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観光名所なのに廃墟!? 廃道の先「三井用水取水口」とは?

ココがキニナル!

県道515号線沿いの「三井用水取水口」。横浜市の説明板も立ち近代水道百選にも選定されてるが、一般人にはハード&危険な「観光名所なのに廃墟」な場所。復活の見込みと現状のレポートを(栄区かまくらさん)

はまれぽ調査結果!

日本初の近代水道設備である「三井用水取水口」跡地は現在、廃道の土砂崩れによって辿り着くことができない。また、復活の見込みも立っていない。

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ライター:細野 誠治

むかし思えば、苫屋の煙。ちらりほらりと立てりしところ

 

城山ダムによってできた湖、津久井湖へ(Googleマップより)


豊富な水源地であり、神奈川の水瓶のひとつ。津久井湖

 
圏央道・相模原インターチェンジ降りてすぐ、またはJR・京王線「橋本」駅からバスが出ている。

湖の南岸側、国道413号線沿いに、ここが水源地だったことを偲ばせるものがある。

 

国道沿いに建つ津久井文化福祉会館

 
近代水道100周年にあたる1987(昭和62)年に、横浜市から贈られた噴水塔が置かれている。

 

高さ4.4メートル、重さ1.3トンの鋳鉄製

 
この噴水塔は、1887(明治20)年の水道完成を記念して旧横浜停車場(現在の桜木町駅)前広場に設置されたもののレプリカ(本物は横浜水道記念館にあり、港の見える丘公園にも同様のレプリカ噴水塔がある)。

この記念碑として鎮座している噴水塔(横浜水道記念館のもの)が、キニナルにも記述されている「近代水道百選」のひとつ。

 

噴水塔は水源の街・津久井と横浜市との友好の架け橋となっている

 
この近代水道百選は1985(昭和60)年、当時の厚生省が「歴史的価値の高い水道施設を後世に伝えるために選定」したもの。これから向かう「三井用水取水口」も百選に選ばれている。

津久井の噴水塔を起点にして、ここから取水口に向かおう。

国道413号線を西へ。10分ほどで「西メディカルセンター入口」信号で、道を右に折れる。緩やかな下り。湖面へと近づくような道筋を辿る。

 

山肌に沿うかたちで20分ほど進み、相模川水系の大沢川にかかる新境橋を渡る
 

案内図が見える。目指すのは左上、東光寺(とうこうじ)から西に伸びる道

 
勾配がさらに、きつく。ふっつりと人家が途絶え、吊り橋(名手橋<なでばし>)が現れる。

 

橋の長さは150メートルほど。高所恐怖症の人間は厳しいかもしれない


湖面までは30~40メートルくらい

 
吊り橋(名手橋)を渡ると津久井湖の北側に出る。途切れていた人家が再び現れ、行く手が上り坂に。
湖岸の北側に出て15分、県道515号線にぶつかる。目の前に東光寺という古刹がある。ここが最後の目印。

 

階段を上ると高野山真言宗・南海山「東光寺」がある


地図で確認。東光寺から左へ伸びる道筋が515号線の廃道になる
(Googleマップより)


廃道方面へ足を向けると、すぐに全面通行止めを示す看板


看板を過ぎると今度は機械式の遮断機。これ以上の立ち入りは法令違反になる

 
遮断機のさらに奥へと目を凝らすと、鉄パイプで作られた櫓(やぐら)があった。

地元の方に話を聞いてみよう。
東光寺の門前を掃き清めていた永田彰(ながた・あきら)さん。

 

83歳になられる永田さん。こちらに長くお住まいだそう

 
「三井用水取水口」について尋ねると「もう何年も通行止めのままだ」と。

東光寺から西に伸びる湖岸沿いの道(廃道・515号線)は地盤が大変に弱く、大雨や嵐がくる度に土砂崩れを起こし、通行ができなくなるそうだ。

「本当に脆い道だよ。週に二度も、土が崩れたこともあったし。道幅も、ひとりが通れるくらいだし」
また「昔は崩れる度に直してたんだけどね。やってもやっても崩れて、ついには止めて、通れないようにしたんだよ」とも。

 

