バリアフリーの物件を居抜きで手に入れることができた

美容室では普通、美容師が同時に2～3人のお客様の相手をする。ところが、出張では移動時間も含めて1人のお客様に美容師1人が対応することになる。
また、送迎にもスタッフが必要となり、福祉美容室は一般的な美容室よりコストがかかる。とはいえ、カット・クリエイト21の価格設定は、店内でのカット＆ブローは3300円、出張ヘアカットは3800円とかなりリーズナブル。送迎も無料で行っている。
　

30～40分くらいの範囲で送迎を行っている。それ以上でも応相談

「月末が近付くと毎月、今度こそ従業員のお給料を出せないかもしれないと思った時期や、何度もやめようと考えたこともありました。でも、今回だけはなんとか頑張ろうと、毎月それを積み重ねてきたという感じでしょうか」

お店をオープンさせてからのことを藤田さんはそんな風に振り返った。
　

このお店のスタッフは現在8名。和やかで明るい雰囲気だ

ホームヘルパーの資格を持つ藤田さんは、お年寄りに負担のかからないかたちで美容師としてのサービスを行うことができる。出張の場合も普通のベッドに寝ている状態で専用の器具を使ったシャンプーやカットが可能だ。福祉美容室というこうしたコンセプトは徐々に浸透しリピーターが増えて、新しく2つの美容室を開設するまでになった。

さらに老人ホームや老人福祉施設への出張も5年目くらいから増えてきた。そこで、2007（平成19）年には、出張理美容専門の「株式会社出前美容室 若蛙」をスタートさせ、神奈川、東京、埼玉、千葉の範囲でサービスを行っている。
　

横浜市は要介護者に向けて、訪問理美容のサービス利用券を出している

藤田さんは、「理美容師をやめていても、1日数時間、あるいは週3日であれば働きたいと考えている方にとって、出張理美容は無理のない範囲で続けることができる仕事。現在は1都3県ですが、そういう方が働くことができる機会を増やすという意味でも、今後もっと広げていきたいと考えています」と教えてくれた。

きれいになるプレゼント

「きれいになれるプレゼントです」藤田さんが優しい笑顔に

訪問理美容師のネットワークを作ることで、こうしたアイデアが現実のものとなる日も近付いてきている。

取材を終えて