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大船で100年以上も駅弁を販売している老舗「大船軒」の鯵(あじ)の押寿しって?

ココがキニナル!

JR大船駅の売店で売られている「鯵の押寿し」は、大船軒さんが大正2年から作ってるそうですが、大船と鯵が結び付きません。何故「鯵」なの?(brooksさん、yakisabazushiさんのキニナル)

はまれぽ調査結果!

大船軒は明治31年創業。大正2年発売の鯵(あじ)の押寿しは、当時、江の島近海で多く獲れた鯵を使って開発した。現在もその味が継承されている。

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ライター:大和田 敏子

創業116年 大船軒の歴史!(続き)

当時の工場内部の写真も多く残っているが、衛生管理を意識した部屋・着衣で調理が行われていたことが伝わってくる。
 


調整室(箱詰め作業を行う部屋)。昭和初期(写真提供:大船軒)
 

調理室。昭和初期(写真提供:大船軒)

 
昭和に入ってからは、シュウマイの販売も行うようになり、好評だったそうだ。また、アイスクリームの製造も行っていたようで、由比ヶ浜の海の家に出店するなど、大船軒はアイデア豊かに業務の拡大をしていった。
 


アイスクリーム製造室。昭和初期(写真提供:大船軒)
 

昭和初期には、由比ヶ浜に海の家を出店(写真提供:大船軒)

 
創業者の周蔵氏は、他社の弁当の掛け紙や、鮮やかな色彩の食品のラベルを収集していたそうだ。また、国鉄の抜き取り検査の新聞記事など衛生関係の記事や、自身が取得した以外の特許の書類など、関連しそうなものを広く集めていた形跡があると、資料を整理する中で知り得たことを教えてくれた。
広くアンテナを張って時代の先を読む実業家であり、芸術肌の人でもあったのではという印象を受ける。
鯵の押寿しや弁当の掛け紙は、時代とともに変わってきているが、指向やデザインには、かなりのこだわりを感じる。昭和初期には、鎌倉周辺の風景をスケッチしたものをシリーズで使っていたようだ。
 


1928(昭和3)年お弁当の掛け紙。保土ヶ谷関の春風景
 

1928(昭和3)年鯵の押寿し掛け紙。地引網を引いている漁師
 

1931(昭和5)年お弁当の掛け紙。由比ヶ浜海水浴風景


しかし、第二次世界大戦が始まると、大船軒も時代の波に翻弄される。
原料の不足から鯵の押寿しが販売できなくなり、やがて戦争が激しくなると、従業員も戦争に駆り出されていく。米の仕入れが難しくなると、米を自給でまかないながら弁当を作り続けたという。ついに米が底をつくと、イモを使うこと思いつき、イモ弁当を販売したこともあるようだ。戦時中は一時、社屋が海軍に接収され、営業を停止した時期もあった。

鯵の押寿しが再販されたのは、1952(昭和27)年ごろのこと。


戦後、物資制限の頃は小さな掛け紙しかつけられなった


昭和30年代、大船駅の駅弁売り。昔懐かしい駅弁売りだ!

 
現在のスタンダードな「鯵の押寿し」は、小鯵よりも一回り大きな中鯵のそぎ身を使ったもの。これが誕生した年代は不明だが、背景には小鯵の漁獲量の減少があったようで、その代わりに中鯵を使うようになったと推測されるという。しかし、小鯵を使った押寿司を完全に製造しなくなったわけではなく、小鯵の多く獲れた時期には、スポット的に販売を続けていた。
小鯵を使った伝統的な押寿司を「伝承 鯵の押寿し」として定番化して製造・販売するようになったのは、平成初期からだという。

1977(平成9)年には、本社の隣に新工場が完成し、昭和の社屋は工場としての役目を終えた。
 


現在の工場。この奥に第2工場もある

 
現在、大船軒は、鯵の押寿し、サンドイッチなどの伝統の味を守りながら、さまざまなお弁当を販売。新時代に向けた新たな商品を作り出し続けている。また一方で、鎌倉市内の神社や寺院などを中心とした顧客からの要望に細やかに応える注文弁当なども手掛けている。



本社で営業中の「茶のみ処 大船軒」を紹介!



