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諸説ある鎌倉の地名の由来とは?

ココがキニナル!

横浜と川崎の地名の由来、興味深く読ませていただいました。そこで「鎌倉」は?と考えたのですが、予想不可能です。いろいろな説があると思いますが、調べていただけませんでしょうか。(河童丸さんのキニナル)

はまれぽ調査結果!

地形に由来する説、伝説に由来する説、あるいは転訛に由来する説など、諸説あるが、鎌倉の由来をしめす確証的な説はなかった。

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ライター:ほしば あずみ

いつから鎌倉なのか



「鎌倉」という名が最初に文献に登場するのは、歴史書『古事記』の景行天皇(けいこうてんのう)の条(くだり)で、倭建命(ヤマトタケルノミコト)の子、足鏡別王(アシカガミワケノミコ)を「鎌倉の別(わけ)の祖(おや)」と記している。『古事記』が成立したのは712(和銅5)年、景行天皇の時代は4世紀前半ごろと考えられている。

 

『古事記』に記された「鎌倉」(岩波文庫『古事記』より)
 

史料としては、綾瀬市の宮久保遺跡(綾瀬市早川)で出土した733(天平5)年の「鎌倉郡鎌倉里」と墨書(ぼくしょ)された木簡や、735(天平7)年に作成された『相模国封戸租交易帳』(さがみこくふこそこうえきちょう)の「鎌倉郡鎌倉郷三十戸」(かまくらぐんかまくらごうさんじゅっこ)という記録がある。
日本最古の歌集『万葉集』にも「可麻久良」と記され、歌が詠まれていることから、奈良時代には「かまくら」という地名が使われていたことが考えられる。

江戸時代の地誌『新編相模国風土記稿』(しんぺんさがみのくにふどきこう)では、伝説に由来する説を紹介している。

 

「鎌倉は屍蔵」説と「鎌足が鎌を埋めた」説を紹介する『新編相模国風土記稿』
 

累々(るいるい)たる屍の山から「鎌倉」になったというのはいささか恐ろしいが、神武天皇は日本の初代の天皇で、存在自体が全体的に伝説であり、また、国の正史として編纂された『日本書紀』の神武天皇の条にも、この由来は登場しない。

もう一方の伝説、「鎌足が鎌を埋めた」説は、南北朝時代の遊行寺(藤沢市)の由阿(ゆあ)という僧が著した『詞林采葉抄』(しりんさいようしょう)が出典である。

 

時宗総本山の無量光院清浄光寺、通称遊行寺(過去記事より)
 

由阿は万葉集の研究者で、詞林采葉抄は万葉集に登場する地名や枕詞などの注釈書。
それによると、

「鎌倉とは鎌を埋む倉と云う詞(ことば)なり。その濫觴(らんしょう/はじまりの意)  は昔、藤原鎌足いまだ鎌子(かまこ)と申したてまつりし頃、宿願おはしましけるによて、鹿嶋参詣の時、此の由井(ゆい)の里に宿し給ひける夜、霊夢を感じて年来所持し給ひける鎌を今の大蔵の松が岡に埋み給ひけるより鎌倉郡と申すと云。」
(訳:鎌倉とは、鎌を埋めた倉という意味。その由来は、藤原鎌足がまだ鎌子と名乗っていたころ、長年の願いを祈念するために鹿島神宮(茨城県鹿嶋市)に参詣に向かい、その途中に由比の浜に泊まった。その晩見た霊夢にしたがって、長く身につけていた鎌を、現在の大蔵の松が岡に埋めた。ここから鎌倉郡という)

この説を水戸黄門で知られる水戸徳川家当主、水戸藩藩主の徳川光圀が臣下に編纂させた地誌『新編鎌倉志』(以下鎌倉志)が採用したこともあり、江戸時代を通じて鎌倉の地名の由来は「鎌足が鎌を埋めた」説が主流となった。

 

『新編鎌倉志』冒頭部分(「大日本地誌大系」大日本地誌大系刊行会 編1914 年刊)
 



鎌足が鎌を埋めたから鎌倉?



鎌倉志は鎌倉ガイドブックのはしりといえる地誌であり、この書が「鎌倉七口」や「鎌倉十橋」などの名所を定め、史跡などを紹介したことで、江戸時代の人々は鎌倉や金沢八景を江の島詣でや旅のついでに観光するようになった。
鎌足が鎌を埋めたという「大蔵の松が岡」を、鎌倉志は実在する2ヶ所で紹介している。

1ヶ所は現在の鶴ヶ岡八幡宮境内にある丸山稲荷社、もう1ヶ所は現在の浄妙寺の鎮守、鎌足稲荷社である。ちなみに駆け込み寺で知られる東慶寺も「松ヶ岡」と呼ばれるが、無関係だ。

 

