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たたりを恐れられているらしい「泣塔」ってまだあるの?

ココがキニナル!

鎌倉に「泣き塔」といってたたりを恐れられているお墓(?)があると聞いたことがあるのですが、鎌倉在住の友達に聞いても見たことがないと言われました。まだあるんでしょうか。(uricoさんのキニナル)

はまれぽ調査結果!

「泣塔」は鎌倉市深沢の深沢多目的スポーツ広場の中にある。1356年に造られた供養塔で、たたり等の噂話もあるが恐れられている印象は無い。

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ライター:橘 アリー

「泣塔」とはどのようなものなのか?



対応してくださったのは鎌倉市役所文化財課の玉林さん。
 


玉林さん


「泣塔」とは、いつ頃に造られたどのようなものなのでしょうか?
1356(文和5)年に造られた宝篋印塔(ほうきょいんとう)というものです。安山岩でできていて高さは203cmあります。宝篋印塔とは、墓や供養塔などに使われる仏教建築物の一つです。
 


宝篋印塔の解説図/「泣塔」案内の資料より(旧・日本国有鉄道発行)
 

解説図にあるように、「泣塔」は宝篋印塔の形をしている


誰かのお墓なのでしょうか?
「泣塔」に刻まれている銘文からすると供養塔と言えるでしょうか。
銘文は、“願主行浄」預造立」石塔婆」各々檀那」現世安穏」後生善処」文和五年申丙」二月廿日」供養了”と刻まれていて、これは、“塔は、願主(塔を建てようと思った人)の行浄(人の名前)が、各々檀那(塔を建てるのに力をかしてくれた人たちのこと)たちの現生での安穏、後生(来世)での善処を願って文和五年二月二十日に建てて供養した、という意味のものです。

「泣塔」の横にある洞窟のようなものは何でしょうか? 中にあるものは?
中国の石窟を真似て作られた「やぐら」というものです。
 


中央の洞窟のようなものが「やぐら」である


「やぐら」は仏様のお骨を納める納骨窟でもあり、供養堂のようなものです。「やぐら」の中にあるものは、五輪塔と呼ばれるもので、宝篋印塔と同じように、墓や供養塔などに使われる仏教建築物の一つです。

インターネットで調べたところ、洲崎の合戦の供養塔と言われているようですが。
「泣塔」のある地域が洲崎の合戦跡地だと言うことと、「泣塔」が1333(元弘3)年の洲崎の合戦から数えて23回忌の年に建てられているので、合戦での戦死者の霊を供養するために建てられたのではないか、と考えられているようです。しかし、それを証明する資料は無いのであくまでも推測です。
なお、「泣塔」と同じように、「富士塚小学校入り口」交差点の近くに、「洲崎古合戦の碑」が建てられています。
 


1956(昭和31)年に鎌倉友青会によって建てられた「洲崎古戦場の碑」


昔、塔が他の場所へ移された時に元の場所に戻りたいとすすり泣いたと言うことから「泣塔」と呼ばれるようになったというのは本当でしょうか?
それも、言い伝えですが、そのように言われていますね。

どこへ、いつ頃移されたのでしょうか?
手広にある青蓮寺というお寺です。
移されていた期間や時期は、記録が残っていないので詳しくは分かりません。
 


青蓮寺の様子


青蓮寺の住職さんに聞いてみたが、すすり泣いたと言う噂は伝わっているが詳しくは分からないそうで、時期や境内のどこに置かれていたのかも不明であるようだ。

たたりがあったという噂話もあるようですがどうでしょうか?
これも言い伝えで、昔、塔が売却された時にそれに関係した人々が不慮の事故に遭った、というもので、証拠になるようなものはありません。
また、昭和の初期の頃、あの場所は海軍が所有していて、工場を建てるのに邪魔になったので取り除こうとしたが、「間違いが起こるのではないか」と心配されて、塔はそのまま残されたようです。

「泣塔」と呼ばれる前は他の名前で呼ばれていたのでしょうか?
特に名前は無かったようです。
文化財に指定する時に、「深沢文和五年銘塔」という、文化財としての呼び名が付けられています。

文化財に指定された年月と理由は?
文化財に指定された年月は、1971(昭和46)年の9月です。文化財保護法が施工される前には、1933(昭和8)年に国の重要美術品に指定されていましたが、現在は重要美術品保存に関する法律は廃止されています。
文化財に指定された理由は、南北朝期の宝篋印塔の諸特徴と一致していて、塔の銘年も明らかになっているので当該期の標準資料として貴重であるというものです。

とても詳しく説明して頂き、「泣塔」は恐ろしいものではなく、文化財としてとても貴重なものだということが良くわかった。



取材を終えて



最後に、「泣塔」の周辺などの清掃活動を定期的に行っている鎌倉風致保存会を訪ねた。
鎌倉風致保存会は、鎌倉の歴史的遺産やそれを取り巻く自然を保存し後世に伝えるために活動を行っている。
 


鎌倉風致保存会の常務理事の野田充博さん


野田さんに伺ったところ、「泣塔」周辺の清掃は年に2回行っているそうだ。
誰でもボランティアとして自由に参加できると言う。年内は11月10日(土)にあるそうだ。
日常生活では、文化財に触れる機会はあまりないので、時には清掃活動に参加してみるのも良いではないだろうか。

最初はちょっと怖いと思いながら始めた「泣塔」の調査だったが、たたりなどの噂のお陰で取り除かれることもなく現代まで存在し続けていると分かり、時には「悪い噂に守られる」ということもあるのかと、少し驚きを感じた。


― 終わり ―
 

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