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破産した中区の伊勢山皇大神宮が三重県の伊勢神宮からまるごと社殿をもらうって本当? 「キティ守」のご利益は?

ココがキニナル!

破産した伊勢山皇大神宮が伊勢神宮から古い社殿をもらい受け再建。なぜ実現し、どう再建する?/伊勢山皇太神宮の「キティ守」のご利益や作られた経緯は?ほかの神社にもある?(miyukidさん、タッカーさん)

はまれぽ調査結果!

宮司の「横浜市民のため社殿が欲しい」との想いを受け、伊勢神宮が社殿の譲渡を決定。キティ守は伊勢山皇大神宮限定で、健康祈願のご利益がある

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ライター:藤井 涼子

「神社が破産」って、どういうこと!?



「神社が破産した」という大ニュースが報道されたのは、今から12年前の2003(平成15)年。いったい何が起きたのか、破産とはどういうことなのか。

そもそも伊勢山皇大神宮(いせやまこうたいじんぐう)とは、どんな神社なのだろうか。破産の詳細を確認する前に、まずは、伊勢山皇大神宮の歴史から調べてみた。
 


表紙には「横浜総鎮守 伊勢山皇大神宮」とある
 

『参拝のしおり』を抜粋して要約すると明治維新後、港町横浜には、たくさんの外国文化が流れ込み、大きな変化の時を迎える。そんな時に、横浜に住む日本人の心の拠りどころとなるような、守り神が欲しい、ということで1871(明治4)年に「関東のお伊勢さま」として親しまれている伊勢山皇大神宮が完成した、ということのようだ。
 


現在の伊勢山皇大神宮からは、横浜のシンボル・ランドマークタワーが見える
 

しおりには「横浜の総鎮守(そうちんじゅ)とされている」と書いてある。伊勢山皇大神宮には、横浜のまちや人を見守っている神様がまつられているということなのだ。

しかし、創建から132年後の2003(平成15)年に破産宣告となる。神社が破産するというのは、日本で初めての出来事だった。

破産の原因は、当時の宮司とその親族が、境内の一部を担保にしてホテル事業に乗り出したことにある。
 


現在の伊勢山皇大神宮の裏参道入り口
 

1991(平成3)年、神宮の裏参道隣接地に婚礼施設を兼ねた高級ホテル「横浜開洋亭」を建設した。しかし、バブル崩壊の景気低迷、横浜みなとみらい地区のホテル建設ラッシュと重なり集客競争が激化。また神前結婚式の減少なども影響し、経営は低迷する。

結局、借入金の返済ができなくなり2001(平成13)年3月、抵当権が設定されていた境内地の一部が金融機関より差し押さえられる。

2002(平成14)年、事態を重くみた神奈川県神社庁は銀行側との協議の上、同庁がホテル敷地部分を除く境内地を取得、神宮の運営を直轄することで競売を回避。その後、 ホテルを経営していた当時の宮司と親族が持つ宗教法人は、横浜地方裁判所に自己破産を申請、2003(平成15)年4月7日に破産宣告を受けた。負債額は約85億円だった。
現在は新しい宮司が就き、運営体制が変わっている。



三重県にある伊勢神宮から社殿をもらうって!?



伊勢山皇大神宮の歴史を勉強したところで、今回のキニナル「伊勢神宮から古い社殿を譲り受ける」と「キティ守について」を調べに、桜木町にある伊勢山皇大神宮へ向かった。
 


JR桜木町駅北改札から出ると右へ行って・・・
 

紅葉坂の信号を左に曲がる。あとはひたすら坂道を上って・・・
 

坂道を上って、上って・・・
 

「さすが横浜だな」と思いながら、汗をかきつつ坂道を上っていくと、伊勢山皇大神宮に到着。
 


周りには住宅があり、坂の途中に突如現れる伊勢山皇大神宮
 

名前は知ってたけど、初めて来ました
 

まずは「伊勢神宮の社殿を譲り受ける」というキニナルについてお話を伺った。どういう経緯で、伊勢神宮の社殿が伊勢山皇大神宮に来ることになったのか?
 


お話を伺ったのは宮司の池田正宏(いけだ・まさひろ)さん
 

池田さんは「最初は社殿をまるごと欲しいって言ったんですよ」と笑う。

伊勢神宮から部材を譲り受けることを「下げ渡し」というそうだ。もともと伊勢神宮は「式年遷宮」と呼ばれる儀式があり「20年に一度建て替える」という決まりがあるそう。20年しか使われていない社殿の部材は、周りを少し削れば、まだ十分に使えるものだという。

伊勢神宮の社殿の部材には、漆が塗られていない。漆を塗ると、防腐性や防水性に優れ長持ちする、というメリットがあるそうだが、伊勢神宮は20年しか使用しない前提で建設されるので、漆は必要ない。そのため、表面を削って、そのまま使用できるのだそう。
 


「欲しい人いますか?」(写真は伊勢神宮神楽殿。フリー画像より)
 

伊勢神宮は建て替える時期に、全国の神社に「部材が欲しい場合は連絡してください」というような書類を送るそう。そこで、希望があれば書類に記入して返送する、という流れだそうだ。

そこで、宮司の池田さんは、伊勢山皇大神宮の創建150周年の節目に、ぜひ由緒ある社殿を伊勢山皇大神宮に迎え入れたい、という思いで「社殿をまるごと全部ください」と連絡した。しかし、はじめは「無理です」という返事だったそう。
 


そりゃあ、そうですよね・・・(フリー画像より)
 

今までは「部材」として、伊勢神宮の一部をもらう、ということが定説で「社殿まるごと」というのは滅多になかったそうだ。加えて、現在は東日本大震災で破損した神社が多くある東北地方に優先的に下げ渡しを行う、という理由もあったそうだ。

なぜ「社殿まるごと」なのか? という質問に対しては「伊勢山皇大神宮が、横浜の人の誇りとなって欲しい、という思いから」と池田さん。伊勢山皇大神宮がまつっている神様は「天照大御神(あまてらすおおみかみ)」であり、伊勢神宮の内宮と同じだ。伊勢神宮にゆかりが深いのだ。
 


伊勢山皇大神宮の本殿がまるごと入れ替わる
 

伊勢神宮は、言わずと知れた全国の神社の総親神(そうおやがみ)。神社の本宗(ほんそう)だ。

現在、伊勢神宮の社殿をそのまま譲り受けている神社は名古屋市にある熱田神宮(あつたじんぐう)。「名古屋の人々は、そのことをとても誇りに思っている。横浜市民にも、その誇りをください」と池田さんは伊勢神宮に伝えたそうだ。
 


熱田神宮も伊勢神宮の社殿を譲り受けている(フリー画像より)
 

伊勢山皇大神宮による熱心な交渉の結果、2014(平成26)年11月、伊勢神宮から社殿を丸ごともらえることが決定した。

そして、現在の伊勢山皇大神宮の社殿は、震災の被害を受けた宮城県石巻市にある鹿島御児神社(かしまみこじんじゃ)で再建されることが決まっている。