かつて世界を驚がくさせた横浜独自の焼き物、眞葛焼。現状はどうなっているの?
ココがキニナル!
黄金町に眞葛焼という陶器の窯元があったそうです。横浜焼ともいわれ 国宝クラスの宝も排出したとか言われています。今も窯元があるのか 作品をどこかで見れるのか等調査をお願いします(ばらさまさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
戦後復刻の動きもあったが、現在では窯元は残っていない。その作品は、横浜駅近くにある「宮川香山 眞葛ミュージアム」で見ることができる
ライター:河野 哲弥
横浜銘菓を製造する企業による、私設のミュージアム
(続き)
1876(明治9)年になると、アメリカで、建国100周年を記念した「フィラデルフィア万国博覧会」が開催され、香山の「高浮き彫り」も出展された。世界はその精緻な作風に驚がくし、装飾部門で「銅賞」を受賞すると、香山の評価はさらに高まった。主に海外を中心として、「価格によらず買い取る」というコレクターが、後を絶たなかったそうである。
しかし、こうした派手さは、飽きられるのも早かったようだ。そこで香山は、日本人が本来持つ「清楚・淡泊」を求めて、再び作風を変えていくのである。
一転して色彩表現の世界へ
中国の清朝時代の作品を研究した香山は、1882(明治15)年を境に、鮮やかな色合いの磁器を手がけていくようになっていった。「釉下彩(ゆうかさい)」という技法がはじまったのは、こうした数々の試行錯誤を続ける中でのことだったのだろう。
絵を付けてから釉薬(うわぐすり)をかける、「釉下彩」の一例
釉薬というラミネートの上から粘性の高い画材で絵付けをしていたものと、絶妙な濃淡表現をラミネートで保護するような違いが、この「釉下彩」にはある。やがて香山は、その集大成ともいえる「琅玕釉蟹付花瓶(ろうかんゆうかにつきかびん)」を残し、1916(大正5)年に没する。
これ以上手を加えることのできない、完成された美がある
具象と抽象の融合、器は空のはずなのに、水の存在すら感じさせる
日本のワビ・サビ、絶妙な色合い、高浮き彫り、釉下彩…香山のすべてが、この作品には込められている。こうした、時代の要望と飽くなき探求心が生み出したさまざまな作風が、眞葛焼の最大の特徴といえるだろう。
南区庚台にあった窯元のその後
まだまだご紹介したいことはたくさんあるが、スペースも限られているので、投稿の内容に絞らせていただく。
香山の没後、その作風は、二代、三代・香山へと受け継がれていった。しかし1945(昭和20)年の横浜大空襲により、南区庚台にあった窯は閉鎖されることになったそうだ。
その後、四代・香山により復興されたが、それもあまり長くは続かなかったらしい。したがって、現在では、眞葛焼の窯元は存在していないことになる。(香山の先祖から分かれた親族が、京都で「真葛焼」という窯を開いているが、眞葛焼の後継ではない)
館内には、各種資料や、二代・三代の作品も展示されている
また、投稿にあった黄金町の窯元について確認してみると、「最盛期には100人以上の人間が眞葛焼に関わり、初音町などに分工場があったことは聞いている。黄金町は聞いたことがないが、今では確認のしようがない」そうだ。ちなみに、明治時代に製作された日本の焼き物で、重要文化財に指定されているのはたった2件。そのいずれもが、眞葛焼なのだとか。
展示室の各作品、どの時代の作なのかを考えながら鑑賞するのもおもしろい
こうして世界中に散らばっていった眞葛焼を、再び横浜に集積しようとしているのが、山本さんと「宮川香山 眞葛ミュージアム」。三代香山の孫にあたる方の支援を受けつつ、数百点にわたる所蔵品の中から、常時約50点の展示を行っているそうだ。
そんな山本さんから、「はまれぽ」読者へうれしいプレゼントを頂いた。
7月31日まで有効の無料招待券を20名様に
※詳細は記事の最後にてお知らせします
「どんなことでもいい、自分にできる何かを発見して後世に残していくことが、文化の継承なのではないか。有名なものをコレクションするより、小さな動きがたくさん生まれてくることの方が重要」と山本さんは話す。横浜のいろいろな企業や各家庭に、プチミュージアムともいうべきコーナーがあるような姿が、山本さんが考える理想像なのだとか。
焼き物というよりも、むしろ世界の窓口である横浜独自の芸術・文化とは何かを考えさせられた、海沿いにたたずむミュージアム。自分たちに何ができるのか、そのヒントのようなものが見つかるかもしれない。興味のある方はぜひ一度、訪れてみてほしい。
―終わり―
宮川香山 眞葛ミュージアム無料招待券プレゼント!
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ご希望の方は、お問い合わせフォームより、以下の情報を明記のうえ、送信してください。
- お名前
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※お一人様2枚までとさせていただきます。
※当選の発表は賞品の発送をもってかえさせていただきます。
予めご了承ください。
※応募締切/2月8日(金)12時まで
◆宮川香山 眞葛ミュージアム
住所/横浜市神奈川区栄町6-1 ヨコハマポートサイド ロア参番館1F-2
電話番号/045-534-6853
開館時間/10:00~16:00(土曜日、日曜日のみ開館)
http://kozan-makuzu.com/
エルコラソンさん
2013年04月29日 01時52分
TVKの「横浜ミストリー」で取材していたときは、窯の跡地に民家が建っていました。住民がその事実を告げられても「土を掘り返すと陶器の破片が良く出るから変だとは思っていた」と、さほど興味もない様子でした。真葛焼を知らない人にとっては、たぶんそれが普通の反応です。企業任せだと資金繰りが大変そうなので、官民一体で啓蒙に努めることはできないのかと思います。民間企業出身の林市長なら話がわかるような気もします。とにかくもっと真葛焼を広く知ってもらいたいです。
とうさんさん
2013年02月05日 10時30分
「かつて世界を驚がくさせた横浜独自の焼き物、眞葛焼。現状はどうなっているの?」驚愕-きょうがく好ましいものも好ましくないものもあるが、怒りや恐怖などの爆発的な感情を言い、ネガティブなときに使用するのが一般的。驚嘆-きょうたん素晴らしさや見事さにおどろき感心すること。非常に感心すること。モノ書きなんだからコトバを勉強しようよ。
ushinさん
2013年02月04日 16時29分
家の近所の庚台を歩いていたら、元焼き物窯の掲示があったのを見かけたが、単に文明開化のころの焼き物工場があったという産業文化財レベルと理解していたのだが、マジもんの文化財だったとは驚いた。で、ミュージアム運営しているの、神奈川台場の勝サブレの会社というか、長者町のモンテローザなんだね(ブラック系モンテローザは居酒屋経営の別会社)