ごみ集積所に立って指導する? 横浜市の「環境事業推進委員」って何をする人?
ココがキニナル!
横浜市には環境事業推進委員会というのがあるらしいのですが、どういう人がやっているの?また市からお金などをもらってたりする?(あっきーさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
1993年度に始まった環境事業推進委員の制度は町内会などから推薦された人を市長が委嘱。委員に報酬はないが、運営する自治会などに補助金がある
ライター:はまれぽ編集部
市内に約4300人!
制度の成り立ちは分かった。では、「環境事業推進委員」たちは、どのような活動をしているのだろうか。
「環境事業推進委員」は、横浜市内に2800前後(2013<平成25>年4月時点)ある自治会・町内会から推進された人(1~3人程度)を市長が委嘱する。
任期は2年で、活動に対する報酬はない。しかし、「環境事業推進委員運営活動費」として、委員1人当たり年間2000円、1地区(自治会・町内会)につき4万円を補助している。2013(平成25)年度は同活動費として1877万円を計上した。
上が2014年度の各区の委員数、下が直近3年間の委員の推移
露木係長によると、主な活動内容は
(1)ごみ集積所での分別やごみ出しマナーの普及
(2)地域イベントなどで3R (Reduce:ごみ削減、Reuse:再使用、Recycle:再生利用)活動の啓発
(3)地域清掃活動の推進
(4)区、自治会・町内会と連携した不法投棄やポイ捨て防止および街の美化
(5)ごみ減量、3R行動を中心とした脱・地球温暖化への取り組みに関する情報提供
などとなっている。
イベントなどでブースを作って啓発活動をしたり(写真提供:横浜市)
会報を作成するなど、地区によってさまざまな活動を展開
必ずしも順調に活動ができるわけでもなく、中にはごみ集積所で啓発活動を行っていると「なんの権限があってそのようなことを言うのか」などと言われるようなこともあるという。
集積所で素直に指導を聞き入れてくれない場合もあるとか(写真提供:横浜市)
実際に推進委員を務める臼井さんは「イベントと集積所での指導や声掛けの方法は全く異なります」と苦労を語る。
地域の集積所の業務とは異なり、イベントでの活動は普段顔を合わせることがない人に対して正しい分別方法を周知しなければならない。
「イベントでは、分別について勉強会に来てもらっているという感覚で接しています。特に、子どもを『よくできたね』など褒めてあげれば、子どもも親も笑顔になりますし、褒められたことで継続してくれます。それを見た大人も、『子どもの手本にならなければ』という意識が働いてくれるはずです」と秘訣を教えてくれた。
笑顔で接することも忘れない臼井さん(「2014ふるさと港北ふれあいまつり」で)
住民に望むことに関しては「一人ひとりが適切な分別を心がけてくれれば、環境だけでなく周りの人にも迷惑をかけない行動が取れる。みんなが笑顔になれる横浜を目指して、これからも活動を続けていきたい」と話してくれた。
露木係長と辻さんが把握している限り、これまでに推進委員の指導によって住民と大きなトラブルに発展したことはないが、ごみ集積で指導委員の手に負えないようなケースが生じた場合は、市と各区のごみ収集事務所が連携し、場合によっては、ごみの開封調査を行って行政指導に当たる可能性もあるという。
きちんと分別してさえいれば、トラブルも起きない(写真提供:横浜市)
制度を運営するに当たっては課題がある。次世代の委員の担い手が恒常的に不足しているのだ。
露木係長によると、委員の多くは定年退職した世代の方が大半で、2年の任期だが長く続けてくれる方も多く、若い世代の成り手が少ないのが現状だそう。
メンバーにも高齢の方が目立つ(『港南区環境事業推進委員だより』第1号より)
露木係長は「環境問題は地球全体の問題。まずは地域から問題を見つめ直すきっかけとして、委員の活動に目を向けてほしい」と話してくれた。
取材を終えて
冒頭で触れた通り、「環境問題」は多岐にわたる。
現状は「横浜を誰にも誇れる清潔な街にするため」、貴重な税金を投じて委員に委嘱しているわけだが、ごみの分別など、私たちが普段の生活を少し見直すだけで防げたり、抑制できることは多々ある。
委員の担い手不足は深刻な問題ではあるが、本来は市から補助金など受けずとも、われわれ市民一人ひとりが「環境事業推進委員」と同等か、それ以上の意識をもっていれば、制度自体を見直すことができるのではないだろうか。
そして、引いてはそれが地球環境を救う手助けになることを信じたいと思う。
―終わり―