京急線日ノ出町―戸部にある“屋根のないトンネル”の正体とは!?
ココがキニナル!
京急の戸部―日ノ出町は、なぜ完全なトンネルではなく、天井が開いているところがあるの?(やすをさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
土地の形状や工期・工賃などを勘案して工事した結果、屋根はないが、あれも「完全なトンネル」。識者によると、補修していれば耐久性も問題ない
ライター:松本 伸也
いま明かされる、目からウロコの“蓋ナシ”の真実!(笑)
さて、改めてこの区間について調べてみよう。
京急のHP内にある『京急博物館』によると、この日ノ出町―戸部―横浜が開業したのが1931(昭和6)年12月。余談ながらこの解説は「湘南電気鉄道との連絡が完成して、」と続いているが、これは当時、黄金町―浦賀、湘南逗子(現在の新逗子)までは京急の前身『京浜電気鉄道』とは別の『湘南電気鉄道』が運行しており、そことの連絡運転が同時に開始されたことを示している。
後に起こる湘南電気鉄道との合併や、戦中に首都圏の私鉄が大合併した“大東急”など、黎明期の様子については、『京急電鉄のひみつ』(PHP研究所編・京浜急行電鉄協力)の第7章『京浜急行電鉄の歴史』に詳しい。よろしかったらご一読を。
横浜までの開業時は湘南電気鉄道の駅だった黄金町駅
この戦前の開業以来、「日ノ出町―戸部の区間での大規模な線路や駅の移設などは行われていません」(京急)。ということは空襲にも80年以上の年月にも負けることなくこの“屋根なしトンネル”は存在しているのである。
ま、詳しいことは親玉に聞いてみようじゃないか。京急の広報と電話が繋がっております。もしもーし!
「日ノ出町と戸部の“屋根のないトンネル”について・・・? またずいぶんマニアックなことを思いつきますね(笑)」
少々お待ちください、と笑いながら資料を探してくれた広報氏だが「すみません、やはり極めて珍しい質問のようで、そこまでの詳しい資料はないのですが・・・」と申し訳なさそうに再度のご対応。
しょうがない、キニナルなんてのはそういうもんだ(笑)
「日ノ出町から戸部というのは、まず野毛山をトンネルで貫通します。その後に通るのが西戸部町や御所山という場所なんですが、ここの土地にはとても特徴があります」と広報氏。
歩いていればわかるが、ここの海抜はとても高い。
「おっしゃるとおり、とても高いところを通ります。そこを野毛山と同じように地下を貫通させるのは、工期も工賃も高くなります。それで、道レベルから掘り下げるという手を使ったんですね。それでまるで溝のようなトンネルを造りました」
通常のトンネルとの違い
―あと素人考えながら、山の麓を掘り進めば落盤とかの危険性も増しますね。
「工期や工賃の面だけでなくいちばん重要な構造上の問題もなかったことから、“蓋”をする必要がなかったいうことです。そして現在まで、壁部分の一般的な耐震補強等の修繕をしながら現在に至っています」
道レベルから掘り下げたほうが楽、ということ
なるほど。たしかに日ノ出町駅を出発した直後は、野毛山の麓だけに貫通させざるを得ないが、西戸部町や戸部小学校の付近は幹線道路も走る山の頂上部分なので、掘り下げたほうが容易なのは間違いない。
そんな工法で100年近く前に施工されているのですから先人の知恵ですねえ、思わずそうつぶやくと「そうですね。注目いただいて私たちよりも当時の人が喜んでいると思います(笑)」、電話口からはそんな笑い声が漏れていた。
ほかにもあるのこんな“トンネル”、そして構造上の問題は?
