保土ケ谷スポーツセンターの裏山にある監視カメラが設置された立入禁止の謎のエリアの正体は?
ココがキニナル!
保土ケ谷スポーツセンターの裏山に立入禁止の『謎のエリア』がある。階段と公園?の様なものが目視でき、監視カメラがある。多摩丘陵の緑地の可能性もあるがビール坂で分断されている。(choberyさん)
はまれぽ調査結果!
以前所有していた野村不動産から、神奈川県に寄贈された普段は立入り禁止の土地。水田を作り生態系を再生させるプロジェクトなどが行われている。
ライター:小方 サダオ
企業のビルの裏山にある謎の場所の正体とは?
保土ケ谷区にある保土ケ谷スポーツセンターの裏山に立ち入り禁止の謎のエリアが存在するようだ。監視カメラで守られた謎の場所とはどのようなものか、まずは現地へと向かった。
横浜ビジネスパークの近くに、投稿の山(青矢印)がある
こちらは投稿にあった写真
相鉄線天王町駅を下車して徒歩数分の場所に、保土ケ谷区のランドマーク・横浜ビジネスパークがある。
野村不動産が所有する敷地面積は、約7万1000平方メートル(横浜スタジアム約2.7個分)のオフィスビルが建ち並ぶエリアだ。
横浜ビジネスパーク
広い敷地の中に多くの建物がある
横浜ビジネスパーク内の道路をはさんで向かい側に、NRI横浜ラーニングセンターのビルがある。
そのビルと保土ケ谷スポーツセンターとの間の道の先に、投稿にあった山が見える。確かに山の手前に監視カメラがあり、山へと向かう道はこの道の奥にあるが、柵が閉じられているようだ。
NRI横浜ラーニングセンター
保土ケ谷スポーツセンター
NRI横浜ラーニングセンターと保土ケ谷スポーツセンターの間の通路の先に投稿の山がある
ここから先は企業ビルの敷地内になるようだ。
ビルの裏は住宅地になっている。そこでこの裏山を目指して、住宅地の中を進んだ。
ビルの裏の山の上は住宅地だ
すると住宅地の中に、投稿の山を囲む柵を発見した。
そしてそこには「かながわトラスト 桜ヶ丘緑地 桜ヶ丘 水辺のある森再生プロジェクト」と書かれた看板が掲げられていた。
山を囲む柵に看板を発見
そこで早速、公益財団法人・かながわトラストみどり財団の壹崎(いちさき)さんに連絡を取ると、投稿の緑地について説明してくれた。そして8月2日にイベントが行われるとのことで、現地でお会いしこの場所について取材させてもらうことにした。
公益財団法人・かながわトラストみどり財団とは?
看板にあった、公益財団法人・かながわトラストみどり財団についてホームページで調べてみた。
かながわトラストみどり財団のホームページ
同財団が行うナショナル・トラスト運動に関しては「英国で19世紀の産業革命期に始まった環境保護運動のことです。都市開発が大気汚染や水質汚染などを生み、市民の生活環境を悪化させ、その周辺の森林や田園地帯などが荒廃していったため、自然を公共的な財産としてとらえ、無秩序な開発行為から、自然環境や歴史的環境を守るために保全する活動のことです」とある。
当財団の沿革に関しては「かながわトラストみどり財団による緑地保全は、1987(昭和62)年にかながわトラストみどり財団と秦野市が連帯して、秦野市内の葛葉(くずは)緑地から財団と地権者との長期間にわたる緑地の保存契約が結ばれ着手し、始まりました。現在、保全するトラスト緑地は84万平方メートル(横浜スタジアム約32個分)を超えています」とのこと。
かながわトラストみどり財団が保全する、桜ヶ丘緑地
「その事業は都市近郊の身近な緑から、水源林など山地の緑まで、生活環境から水源環境の保全など、皆様とともに神奈川の緑を守り育てる運動を推進しています。またトラスト緑地は、ボランティアの市民団体の協力により自然再生や維持管理活動が行われ、良好な自然環境が保全されています」とある。
