京」!? いったい、どういうつもり?
ココがキニナル!
神奈川県が外国人向け観光情報サイト「Tokyo Day Trip」を開設しました。県が発信する観光情報なのに、サイト名に「東京」が! 大いにキニナルと同時に今後どうするの?(よこはまいちばんさん)
はまれぽ調査結果!
外国人観光客の間で神奈川県の知名度は低く、検索で観光情報までたどり着かないという弱点を補うために命名された、攻めのサイト名だった
ライター:ミズグチマイ
神奈川なのに東京?
読者のキニナルの投稿によって「Tokyo Day Trip」の存在を知った筆者。さっそくウェブサイトを確認してみる。
「Tokyo Day Trip」トップページ。芦ノ湖の写真が表示された
ページ上部に"Tokyo"の文字があるが、確かに神奈川県の観光情報を紹介している。
神奈川県の観光情報サイトなのになぜ「東京」・・・? と確かにサイト名でモヤモヤする。
だが、筆者も気を抜けばオーストリアとオーストラリアを間違えたりする。もしかしたら「Tokyo Day Trip」もそういった誤植なのでは!?
このままだと外国人観光客に神奈川県という存在を誤解させてしまう!
これは「Tokyo Day Trip」を運営している神奈川県に、すぐ報告に行かねばなるまい。
神奈川県庁にやってきた
「Tokyo Day Trip」の企画・運営を行う国際観光課
対応してくださったのは、神奈川県産業労働局の国際観光課の今井明(いまい ・あきら)課長、同課の受入対策グループリーダー 南川修(みなみかわ・ おさむ)さん、同グループ主任主事の熊澤英一(くまざわ・ひでかず)さんの3名。
写真左から南川さん、今井課長、熊澤さん
「早速ですが、『Tokyo Day Trip』のサイト名・・・間違えていないでしょうか? 神奈川県の観光情報サイトで"Tokyo"とはどういうことかと思いまして」と質問をぶつけてみる。
「間違えていません」と今井課長
今井課長が「サブタイトルを含む『Tokyo Day Trip -Kanagawa Travel Info-』までが正式なサイト名で、神奈川を紹介するサイトであることを明記しています。間違いではありません」と説明してくれた。
なるほどサイトを改めて見ると、サイトのサブタイトルに"Kanagawa"の文字が確かにある・・・。
外国人観光客に神奈川県に来てほしいと思うがあまり、共に「申」という漢字のパーツが含まれている東京を神奈川と見間違えた・・・というわけでもなかった。
だが、なぜ"Kanagawa"より"Tokyo"が目立つサイト名になっているのだろうか? キニナル理由を伺った。
国際観光課は2年前に発足した課で、主に「国内外からの観光客誘致に向けた県内観光資源の発掘・磨き上げ」、「外国人観光客へのプロモーション」、「外国人観光客が神奈川県を訪れた際に快適に旅をすることができる、受入環境の整備」の3つを取り組んでいる。
近年、日本への外国人観光客は年々増えているが、実は神奈川県への訪問率はやや下がり気味という傾向にある。
神奈川県への訪問率(赤線)は低下傾向(出典:観光庁 訪日外国人消費動向調査、神奈川県観光振興計画より)
訪問率低下の理由は、外国人観光客の旅行のあり方が変化していることに起因する。かつては外国観光客のツアールートに神奈川県が組み込まれていることが多かった。
かつてはツアーで旅行する観光客が多かった
しかし、ここ最近の外国人観光客の傾向としてツアー旅行ではなく、インターネットなどを利用して、自分で行き先のプランを組む旅行者が多い。だが、旅行者は必ずしも日本の土地勘があるわけではない。検索する際に「神奈川県」という地名を知らないと、結果的に神奈川県の観光情報までたどり着かないのだ。
旅のスタイルが変わり、自分で行先を調べる旅行者が増えた
熊澤さんは「調べてみると『東京から日帰り(Tokyo Day Trip)』というキーワードで検索する外国人観光客が多いことがわかりました。神奈川県は東京から足を伸ばしやすい位置にあるので、検索で神奈川県を知ってもらうために『東京から日帰り』という言葉をサイト名に入れました」とのこと。
狙いは当たってGoogleで「Tokyo Day Trip」をキーワードとして検索すると、当サイトが表示されるようになっています」(2017年5月の取材時)と解説してくださった。
「Tokyo Day Trip」が上位に表示されている(Googleより)
しかし、"神奈川"のサイトなのに"東京"という言葉をサイト名に冠するなんて! という否定的な意見はなかったのだろうか?
「なぜ"東京"なのか? という質問はありましたが、旅行者目線で考えて検索しやすいサイト名に・・・といった目的を関係者に説明したところ、納得してもらえました」とのこと。
ナルホド「Tokyo Day Trip」はインターネット時代ならではの、戦略性のある"攻め"のサイト名だったのだ。
利用状況は?
実際に海外から来た旅行者に「Tokyo Day Trip」は利用しているのだろうか?
英語圏に広告を打った効果で、2017(平成29)年2月10日のオープン直後の2ヶ月は順調な滑り出しだったが、広告を打たなかった4月は少し厳しい数字に・・・。
熊澤さんは「今後は広告のみに頼った集客だけではなく、海外の観光ウェブサイトとも連携して周知を進めます。『Tokyo Day Trip』はサイトを公開して終わりではなく、外国人観光客のリアルな動きを掴んで、需要に応じた情報を追加して育て続ける形で運用しています」とお話してくださった。
神奈川県を旅を快適に!
国際観光課では、「Tokyo Day Trip」のようなウェブサイトによる観光情報の発信だけではなく、観光客が神奈川県で快適に旅行することができるように受け入れ環境の整備にも取り組んでいる。
「4月に『MUSLIM FRIENDLY RESTAURANT GUIDEBOOK KANAGAWA』という冊子の第2版を発行しました。ムスリム(イスラム教徒)が宗教上で禁じられた食材を避けて食事ができるレストランをまとめており、主要な駅などで配布しています」と南川さん。
観光客が神奈川県で快適に旅行することができるように印刷物も発行
また、国際観光課では飲食店での外国人観光客の注文をサポートする多言語対応の神奈川県飲食店検索サービス「KANAGAWA food」も運営している。
神奈川県内の店舗が「KANAGAWA food」に情報を登録すると、多言語対応された印刷用のメニューの作成が可能なほか、本サイトで情報公開も行うことができる。
店舗と観光客の対話用、指差し会話用のシート(pdf)も公開されている
南川さんは「今後は、言葉の壁で外国人観光客への対応が難しい神奈川県の事業者へのサポートとして、英語・中国語・韓国語に対応した多言語コールセンター(電話通訳サービス)を開設する予定です」と教えてくれた。
神奈川県に観光で来てみたら言葉の壁でトラブルが発生してガッカリ・・・「星1つとさせていただきます」といったSNSでのレビューを避けるためにも有益な施策といえそうだ。
取材の最後に、お三方の個人的な神奈川県の外国人観光客へのオススメスポットを伺った。
熊澤さんは「鎌倉高校前ですかね。『スラムダンク』の舞台としても有名ですし」、南川さんは「大涌谷でしょうか。火山活動の白煙を間近で見られるのは世界でも珍しく、外国人観光客にもとても人気です」、今井課長は「観光地というわけではないですが、個人的には日本の居酒屋を体験してみてほしいです」と、三者三様の回答をいただいた。
はまれぽステッカーと共にパチリ