駅があった当時は？

　

　昭和50年代ころの「逗子海岸駅」（提供：逗子観光協会）
　

「逗子海岸駅」は平屋建ての小さな駅舎であるが、懐かしい昭和の時代を想わせる佇まいである。

　

　1981（昭和56）年当時の駅の様子が載っている資料（『鎌倉・逗子・葉山今昔写真帳』）

　
赤丸が「逗子海岸駅」プラットホーム。

　

　拡大すると赤丸箇所で線路が終わっている

　
線路が行き止まりになっていて、のどかな雰囲気の駅である。
「逗子海岸駅」があった当時の様子について地元で伺った。

　

　駅があった場所から海へ行く途中にある、釣具店「愛古堂（あいこどう）」

　

　社長の堀田（ほった）さん

堀田さんによると、「逗子海岸駅」があった当時、夏になると海水浴客や釣り人などで大変にぎわい、ピークの時代には店の前の歩道だけにおさまらず車道にも人が歩くほどだったそう。

　

　1962（昭和37）年の逗子の海水浴場の様子（提供：逗子観光協会）

昭和30年代は、上記写真のように海上にステージが設けられ芸能人のショーなどが催されていたようだ。

昭和40年代に京浜急行線の「三浦海岸駅」ができると、海水浴客はそちらにも分散し、車道に人があふれるようなことはなくなっていったという。

　

　現在の三浦海岸。夏には多くの海水浴客が訪れている

　
また、ほかの地元の方々にも伺うと、駅前には、東映の映画館やそば屋さんなどがあり、今よりも活気があったそうだ。
「逗子海岸駅」は現在の「新逗子駅」の南口から140メートルほどしか離れていない場所にあったが、それでもその場所に駅があるのは便利だったようである。

駅があった当時の様子などが分かったところで、廃駅になった時期と理由について。

2つの駅が統合となった！？

　

　左が「逗子海岸駅」で右が「京浜逗子駅」（逗子図書館資料より）

　
統合の理由は、「逗子海岸駅」と「京浜逗子駅」の間は、わずか400メートルしか離れていなかったことと、夏のレジャーのシーズン時の混雑緩和に、8両編成の車両が乗り入れられるよう全長154メートルのホームを延長したため、とのこと。

　

　1971（昭和46）年の地図。青丸が「逗子海岸駅」で赤丸が「京浜逗子駅」

　
統合によってできた「新逗子駅」は、北口が「京浜逗子駅」だった場所で、南口が「逗子海岸駅」があった場所から北側へ140メートルほどのところに新設された。

　

　「新逗子駅」の北口
　

　南口と違い、駅ビルになっている

北口近辺には逗子市役所や図書館などもあり、南口よりも栄えている。

　

　「新逗子駅」はまるで電車のように細長い駅
　

　8両編成の車両が乗り入れられるように延長されたホーム

取材を終えて

　

　南口からの景色はのどかな様子である

2つの駅が統合になることに対して、地元では特に反対の声はなかったとのこと。

「逗子海岸駅」は小さかったので「逗子海岸駅」寄りでは“駅が新しく大きくなると人の出入りが多くなり、周辺の商店は繁盛するのでは”と推測されていたようだが、実際は違い、当初、南口の駅前にできたスーパーはしばらくして閉店したそうだ。


―終わり―


参考文献
『京浜急行百年史』
『京浜急行八十年史』
『京浜急行100年の歩み』
『鎌倉・逗子・葉山今昔写真帖』
『京急電鉄　街と駅の1世紀』
『京急電鉄　明治・大正・昭和の歴史と沿線』
『逗子市史』
『逗子の三代史　明治大正昭和』