2016(平成28)年に撮られたGoogle earth写真で確認

 
取り寄せた資料と永田さんの証言では、写真左に見える鉄塔の側が取水口で、横浜市が建てた記念碑があるという。
Google earthで見る限り、道が潰れて自然に還りかけている。

 

1937(昭和12)年、近代水道50周年に建立された記念碑
(提供:横浜市水道局)


通行止め区域の先にある「旧三井用水取入所沈澄池跡(近代水道百選)」
『横浜水道創設百周年記念写真集』発行:横浜市水道局より


129年前当時、水を汲むためのボイラーやポンプ装置があった
『横浜水道創設百周年記念写真集』発行:横浜市水道局


津久井湖の湖底に沈んだ用水取入所跡。
『横浜水道創設百周年記念写真集』発行:横浜市水道局

 
取水口の方角に目を凝らす。ここから10分ほどの場所だという。木々に覆われて見ることはかなわない。

今度は南東の方角、横浜・野毛の方を見やる。

 

44km彼方に野毛山。何とも遠い

 
日本で初めての近代水道施設、水の遺跡たる「三井用水取水口」は、辿り着くことができない。
(立ち入りは非常に危険で、法令違反にあたり罰せられる)
また跡地の設備などは津久井湖の湖底にあるため、見ることができないのだ。

疑問を追って市を跨いで訪れたものの、近づくことすらままならず、虚しさが漂う。


取材を終えて


 


創設当時の三井取入口
『近代水道創設 ~横浜水道の歩み~』発行:横浜市水道局

 
日本で最初の取水地(取入口)だった三井。
しかし完成から10年後の1897(明治30)年、津久井湖の対岸側・道志川に新たに作られた青山沈澱池の完成によって取水口が変更され、表舞台から姿を消してしまう。

やがて先人たちの事業が讃えられ、記念碑が建った。
跡地は朽ちて、湖底に沈んだ。そして現在、忘れられかけている。

それでも、いつか。
災害に負けないインフラが完成し、近代水道の始まりを顧みる年月のころ。野毛山や三井に光が当たり、また会えるのではないでしょうか。

その時まで。水道遺構は眠りにつきます。
 


港の見える丘公園にある記念の噴水塔。今はたくさんの水がある

 
横浜に港ができて、船と大勢の人がやってきました。今この港には、綺麗な水がたくさんあります。
 


『横濱税関岸壁船舶給水之景』(大正期に撮られた船舶への給水の様子)
『横濱市水道拡張記念写真集』発行:横浜市水道局

 
『今は百舟百千舟。泊るところぞ見よや。果なく栄えて、行くらん御代を。飾る宝も、入り来る港』

水道を通した、先人に感謝。

―終わり―
 

参考資料
『横濱市水道拡張記念写真集』発行:横濱市水道局(非売品)
『横浜水道創設百周年記念写真集』発行:横浜市水道局(非売品)
『横浜水道関係資料集 ~一八六二~九七~』発行:横浜開港資料館
『近代水道創設 ~横浜水道の歩み~』発行:横浜市水道局
『横浜水道工事報告書 YOKOHAMA WATERWORKS REPORTS』発行:横浜市水道局

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  • ちなみにこの道、道路を管理する相模原市的には(書類上)現役の県道みたいです。相模原市のwebサイトに「異常気象時の通行規制区間」というpdfが公開されているのですが、不通区間も「県道515号の」規制区間に含まれている(=不通区間も県道として指定されている)ようなのです。 ……まあ、書類上現役だからといって実際通れる訳がないのですが、書類と実態の乖離っぷりがなんとも興味深いです。

  • 約10年前の時点での県道515号線不通区間を踏破した方のレポートがありました( http://yamaiga.com/road/kpr515/ )が……これは下手に復旧させない方が良さそうですね。道は狭すぎだし、カーブはきつすぎるし……。おそらく、今はもっとひどい状況でしょう。頑張っても遊歩道までが関の山に思えます。

  • 興味深い内容でした。神奈川県道515号三井相模湖線は荒れ果てていて、廃道とされているのが残念ですね・・・Wikipediaやウェブサイトで色々情報が出てはいますが。

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