トラスト緑地の保全手法に関しては「神奈川県の設置する『かながわトラストみどり基金』による緑地の買い入れや寄贈、財団での土地所有者の協力を得て緑地保存契約を行う保全など、県と財団が協力し合って行う、神奈川方式ともいえるナショナル・トラスト運動です」と書かれている。
桜ヶ丘緑地は、ボランティアにより自然環境が保たれている
そのトラスト緑地の一つに、三浦半島の先端で相模湾に面したリアス式の入り江がある谷に「小網代(こあじろ)の森緑地」がある。約70万平方メートル、横浜スタジアム約27個分の広さがあり、首都圏では唯一の「完結した自然状態の流域=集水域生態系」を持つというユニークな場所。絶滅危惧種も多数生息している、生物多様性の宝庫として、学術的にも注目されている。
トラスト会員になると、アカテガニ放仔(ほうし)観察会や小網代の保全活動に協力することができるという。
ところで前出の壹崎さんの話によると、投稿の山の土地の場合は、神奈川県が野村不動産から1998(平成10)年に寄贈を受けたものだという。桜ヶ丘緑地と名づけられた、1万2000平方メートルある土地だ。
桜ヶ丘緑地を寄贈した野村不動産
桜ヶ丘緑地は、毎月第1日曜日と第3土曜日の午前10時から午後2時に、ボランティアと一般の参加者により、自然を再生するためのプロジェクトが行われている。
桜ヶ丘緑地のボランティア活動の関係者が作成する『桜ヶ丘・水辺のある森再生プロジェクト』のホームページによると、森や水路を整備したり、水田を再生させていく様子が細かく報告されている。
ボランティアの方たちと一般の参加者にって行われていて、一般の参加者は、ホームページから申し込む形になっている。
そして今回の8月2日は毎年恒例となっている、第8回を迎える「親子むしとり大会」だ。午前10時30分からの1時間半の間、再生中の森に生息する虫を捕獲する、という、夏休み真っ盛りの子どもたちにはうってつけの企画といえよう。
親子むしとり大会が開催!
当日の朝は、いつもは閉じられている柵が開けられていた。
裏山へと続く柵が開けられている
柵の中に入る
今回は、監視カメラを気にせず堂々と柵の中に入り、タイル張りのきれいな階段を30段ほど上ると、方向が変わり、今度は古びた石段が上へと続いている。
タイル張りの整備された階段
その上には古びた石段が続く
そして階段を上りきった先には、一面に田んぼが広がる、緑鮮やかな広場が姿を現した。
40名ほどの人たちが緑地に集合していた
すでに親子連れを中心として40名ほどの参加者と数名のボランティアの人たちが集まっていた。子どもたちは手に柄の長い網、首から虫かごをかけた姿で、開始の合図を待ちわびているかのようだ。
ここで壹崎さんに挨拶し、この桜ヶ丘緑地に関して伺うと「タイル張りの階段までが野村不動産の土地になるため、普段は門からは入れません」
タイル張りの場所から下が野村不動産の土地だ
「こちらは15年前に神奈川県に野村不動産から、ナショナル・トラスト運動の趣旨に賛同して寄贈いただいた土地になります。以前はバレーボールやテニスのコートなど、野村不動産の福利厚生施設があった場所でした」
水田ビオトープが行われている桜ヶ丘緑地
「ここ桜ヶ丘緑地では、水田ビオトープ(水田を作ることで自然環境の回復や保全を図る取り組み)が始められていて、ボランティアの方たちや一般の参加者により維持管理がされています。きれいな湧き水の出る、約1万平方メートルの緑地で、その水によりビオトープや水田を作っているため、貴重な生き物の生息地としての条件がそろっています」
そのため8月の第1日曜日は恒例の虫取り大会を行っています。普段は人が入らないため、「かなりの数の虫が採れます。さらに水田の上の階段を上がった場所には、昔ここにビール工場があった際に湧き水を取っていた、取水口と思われる設備の跡があり、興味深いですよ」と答えてくれた。
古い街灯も緑に包まれ残っていた