「ホタルの里」から廃墟群となった横須賀市田浦町の今は?
ココがキニナル!
横須賀市田浦町は、10年ほど前に「ホタルの里」として町おこしをしていたと記憶しています。今はホタルはいるのでしょうか。どうなったのか現状を教えてください。(619のキニナル)
はまれぽ調査結果!
横須賀市田浦町のホタルの里は一部現在も行われているが、高齢化のため継続が難しい地域もある。谷戸の廃墟は過疎化や開発の立ち退きによってできた
ライター:小方 サダオ
横須賀市田浦町にあるホタルの里
投稿によると、横須賀市田浦町はホタルによる町おこしをしていた、という。ホタルは人里離れた自然のなかにいるイメージだが、いったいどんな計画だったのだろうか。
また、その計画は10年ほど前、とのことなので、今も継続されているのかどうかキニナル。
田浦町4・5丁目のホタルの里の看板
インターネットで横須賀市のホタルの里を調べると「田浦ホタルの里づくり事業」が見つかった。
「田浦ホタルの里づくり事業」に関して、横須賀市のウェブサイトで調べると「横須賀市田浦地域内のホタルが生息する一帯を、『ホタルの里』として維持・発展させるとともに、自然に恵まれた地域環境の保全を図る市民協働事業(2002〈平成14〉年度~2004〈平成16〉年度に実施)として、この事業が行われている」という。
「また田浦大作(おおさく)町、田浦泉町、田浦町4丁目、長浦町3丁目のホタルの里づくりに取り組んでいる団体の関係者で連絡協議会を作り、情報交換やホタル観察会などのイベントを行う」とある。
「ホタルの里づくり事業」に取り組む4つの地域。赤く囲まれた地区は長浦町(Googlemapより)※クリックして拡大
4つの街を結んで大々的にホタルの里づくりが行われていたようだが、なぜこの活動が行われなくなったのだろうか?
まずは現場に向かうことにした。
自治会長に話を伺う
田浦町4・5丁目の自治会長の横山公一(よこやま・まさかず)さんにお会いし、話を伺った。
横山さん(中央)とホタルの里を整備するメンバー
最初にホタルの里に関して伺うと「この地域の人たちは、以前は自然のままでホタルを観賞していました。しかし観賞者が増えてきたため、2003(平成15)年に事故防止のために、看板や橋を架けるなど環境を整備することにしました。4つの地域でホタルの里づくりに個々で取り組みはじめ、そこに市が支援してくれるようになったのです。同自治会では現在でも活動を続けています」
田浦大作町にあるホタルの里関連の看板
「田浦町4・5丁目のホタルの里の土地は不動産会社のものですが、ほかの地域の場合は横須賀市の土地です。そのため、市から補助金が出る(田浦行政センターの担当者によると「現在は出ない」とのこと)のですが、今は田浦町4・5丁目以外では行われていません。大作町の自治体の人によると『高齢などの理由で整備する意欲がなくなってしまった』とのことです」
田浦町4・5丁目自治会館にある貼り紙
「田浦町では、自主的に協力してくれる人たちを募っています。『子どもたちのためにホタルの里を残したい』と思う、近くの新興住宅地の親御さんたちの熱意があり、協力的なので助かっています」と答えてくれた。
看板に書かれたホタルに関する解説
田浦町4・5丁目のホタルの里付近を流れる川
ホタルに関して伺うと「主に見られるのはゲンジボタルです。田浦町4・5丁目では自然のままの川のため、ホタルのエサのカワニナが自然に生息しホタルがたくさん出ます。しかしほかの川は、コンクリートで整備しているものが多く、自然生息しません」
ゲンジボタルが生息している
田浦町4・5丁目とは違い、田浦大作町の護岸された川
「田浦町では年に2回草刈りを行うなどの整備を行っています。以前は住人がいたためホタルの生息地が明るかったのですが、廃屋が増えたことにより、暗くなりホタルが見やすくなりました」と答えてくれた。
ホタルの生息地に廃屋が増えたため、観賞しやすくなったという
田浦町4・5丁目のホタルの里の土地に関して伺うと「この街のホタルの里は、ある開発業者が所有している土地です。12~13年前に業者による買収で60戸が立ち退きました。更地にすると税金がかかるため、廃墟のまま放置されているのです。開発計画が具体化すると、この事業は終わってしまいますが、私たちとしては成り行き任せで静観しています」という。
谷戸(やと)の自然を味わえる田浦町
周辺地域の歴史と谷戸に建てられた家屋に関しては「海のほうは、波が静かで造船所の地形に向いており、埋め立てられ造船所が作られました。そのため残った場所の山のほうに人が住むようになったのでしょう」とのことだった。
横山さんにお別れをし、それぞれの街のホタルの里と谷戸の現状を確認するため、4つの街を順に訪れることにした。