東横線廃線跡に現れた謎の「R16」!これは一体なに?
ココがキニナル!
高島町付近の旧東横線の高架下の壁に「R16」と書かれた壁が出現。物置?アトリエ?一体何をやっているの?(とぽ1870さん/砂芋さん/ダミさん)
はまれぽ調査結果!
謎の「R16」は期間限定のアートスタジオだった。2018(平成30)年8月に設けられ、現在16ブロックの空間で23名ほどのアーティストが制作活動を行っている。
ライター:おとも尚美
「R16」はオープンスタジオやワークショップも開催!
当初は4月に始動する予定だった「R16」。だが、手続きや荷物の移動などに時間がかかり、実際に幕を開けたのは8月になった。
8月のレセプションにはたくさんの人が集まった
入居アーティスト達が紹介された
「まずはやってみよう」でスタートした「R16」には、約7ヶ月の期間内に、制作活動以外にも一般の方へのオープンスタジオやワークショップを展開していくという目標があった。
その目標が現実となり、11月16日から3日間に渡る初のオープンスタジオが開催された。
オープニングパーティー時の受付の様子(BankART1929)
かなりの盛況ぶり(BankART1929)
普段は制作活動に集中しているアーティスト達が迎えてくれるオープンスタジオには、地域の方やアート好きな一般の方など、3日間で1000人以上が訪れたというから凄い!
アーティストが創った空間でのおもてなし(提供:BankART1929)
「こんなに人が集まるなら1年で終わるのはもったいない・・・」
そう思ったライター・おともは「R16」の今後について聞いてみた。
「ひょっとしたら続くかもしれないけれど、まずは、オーソライズ(公認)されないと。幸いなことに地域の方からも色々な要請が出ているので、それを1つずつ丁寧にやっていく。それが武器にといえばいやらしいけど(笑)横浜市に対して『こんな事もやってるよ!人気もあるよ!どうだ!』という感じで攻めて、最低限、場所を提供してもらえる方向性にいけるといいなーと。一番いいのは予算化してくれることなんですけど(笑)」 と、池田さん。
期間内に、あと2~3回はオープンスタジオを開催する予定だ。
「R16」で活動中のアーティストたち
美術系が好きな人が真っ先にキニナルのが、どんなアーティストが作品を創っているのかということ。
アーティストの選考基準について池田さんに伺うと「何もないよ」と、笑われた。
・・・何もないのか(笑)
いや、そんな訳はない!おとももアーティストと名乗りさえすれば入居できるのか?困惑していると
「もちろん、その辺のお絵かきレベルの人を選んでも仕方がないし、借りても来なそうな不真面目な人もダメでしょう。今回は公募したり、こちらから声を掛けたりしましたよ。選んだ基準は、あの環境に耐えられそうで、ある程度の実績もある真面目な人。要は、公的な活動をしていて、一定の力がある人かな」池田さん。
公募には数十組のアーティストから応募があり、待機している人もいるらしい。
アーティストが待機?どういうことだろう?
お話によると、「R16」の入居者は、なんらかの場で発表する作品を制作しているので、作品が完成したら退居してしまう。そして、空いたブロックに新しいアーティストが入居する。ちなみに、現地取材時にR16ブロックで制作活動をしていたアーティストがいたが、5日後にはもう退居していた。
「音のかけら」という作品。公園に置くベンチのようなものらしい
退居した劉功眞(りゅう・こうしん)さんは大工さん
入れ替わりが激しそうなアーティスト達だが、オープンスタジオ日、幸いにも8月当初から入居しているアーティストにお話を伺うことができた。
まずはR3ブロックに入居している写真家の古賀通代(こが・みちよ)さん。
元国際線の客室乗務員だったという古賀さん
「写場(しゃば)」と名の付けられたスタジオでは、彼女を含め5名の写真家が活動しているが、なんと見知らぬ者同士だという。選考の際「シェアさせてほしい」という依頼を許可した写真家が集まっているのだという。
「一人ずつやりたい事をやりながら、他の人の感化も受けられるし、何より自然を感じながら、通行人に話しかけられたり、覗かれたりする経験はここでしか出来ないのでとても刺激を受けています」と、話す古賀さん。
不便なことはないか伺うと「トイレ!トイレは高島警察の隣まで行かないとならないので、飲み物を制限しています」と笑った。
古賀さんは53ヶ国で子どもたちの写真を撮り続け、現在は本牧神社の「お馬流し」の記録班も務めている。
古賀さんのポートレート
R3「写場」のスタジオ内(提供:BankART1929)
そして、R9ブロックで活動を続ける渡辺篤(わたなべ・あつし)さん。渡辺さんは、日本だけでも150万人はいるといわれている「ひきこもり」といわれる人たちにインターネットで呼びかけ、生活している部屋の様子を募集する企画「アイムヒア プロジェクト」を実地中。写真の横穴の奥には、本来見ることが出来ない貴重な写真が14枚展示されている。
30代の頃の3年間、自身もひきこもりだったという渡辺さん
引きこもり当時は家族と顔を合わす事も難しかったという渡辺さん。そんな彼の呼びかけに対して集まった写真は140枚ほど。提供してくれた人たちには「写真家」としての支払いをしているという。「声なき声」を直視し、その空間を認めることの重要性について語ってくれた渡辺さんは、心の傷を持った人たちと協働するプロジェクトを多数実施しながら、社会問題解決への直接性をアートを通して追求している。
渡辺さんの作品。「作品に至るまでの経緯に意味がある」と話す
16ブロックのスタジオは、今後はいつどんなアーティストが入居し、どんな使われ方をするのかは今後の状況次第だそう。
どうなる?「R16」!
高架下には電気はない。近隣の会社から借りる1500ワットと2基の大きなジェネレーターのみだ。トイレもなければ水道もなく、雨を凌ぐのがやっとの「R16」。そういう過酷な環境のため、アーティストからの家賃は貰っていない。
これについて池田さんは「今回は家賃はタダ。本来ならこっちがやらなければならない整備を、入居者にやってもらっているし、期間も短いですからね」という。
風は凌げてなさそうだ
継続することになれば、トイレ、床や壁などをしっかり作り、市の補助金と家賃で工事費を回収できる見込みらしい。「そこまでいくには、もうちょっと時間がかかるかな」と、池田さんは笑った。
全く知らない者同士が入居している「R16」だが、皆で掃除や受付の順番を決め、会議などもしているそう。現在のところ「R16」を象徴する作品展示予定はないが、近い将来、入居アーティストの合作を観ることができるかもしれない。
入居アーティストの作品
取材を終えて
廃線高架下にいきなり現れた「R16」の文字。探ってみたら、市の政策との折り合いを見ながら、アーティストが活動するスタジオだった。
半ば見捨てられたような場所から生まれる作品は、呼吸をしているかのように生き生きとしている。過酷な環境にも負けないエネルギーで制作を続けるアーティスト達の作品を生みだす「R16」。「あんな場所なのにみんな楽しそうにやっていますよ」という池田さんの言葉を聞いて、無責任ながら「もし続けることになっても『R16』はあのままがいいのかもしれないな」なんて思ってしまった。
―終わりー
取材協力・画像提供
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能鉄拳台さん
2018年12月18日 12時01分
自分を表現できる場所が欲しいアーティストと、あの場所を放置して批判されたくない横浜市の利害関係が、このスポットを誕生させたのかな?と思った。
brainbusterさん
2018年12月17日 16時38分
黄金町のガード下もアートギャラリーですよね・・困った場所はアートにしとけば批判されないってことですかね・・・