横浜の山奥にある思金(おもいかね)神社の種類豊富な御朱印を調査!
ココがキニナル!
栄区上郷町に、思金神社というものがあります。富士山がよく見え、御朱印の数も多い神社だそうです。取材出来たらお願いします(ヨリアキさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
思金神社の御朱印は日常の教えを説いてくれる言霊の宿る御朱印だった。境内の展望台からは、晴れた日は富士山が一望できる。またお話が面白い宮司さんからも元気をいただける神社だ
ライター:はまれぽ編集部
いったい何個ある? 種類豊富な御朱印
御朱印についての話を伺うため、社務所を訪問。社務所では御朱印やお守りの販売を行っている。
社務所の一角が売店の窓口になっている
「厄除け」「安産」「学業」「ペット」「金運」
「縁結び」「ひらめき守り」・・・お守りの種類も多い
そして売店には御朱印の見本が置かれていた。確かに種類豊富だ。そして筆者が少し気になったのは御朱印のお値段。今どきの御朱印は500円程度納めるといただくことができるが、「思金神社」の御朱印は少々高め。
見本だけで10種類の御朱印(700円)
なぜこの価格設定になったのかということも含め、御朱印について話を伺うべく「思金神社」の宮司である平野正兼(ひらの・まさかね)さんを尋ねた。
宮司の平野さん
アットホームに出迎えていただき、早速御朱印の話を伺うつもりだった筆者だが、出鼻をくじかれた。「私、いくつに見えますか?」と逆に質問をされ、それから先は平野さんのマシンガントークが繰り広げられたのだ。
いったい何の取材に訪れたのか、御朱印について聞く間もなく、日本の神様について詳しく話してくれた平野さん。1時間も経ち、いつしか「うんうん」と聞き入ってしまっていた筆者である。
そうこうしているうちに御朱印を求める方が現れ、ようやく本題に入るわけだが、依頼を受けた御朱印は売店で見たものとは違っていた。
3ページを使って大きく押印される御朱印
集中し押印される御朱印を静かに見守りシャッターを切った。見事な判と滑らかに動く筆は、いつしかカメラを下ろして見入ってしまう美しさだ。
日本では珍しい「八福神」の御朱印
完成した御朱印
売店で見かけた御朱印にはなかったと思い、いったい何種類の御朱印があるのかと尋ねると見本を見せてくれた。
綺麗に彫られた判で10種類。ここまでは売店で見かけた御朱印。
この他にもまだ数種類の御朱印があり、2ページ以上にわたって押印されるものだ。
先ほどの「八福神」の御朱印
鬼のデザインの御朱印
毎月1日と15日に拝受できるというこちらの御朱印は筆者1番のおすすめ。中央には鬼の判が押され、押印した時に髪の毛や髭などを書き加える、世界で1つだけの御朱印になる。書かれている文の「春夏冬」は“秋ない(商い・飽きない)”、「二升五合」は「二升」で“升升=ますます”、「五合」で“半升=繁盛”という意味を表しており、商売繁盛の御朱印だ。
思金神と妻の下照姫が押印されている
こちらの御朱印も興味深い。「思金神社」の神様である思金神(おもいかねのかみ)は日本神話に登場する知恵の神様。その妻である下照姫(したてるひめ)が逆プロポーズする際に詠った詩が書かれている。この詩は“まわり詩”といい、上から読んでも下から読んでも同じように読める。恋愛成就の御朱印だ。
“日本一知恵の授かる神”の御朱印らしい
天照大御神(あまてらすおおみかみ/日本の主神)が描かれたものも
全部で15種類。デザインは全て平野さんの奥様が考えたそうだ。
この判や文のデザインにプラスして書かれる文章は「思金神社」のホームページに掲載されている『かむらながら道標』から抜粋されており、これは平野さんのお母さまの時から続くものだ。
「かむらながら道標」の冊子
「『かむらながら道標』は、私が考えたのではありません。これは神様が与えてくださった言葉です」と話す平野さん。もう少し詳しく聞いてみると「これは日常に対する“教え”なんです。神様が与えてくださる“教え”です」と教えてくれた。
「御朱印というのは、ただ参拝をした証ではないんですね。こういった神様の“教え”を御朱印に記すことで、落ち込んでいる時や疲れている時に改めて見て元気を出してほしいと思っています。最近は御朱印ブームでお金儲けのために印刷した御朱印を販売している神社もありますが、思金神社ではその時にお伝えしたい“教え”を選び、1つ1つの御朱印に“言霊”を込めています」
1つ1つ丁寧に“気持ち”と“言霊”を込め押印される
なるほど、書く文章は日常での支えになる“教え”ということだ。
現在『かむらながら道標』には168もの“教え”があり、これからも増え続けることを考えると「思金神社」の御朱印は数百種類ということになる。
何度参拝に訪れても毎回違う御朱印を購入できるということで、やはりリピーターもいるそうだ。
また、以前ポルトガルからの留学生が「思金神社」の御朱印を求めにきたことがあるそう。その留学生は「母国で日本の素晴らしい言葉の文化を広めたい」と言ったそうで、「思金神社」の御朱印は日々の支えになる“教え”を押印していることを説明すると、感銘を受けたそうだ。
国を超えて伝わる“教え”が書かれる御朱印
この“教え”を書く御朱印になるまでは3年ほどの試行錯誤があったそうで、その前は四字熟語などを書いていた。
やはり支えになるような言葉ばかり選ばれている(クリックして拡大)
美しいデザインの判について聞いてみると「妻がデザインし、作っていただいている判子屋さんが色々提案してくださってこのような判で押印することができています。ただ、1つ15万円くらいしてね、今までの合計金額は300万円くらいかな(笑)」とお茶目に驚く事実を教えてくれた。
細部までしっかり作りこまれている
奥様が考えたデザインを形にするのはやはり大変な作業のようだ。制作費用が少々かかっていることもあり、他の神社より高い御朱印の価格設定も納得。こうもたくさんの種類の御朱印があると何度も訪れる参拝者がいるのも分かる気がする。そして来年にはまた新たなデザインの御朱印を発表するというから、これにも驚くばかりである。
取材を終えて
とにかく明るくお話が面白い宮司の平野さんだったが、最後の最後にも筆者が笑顔になったほっこりしたエピソードがこちら。
ペットの絵馬掛けの屋根についているこの黒い物体
「これね、ちゃんぽんとかに入ってる美味しいあれだよあれ」という平野さん。そう、自生している木耳(きくらげ)だ。「これ採って食べるんだけど、美味しいんだよ」と別れ際には平野さんとすっかり仲良くなってしまっていた。
ちなみに行きの道で見つけた洞穴について尋ねてみると、かつての防空壕だと教えてくれた。入れるようになってしまっているが、危険なのでこれを読んでいる読者は絶対に入らないようにしていただきたい。
「思金神社」は三が日だと参拝するのに1時間ほど並ぶため、初詣をするならその後に訪れるといいそうだ。また、節分の2月2日に“豆以外も投げる”イベントを開催する予定で、なんでも野菜から日用雑貨まで幅広いプレゼントを投げ福を呼び込むそうだ。
ありがたいお話や平野さんの元気みなぎる面白い話を聞くことができ、疲れなどない前向きな気持ちで眩い夕日の光を浴びながら帰路についた。
ー終わりー
取材協力
思金神社
https://omoikane.jimdofree.com/