本格イタリアンレストランで就労支援、横浜市内の現状は?
ココがキニナル!
三ツ境に、どんぐり粉パンやどんぐり粉パスタの食べられるお店があるそうです。気になるので取材してきて下さい/『カフェ こっとーね』を取材してほしい。(ときさん/とうさんさん/マサスーンさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
「レ・ドア」も「こっとーね」も就労継続支援事業所のイタリアンレストラン。いずれも個性あふれるおいしいメニューを用意している。
ライター:松崎 辰彦
障がい者の自立を支援したい
三ツ境どんぐりヒルズのメンバーの中に、多くの注目を集めている人物がいる。自らを「表現者」と称する柴田賢志(しばた・けんじ)さんである。
柴田賢志さん
1975(昭和50)年生まれの彼は、俳優としてテレビ番組『救急戦隊ゴーゴーファイブ』に出演し、バンドを組んでの音楽活動も順調であったが、24歳のとき脳腫瘍が見つかった。
手術は成功するも右上下肢機能障害が残り、俳優やミュージシャンとしての活動に大きなハンディを負ってしまう。さらにその後、大腿骨頭壊死症という難病にも侵され、歩行の自由も奪われた。
そうした過酷な中にあって、彼は自らを「表現者」として位置づけ、現在はインターネットを通して日々の思いを発信している。
柴田さんの言葉。私たちの意識の意表を突いてくる(画像提供:株式会社まちふく)
「インターネットでブログを書いています。ここで働けることに、やはり感謝です。体の自由がなくなったという人生の転機がありましたが、ブログが第2の自己表現になりました。これからも、『表現者』として頑張っていきたいです」
彼の言葉は常に前向きで、ときに意表をつくようなものもあり、私たちに勇気を与えてくれる。
もう一つ、柴田さん言葉。飽くまで前向きな姿勢が表れている(画像提供:株式会社まちふく)
「こちらで障がい者の方々の自立を支援できればと思います。今後、お店をほかの地域に出すことも考えています」と将来の展望を語る三浦さん。店名の「レ・ドア」とは、開店当初はドアの色が赤かったので“red door”=レ・ドアになったとか。どんぐりの素朴な味わいが、全国に広がることを期待したい。
どんぐりのお店であることを強調する
ピザ窯から始まった「こっとーね」
「この会社をやるにあたっては、ピザ窯から始まったんですね。施設長が『石窯を使ったピザをやろう』と言ったのがきっかけです」
JR鶴見駅から歩いて5分ほど。やや奥まった路地にあるカフェ「こっとーね」の職員で社会福祉士である望月圭一郎(もちづき・けいいちろう)さんは説明してくれた。
「こっとーね」のドア
望月圭一郎さん
2012(平成24)年に誕生した「こっとーね」は就労継続支援B型の事業所「鶴見ワークトレーニングハウス」が経営するレストランである(就労継続支援B型は就労継続支援A型と異なり、メンバーとの間で雇用関係が存在しない)。
やはり知的障害のメンバーが多い。かつて存在した鶴見福祉授産所のメンバーを引き継いでいる(「こっとーね」とは“綿”を意味するイタリア語「コトーネ:cotone」からきている。2階の事業所で綿素材を中心とした製品を作っている)。
すがすがしい店内
忙しく働いている
自分たちの手で作り上げた
「こっとーね」のメニューを開いてみよう。ピザ窯が原点であるだけに、こちらも「レ・ドア」同様イタリアンである。
シンプルな「マルゲリータ」を注文してみた。焼き上がって出てきたピザは、光輝いていた。ピザ生地は薄いがサクサクと固く、上にあるトマトやチーズ、そしてバジルをしっかり支えている。
注文して焼き上がったマルゲリータ(450円)
片手で持ちやすい大きさで、口に運ぶにもこぼれ落ちることはない。
チーズやトマトは生地にしっかり吸いついて、口に入れるとそれぞれ異なる味が愛らしい室内楽のように、舌の上で音を奏でる。ピザにうるさい人も納得の味だ。
生地はサクサクと固く、チーズはとろりとやわらかい
そしてパスタ。注文したのはこれもシンプルな「カプレーゼ」。弾力があって柔らかく、歯応えがある。食べ終えた後の満腹感も心地よい。