大船軒では、2011(平成23)年7月4日より、本社の一部でカフェ「茶のみ処 大船軒」を営業している。
本社はレトロな建物ということもあり、立ち止まって見ている方も多かったため、実際に中に入って内部を見てもらいながら、休憩したり、鯵の押寿しなどを味わっていただける場所を提供できたらと考え、営業を開始したという。
  


大船軒本社の入り口の階段下には「茶のみ処」の看板がある
 

「茶のみ処 大船軒」のメニュー
 

昭和初期の事務室。現在は「茶のみ処」として営業(写真提供:大船軒)
 

現在、営業中の「茶のみ処」

 
現在、「茶飲み処」となっているのは、かつての事務室だが、基本的に変わっていないのは構造のみだそうで、内装などは、ほとんど変えている。シンプルにすることを意識して改装しただけで、特に元のままに復元する意図はなかったというが、レトロな雰囲気は昔の面影を残していた。
 


「伝承 鯵の押寿し(五貫)」800円(写真提供:大船軒)

 
大船フラワーセンターに行った帰りに立ち寄られる方も多いとか。確かに、美しい花を観賞し自然の中を散歩した後に、一休みするのには、とても良い場所。大船駅付近のにぎやかさとは無縁の空間は貴重だ。
筆者も、ここでゆったりと鯵の押寿しをいただきたかったのだが、あいにく閉店時間に。残念!
けれども、食べたい気持ちは抑えられない。せっかくの駅弁なのだから、電車の中でいただくのも良いと思ったが、そうもいかず、結局、楽しみは帰宅後に持ち越すことにした。



「鯵の押寿し」と「伝承 鯵の押寿し」、そのお味は?



「鯵の押寿し」は以前に度々、いただいたことがあるが、「伝承 鯵の押寿し」の方は初めて。味の違いがキニナル。
 


「鯵の押寿し(960円)」と「伝承 鯵の押寿し(1250円)」

 
元々、江の島近海の鯵を使って作られていた押寿しだが、近年は、江の島近海の鯵の漁獲量が少なくなったため、九州近海の鯵を使用しているという。
 


スタンダードな「鯵の押寿し」。中鯵を4、5枚のそぎ身にして使用
 

「伝承 鯵の押寿し」。小鯵の半身を使用している

 
両者を食べ比べてみることに。
まず、しょうゆをつけずに、そのままいただく。
「伝承」の方が、身が厚くしっかりした食感で深みのある味。「スタンダード」は伝承に比べ、身は薄いが、食べやすい感じもする。どちらもおいしい! お酢がそれほどきつくないので、お酢が苦手な人にも案外食べやすいのではないだろうか。
 


左が中鯵を使ったスタンダードな押寿し、右が小鯵を使った伝承の押寿し


お好みでしょうゆをつけて食べてもおいしいとうかがったので、添付のしょうゆをつけて食べてみる。
おいしい! 筆者はこちらの方が断然好み。 鯵の旨みが引き立って、さらにおいしく感じた。
しっかり鯵の食感を味わいたい人には伝承の方がおすすめだが、あっさり食べたい人にはスタンダードが好まれるのかも。
筆者は、初めて食べた伝承に感動! 鯵をしっかり食べた満足感は、ほかではなかなか味わえないと思う。

大船軒の鯵の押寿しは、鯵の酢漬けの配合などについて、手書きのレシピが残っていて、それを継承しているが、鯵が変わったり、厚みが違ったりすれば、酢漬け時間を変える必要がある。夏と冬でも違う。酢漬けの前の下処理の塩漬けについても、気温によって塩の浸透する時間が違うため、季節によって変えているという。ひとつの味を継承するためには、多くの苦労があることをあらためて知った。



取材を終えて



大船軒のみならず、駅弁の歴史を知る取材となった。駅弁が車窓を開けて購入するかつてのスタイルから、すっかり様変わりする中、駅弁の楽しみ方や価値が大きく変わってきていることを感じた。

現在、大船軒では、会社の歴史を整理してまとめる作業を行っている最中だという。
歴史のある会社だけに、資料も膨大で解読が難しい古いものも多いため、不明だったり、曖昧だったりする部分もあると言いながら、細かな質問にも丁寧にお答えいただいた担当のお二人に心より感謝!

鯵の押寿しのみならず、今後の新商品にも注目していきたい。


―終わり―

〈店舗情報〉
茶のみ処 大船軒
住所/神奈川県鎌倉市岡本2-3-3 大船軒本社ビル
電話/0467-44-2005 
定休日/なし
営業時間/11:00~15:00
 

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  • 大船の鯵の押し寿司、懐かしいです。小生が子供の頃、60年程前にもなりますが、父がこれが好きで、金沢八景から何度も車で買いに行っていた覚えがあります。その記憶では、小鯵の上に白板昆布が載せられ、子供の嫌いな生臭さが緩和され、昆布だしの美味しさが際立ったように覚えています。あの頃には昆布が豊富だっただけでなく、昆布を上手に加工する職人さんが居られたため可能であったのかもしれません。この復活の可能性は如何でしょう?

  • 母が鯵の押し寿司が好きなので、たまに頼まれて買います。横浜駅のエキナカで曜日限定で机を出して売ってくれていたので、重宝したのですが、なくなってしまいました。がっかりしていたら、いつの間にか東神奈川駅のエキナカにお店が出来てました。ありがたいです。また買います。

  • 東戸塚駅でも買えるのでたまに食べてます。チープなサンドイッチもなんかそそられんですよね

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