Google Mapによる、その位置関係
 

丸山稲荷は地主稲荷とも呼ばれ、かつて現在の鶴ヶ岡八幡の社殿の位置に祀られていた
 

頼朝が八幡造営によって位置を動かしたので、今でも社殿より高い場所に祀られる
 

鎌倉時代の歴史書である『吾妻鑑』(あずまかがみ)にも丸山稲荷は登場するが、鎌足の伝説についてふれられていないことからも、この伝説は後世の創作である可能性が考えられる。
その理由として、鎌倉幕府の将軍が3代実朝の暗殺後は、京都の摂関家である藤原氏から将軍を置くようになった(摂家将軍)ことがあげられる。藤原氏の祖である藤原鎌足と鎌倉の「鎌」をかけて中世以降に生まれた伝説ではないかという説である。

 

鎌倉志は、丸山に祀られ旧名の松岡稲荷とよばれるようになったと記している
 

鎌倉志によると、かつての丸山稲荷社は、仁王門の前にあって十一面観音と、酔って寝ている人の像が祀られ「酒の宮」と呼ばれていたという。稲荷神は十一面観音が姿を変えたものという信仰(=本地垂迹〈ほんじすいじゃく〉説)が当時あった。

 

一方、浄妙寺の鎮守鎌足稲荷
 

鎌を埋めた伝説について説明する銅版もあったが・・・
 

実は鎌倉志は、鎌足が鎌を埋めた伝説があると紹介しつつも、誤りだと主張している
 

浄妙寺は鎌倉五山という、鎌倉時代から室町時代に定められた禅宗寺院の寺格(寺の格付け)において、建長寺や円覚寺と名を連ねる由緒ある寺で、鎌倉幕府の名門御家人足利家ゆかりの寺。浄妙寺という名は、室町幕府の初代将軍、足利尊氏の父、貞氏の法名(出家後の名前)をとった。

 

浄妙寺境内図(鎌倉志)
 

この浄妙寺の稲荷社が、鎌足が鎌を埋めた地だとするのは、室町時代の学僧、堯恵(ぎょうえ)の紀行文『北国紀行』によるものだが、鎌倉志は、あくまで鎌足が鎌を埋めたのは丸山稲荷の方であり、こちらは堯恵が言い伝えそのまま記したにすぎないとしている。

日本大学第4代総長にして経済学者の呉文炳 (くれふみあき)が1949(昭和24)年に著した『鎌倉考』で、鎌倉の地名について考察しているが、「屍蔵」も「鎌足の鎌」も「浮説であってとるにならぬ」とばっさり。吉田東伍の「竈(かま)の谷(くら)」説と、黒川春村の「神庫(かむくら)」説はいずれも史料にのっとった考察であり、一方は地勢学的に、一方は文献的にある程度理解されやすいのではとしているが、容易にどれが正しいとは言えないとも述べている。
また、武蔵、相模と隣接する場所に、高座(タカクラ)、新座(ニイクラ)、鎌倉(カマクラ)と3つもクラがつくのは一考に値しないかと問いかけてもいるが、答えは出ていない。現在も、地名の由来に決着はついていない。



取材を終えて



諸説あり、詳しいことはわからない「鎌倉」という地名の由来。鎌倉といえばやはり源頼朝が幕府をおいた鎌倉時代以降が注目されるが、頼朝以前の鎌倉も謎めいていて、踏みこんでみると面白い。詳しいことがわからないぶん、想像しながら歴史散策してみてはいかがだろう。


―終わり―


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  • 地名の研究というものはこの50年で進歩している。いつまでもかつての民間語源説にとらわれることなく、昔の人がどういったなどという語源的に根拠がない説を重視せず、近年の科学的な研究の成果を真摯に取り入れるべきだろう。鏡味明克(『地名の語源』、楠原佑介などの『古代地名語源辞典』などを参照すべき。カマもクラも地名用語としては普通のもの。たとえば横浜や東京にある、カタクラ(片倉)は、「かたがわが崖状になってるところ」だろうし、カマクラはやはり「カマ(釜)状になっている窪地」くらいの意味だろう。ようするにこのような地名は全国にあるのだから、その土地の人の民間語源(=音から思い付きで考えた説。他地方のことなど知らない。)は、いわば素人の説と考えるべきで、また地名用語は古語であることも重視しないといけない。古老に聞いたというような方法も、それでは古老は1000年も生きているのか?という疑問に答えられない。

  • 結局の所『鎌倉』の地名の由来の本命は判明しなかったようだが、それでも必至に調べ上げようとしたレポートは地味ながらも読んでいて面白かった!歴史においては『地名』と言うものは殆ど変化しない事が多いのだが、古代日本において北九州や畿内が日本の中心部であり、関東は東夷の住む未開の土地とされて居た。恐らくは時代が遡れば現在は北海道に追いやられたアイヌ人達も住んで居た筈なので、関東~東北地方の旧地名にはアイヌ語の影響も受けている物が多いと聞く。その後東国の開拓に際して朝鮮半島系渡来民達も多く関っている事も『古地名』の考察には配慮すべきかもしれない。

  • 各地の地名のいわれはこの記事のように大変素晴らしいものがあります 今度港南区の地図に小字を入れていわれを一覧にして作りましたからどなたかスポンサーをお願いできませんか

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