川崎市の取り組みとは

スタンドの工事と人工芝の張り替えにおよそ19億円かけているというから、当然多くのお客さんに来てもらわなければならない。

市としては、集客や競技の普及はあくまで競技団体の仕事としているが、川崎市もアメフトを活用して市内を盛り上げようというのだから、自然と共通した意識は芽生えてくる。

現在は、草の根的な活動が行われているそうだ。
「まずはアメフトのことを知ってもらわないと始まらない」というわけで、社会人リーグと連携して、地域のお祭りに各チームの選手が参加したりブースを出したりと、市民との交流に力を入れている。

また、アメフトを身近に感じてもらった後は、試合を見に来てもらおうと観戦講座なども開いているそうだ。講師は本場アメリカのプロリーグ（NFL）のテレビ中継でも解説を務めている方で、分かりやすいと毎回好評だとか。
　

川崎球場に足を運べば、迫力満点の試合が繰り広げられている
　

子どもたちに向けては、実際にアメフトを体感してもらおうという取り組みもある。
国の学習指導要領にも登場するようになった「フラッグフットボール」を小学校の体育の授業で取り入れるようにしているのだそうだ。

フラッグフットボールは、アメフトの魅力を安全に楽しめる競技で、タックルの代わりに腰につけたフラッグを引き抜くことでプレーを止めるというスポーツだ。
　

元気にフィールドを駆ける子どもたち
　

市内113校の小学校のうち、約100校が授業で採用しているそうで、市から指導者を派遣したり、市内にある「藤子・F・不二雄ミュージアム」と協力して大会を開くなど、普及に努めている。
　

藤子キャラ勢ぞろい！
　

そのほかにも、川崎球場と駅の間にある商店街の飲食店で食事をしてもらおうと、割引サービスのつくチラシを配布するなど、取り組みの内容はさまざまだ。

チーム側の協力は

こういった市の活動に、Xリーグの2チームも積極的に協力しているという。
「かわさきスポーツ推進パートナー」に認定されている「富士通フロンティアーズ」は、年に10校ほどの小学校に赴きアメフトの魅力を伝えている。
試合への市民招待などもあり、双方向の連携が見て取れる。

球団事務所が横浜市にあるため、この制度の対象外となってしまっている「アサヒビールシルバースター」も、球団からの申し出で災害時に支援をする協定を結ぶなど、地域貢献には前向き。
　

ハドル中のシルバースター選手たち。災害時の強い味方でもある
　

ほとんどの選手、関係者が市の救命講習を受けているそうで、いざというときには救援救助や避難所設営に力を貸してくれることになっているそうだ。
　

試合中の濱田選手。彼も地域貢献には積極的
　

前出の濱田選手も、「地域密着を大切にしたい」と繰り返し口にし、その意識の高さを感じさせてくれた。

取材を終えて

「アメフトは難しそう」というイメージがあるが、実はそれは食わず嫌い。
試合観戦を楽しむ程度であれば、さほど複雑なルールではない。

アメフト人気の普及には、そういったイメージの払拭が必要だが、小学生から楕円のボールに親しむ機会のある川崎市の子どもたちにはそういったイメージはないはずだ。

まだまだ大きな成果が出たとは言い切れない取り組みかもしれないが、彼らが大人になったころ市やリーグ関係者の努力が実を結ぶだろう。
そのときにこそ「アメフトのまち・川崎」にグッと近づけるのかもしれない。


―終わり―