さて最後にこのような形状のトンネル・・・というか側溝を走るような線路について、多くの鉄道関係書籍や雑誌の編集・著述を手掛け、自身ももちろん鉄道への造詣が深い、編集者の小関秀彦氏に話を聞いてみた。
「京急の日ノ出町―戸部にあります“側溝型”とも言うべき線路部分ですが、現在ではなかなか見ることのできない風景になっています。かつては名鉄(名古屋鉄道)の瀬戸線で土居下(どいした)駅から清水駅(ともに名古屋市)までの間で見ることができましたが・・・」
名鉄(フリー素材より)
「そこは名古屋城の外堀だったところを走っている“御堀区間”とも呼ばれたところで、まさに“側溝”だったのですが、1978(昭和53)年、経路変更に伴う土居下駅の廃止で消滅しました」
「首都圏では東急(東京急行)池上線の長原駅付近で見ることができましたが、1972(昭和47)年に長原駅が地下化されてからは普通のトンネルになっています。
長原駅周辺も坂が多いところですので、日ノ出町―戸部と近いところがあります。“側溝型”はそんな地形に適した工法と言えるでしょうね」
以前は周辺に“側溝型”が見られた東急池上線の長原駅
―地下化して普通のトンネルになるということは、安全面などに問題があったりするのでしょうか。
「いえ、これは鉄道各社さんの判断にもよりますが、地下化の狙いというのは単純に“地上のバリアフリー”が主になるでしょう。埋めてしまえば歩道橋がなくとも渡れるようになりますし、なによりその上になる土地が使える(笑)。安全面も、基本的には屋根がない=屋外を走っている線路と変わらないわけでして、壁の部分の耐震強度などを点検・補修することで問題ないはずです」
なるほど。とても貴重になってしまった“屋根のないトンネル”、この夏にぜひともご見学に・・・
取材を終えて
夏にご見学に・・・でまとめようと思ったが、それを察したか小関氏が「せっかくですからこの夏に見たい“変わったトンネル”をご紹介させてください」と話を続ける。
「『日本一短い』とかいろいろな種類はありますが、せっかくなので“地下”にこだわりまして、まずは群馬県にあるJR上越線の土合(どあい)駅です」
こちら土合駅舎(写真提供:ブルボンクリエイション)
「ここは駅舎と上り線ホームは地上にあるのですが、下り線だけ地下の新清水トンネル内にホームがあります。駅舎から下りホームまでは深さ70メートル、約10分かかります。ちなみに階段だけでエスカレーターはありません。設置が検討されたような敷地はあるのですがね(笑)。
地下70メートルのトンネル内にある土合駅下りホーム
(写真提供:ブルボンクリエイション)
「もうひとつがJR北陸本線の筒石駅(新潟県)。こちらは駅舎だけが地上で、上下線ともホームは地下の頸城トンネル内にあります。地上までは約40メートルで、こちらも階段のみ。そして来年の北陸新幹線開業に伴い、この駅を含む並行路線は第3セクターへの移管が決まっているので、『青春18きっぷ』などを使った優雅な旅はできなくなります・・・なので、ぜひともこの夏は筒石駅へどうぞ!」
ははは(笑)。どうもありがとうございました。
そしてこちらが小関氏イチオシの筒石駅。地下ホームへの駅舎はなんとプレハブ
(写真提供:ブルボンクリエイション)
―おわり―
ushinさん
2017年10月19日 00時39分
投稿者の「完全なトンネルではなく、天井が開いているところがあるの?」自体が、屋根のないトンネルなんて言ってないけど?日ノ出町-戸部間を完全に一本のトンネルで結ばずに、途中に擁壁に囲まれた「明かり区間」(鉄道用語)を設けたのか?・・・ということを、鉄道マニアではない一般人の言い回しで言っているだけで、他の方も言うように屋根のないものをトンネル・隧道などとは言わない。一般的には地上から地下線へのアプローチ区間によくある構造物で、相鉄西谷駅横浜方の西谷トンネル、アプローチ部分もそう。鉄道マニアとかでなく通常の土木工学的な意味合いでも、「屋根はないが、あれも「完全なトンネル」」などというガセ情報流さないで欲しい。肩こり=霊の仕業みたいな、キュレーションサイトと同じだよ。
中山さん
2016年04月19日 11時15分
京急トンネル、乗ってるだけだと直ぐ 通過してしまう? トンネルの上探索すること面白いです。
IKさん
2016年04月18日 14時29分
「通常のトンネルとの違い」の図で先代1000型を使っているところがGOOD!!。当時の名車でしたネ。