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子安通り1丁目児童公園に佇む八重地蔵。その背景にある悲しき出来事とは?

ココがキニナル!

子安通り1丁目児童公園という、道路にそって作られた公園があります。そこに祀られたお地蔵さんの名前は八重地蔵・・悲しい出来事があったそうですが、風化させぬよう、取材をお願いいたします。(三浦虎次郎さん)

はまれぽ調査結果!

八重地蔵は近所に住む岡澤八重ちゃんが事故で亡くなったことをきっかけに建立されたもの。かたわらに説明板も設置されている。

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ライター:松崎 辰彦

“運転手を殺せ”──現場は混乱した



「あの日、八重は婆さん(母親)の買ってくれたサンダルを履こうと、家に引き返して、そしてトラックにひかれたんだ。サンダルを買ってやらなければ、こんなことにならなかった」
八重ちゃんの兄、岡澤三喜男(みきお)さんは回想する。
 


岡澤三喜男さん


八重ちゃんは漁師の岡澤金次郎さんと妻の節(せつ)さんの娘で、五男三女の末っ子。八番目の子だから八重と名づけられた。
 


母親・節さんと 1963(昭和38)年2月27日 湯河原で


長男は生まれて1歳か2歳で亡くなった。次男が三喜男さん。三男は八重ちゃんの事故よりさらに11年前、自宅前の荷揚げ場から運河に落ちて亡くなっていた。享年2歳。
三喜男さんは父の跡を継いで漁師。八重ちゃんも住んでいた家に、いまもなお住み続けている。
 


八重ちゃんの思い出を語る


「この家は建ててから80年たったが、東日本大震災でも中のものが倒れなかった。すごい家だ」
そういって笑う。

「この辺から浦島町まで、漁師の町だ。当時は子どもが遊ぶところなんてなくて、道路ばたでベーゴマやったりメンコやったりするしかなかった」
子安は江戸時代から漁業の町であり、現在でもアナゴやスズキ、マコガレイなどの魚を獲っている。八重ちゃんの悲劇はそうした漁師町で起きたことだった。
 


子安は漁師の町である


「八重が事故に遭ったとき、漁師がみんな集まり、『運転手を殺せ!』と大騒ぎになった。でもそのとき、運転手は警察の車の中だった」

気性の激しい漁師たちがその日のうちに警察や役場に駆け込み、事態を重く見た行政も道路の一部を子どもの遊び場とする措置をとったことが想像されるが、そのあたりの展開を当時中学校を出て漁師になったばかりだった三喜男さんは、はっきりとは覚えていない。

鉄屑に関しては「道路の半分を占めていた。何しろスクラップがすごかった。近所の廃品回収業者が置いていたんだ」と回想する。警察も時々きていたが、あまり真剣に指導しているようには見えなかったという。



八重ちゃんは遊び場を残した



八重ちゃんがトラックにひかれたとき、節さんが道路に横たわった八重ちゃんの体に覆いかぶさったことを、三喜男さんは覚えている。
昨年、弟の一人が亡くなった。現在、存命なのは兄弟2人、姉妹2人である。
 


八重ちゃん 兄弟と


八重ちゃんに関して、
「あんなにちっこかったけど、自分が犠牲になって児童公園を残した」という。運転手を恨んだりもしたが、八重ちゃんが亡くなったことについては「寿命だよ、こればかりはしょうがない、それしかない」と多くを語らない。
 


潮干狩りにて


八重ちゃんは生きていれば50代半ば。どんな女性に、母親になっていただろう。
 


お舟に乗って


八重地蔵は今日も元気な子どもたちを迎えている。穏やかな表情の中に、何よりも幼子の幸せを願い、祈り続けているかに見える。現世に生きる私たちに、八重ちゃんは、命の尊さというかけがえのない教訓を残していってくれたのだと思いたい。
 


八重地蔵 幼子の幸せを祈って




取材を終えて



岡澤家は漁師の一家である。八重ちゃんは横浜の歴史ある漁師町の子として生まれ、短い生涯を終えた。

幼子の不慮の事故死ほど、切なく、悲しく、憤りを覚えるものはない。八重ちゃんの事故直後、漁師たちは逆上し混乱した。しかし八重ちゃんをひいたトラックの23歳の運転手にしてもなんら悪意があったわけではなく、一瞬の不注意が招いた悲劇だった。

全国各地に、“八重地蔵”はおそらく数多(あまた)あることだろう。
地域の子どもたちの安全を見守り、その健やかな成長を祈っているのだろう。

地蔵は静かに合掌している。八重ちゃんの魂はどこにあるか。一足先に天国にいったお兄ちゃんたちと一緒に、いるのだろうか。
 


八重ちゃん やすらかに




―終わり―


※新聞記事ならびに地蔵のかたわらの説明板には八重ちゃんの名前が「岡沢八重子」と表記されていますが、本稿では三喜男さんが正しい名前という「岡澤八重」に統一しました。
※岡澤八重ちゃんの写真、ならびに建立当時の八重地蔵の写真は岡澤三喜男さんよりご提供いただきました。
 

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  • はまれぽ愛読者として。いろいろ多岐にわたる話題を提供していただき、日々楽しみにしています。ためになるもの、感心するもの、心温まるもの、考えさせられるもの、面白いこと、くだらないこと、つまらないこと…。数多ある話題において、読者感想を「面白かった」「面白くなかった」で振り分けるのはどうなんだろう?と、前々から感じていました。今の社会、どんな情報(良いことも悪いことも)でも、知識となり肥やしになります。より良いサイトに発展することを願います。

  • 交通事故には加害者がいない。ひいた人もひかれた人も被害者。日々車を運転する私にとっては注意して運転することを心がける事だけ。そして、できれば小さな子を連れた親御さんには道路上では決して子供の手を離さないでほしいと願うばかりである。

  • 5歳の息子がいます。カワイイさかりに、こんな悲劇で人生が終わってしまうなんて、悲しくて悲しくて心が痛みます。

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