食べ応えのあるカプレーゼ(700円)
注目すべきはトマトソース。市販のものではなく、こちらのメンバーが朝から苦労して一から自分たちで作ったものである。
このトマトソースを味わうだけでも、ここに通う価値はありそうだ。
「タマネギやセロリなどを炒めるなどして作っています。おいしいですよ。ドレッシングも自分たちで作っています。レシピはこれです」
そう言ってレシピを見せてくれた。
ドレッシングの材料
「お店をオープンするにあたり、ピザの石窯が立派なものだったので、それにあわせてほかの料理もしっかりしたものを作ろうということになりました」
存在感のあるピザ窯
慣れた手つきでピザを作る
将来もここで働きたい
メンバーの方にお話を伺った。
開店当時からのメンバーである林田さん。
「ボクは以前にも背客業の経験があります。仕事でもストレスはありますが、職員の方に話を聞いてもらうなどして対処しています。将来は、普通に暮らせればいいかなと思っています」
林田さん
厨房で忙しく働いている今井さん。
「養護学校を卒業して3年になります。ここではサラダ作りなどをしています。仕事は大変です。将来もここで働き続けようと思っています」
今井さん
2階は軽作業の場であり、多くのメンバーが組立作業や縫製などの仕事をしているが、半日交替で「こっとーね」に入る。
軽作業が行われている
「ここでは縫製のほかボールペンの組み立てや袋入れといった、下請けの仕事をしています」
職員の加藤さんは「外からくるお客様へのサービスと同時に、メンバーさんが気持ちよく働けるように配慮しています。メンバーさんによってできる仕事や得意な分野がありますので、それらを考えながらやっています」と語る。
制作した数々の商品が売られている
おいしい料理を出すと同時に、メンバーへの職業訓練も実施しなければならない就労継続支援の事業。通常の企業とは異なる条件の中で、最大の努力をしていることがうかがえる。
取材を終えて
思いがけず2軒のイタリアンレストランの取材となった。いずれも共通しているのは「おいしいから」人が来るということ。お付き合いや障がい者への同情などではなく、純粋に料理の力で人が来て、対価を払って食事をして「おいしかった。ごちそうさま」と言って帰っていく。
どんぐりのパスタは素朴な味がした。
「ジョン・レノンは世界の指導者に、平和を願ってどんぐりを贈ったそうです」と三浦さん。たしかに、どんぐりのあたたかみは心をなごませる。どんぐりは食用として、さらに研究されるべきであろう。
どんぐり茶(ティーパック12包入)(520円)(画像提供:株式会社まちふく)
どんぐりカリンドー(260円)(画像提供:株式会社まちふく)
「こっとーね」のピザは視覚も味覚も満足させてくれる逸品だった。歯応えのある生地とその上で照り輝いているチーズとトマト。ピザ窯をテーブルから眺めることができて、料理への期待感も高まる。
おいしいピザが焼き上がる
いずれも就労継続支援事業所だが、皆さんそれぞれ個性を活かして仕事をされているようだった。今後もおいしいパスタやピザを作り続けてくれることを、願いたい。
─終わり─
取材協力
レ・ドア
住所/横浜市旭区中希望が丘249
電話/045-369-0167
営業時間/11:30~15:00
定休日/土日祝日
カフェ こっとーね
住所/横浜市鶴見区豊岡町28-4
電話/045-582-8029
営業時間/10:00~15:00
定休日/土日祝日
柴田賢志さんのブログ
「柴田賢志の最新情報」
http://plaza.rakuten.co.jp/kingkenji/
横浜市健康福祉局
http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/
とーたんさん
2015年12月08日 09時03分
同様のニュースは最近多くなってきており、福祉施設の経営が多様化しているのが分かって良かったです。ただ、同じような業態を行っているのに、就労継続支援A型とB型に別れているのは、どういった理由からなのかなども含めた記事であれば、良かったかと思います。給料と工賃は大きな違いですもんね。